暁の双刃 ~運命に抗う者達~
楼河
プロローグ
少年は、とある街に佇んでいた。
街とは言うものの、そこは瓦礫だらけで、人が住んでいる気配は全く無かった。
かつての大都市は荒廃し、残ったのは瓦礫の山と、僅かな死臭。
そして――
「グオォォォッ!!」
――妖獣。
かつての大都市、横浜を、只の瓦礫の山へと変貌させた怪物が、残っていた。
「――ッ!」
その、人間の胸程の高さである、恐竜をイメージさせる姿をした小型の妖獣が、少年の手にした双剣によって斬り裂かれ、絶命する。
『安全圏』とも呼ばれる、現東京から出る事は、普通の人間では自殺行為だった。
――言うまでも無いが、安全圏の外は、妖獣が支配権を握っているからだ。
――今の日本は、そのほとんどが滅びていた。
2000年頃までは、この都市、横浜も賑わっていたというが、どうしても青年はそれが信じられなかった。
少年は改めて周辺を見回す。
高層ビルは、辺りの建物を巻き込んで倒れ、長い橋は、それが根元から海に崩れ落ちている。高速道路が通っていたと思われる道は砕け、電車のレールの破片があちこちに飛び散っていた。
まだ原型を留めている建物もあるにはあるが、ほとんどの建物が、跡形も無く破壊され、瓦礫の山を作り出していた。
そこで少年は、周りを見回していた目を止め、正面を見据える。
現れたのは、先程と同じような2頭の妖獣。
はぁ、と少年は小さくため息をつくと、双剣を握る両手に力を込め、走り出す。
日本刀程の大きさの剣を両手に持った少年は、妖獣との間合いを確かめて、走っていく。
その間合いが、少年の間合いとなった時、双刃は牙を剥く。
「おぉぉぉッ!!」
掛け声と共に、少年の双剣は、残像を残す程の速さで動き、1頭の妖獣の首から上を、鮮血を撒き散らしながら切断する。
「グオォォォッ!!」
しかし、もう1頭の妖獣が、少年の頭を食い千切らんとばかりに襲い掛かる。
瓦礫の山に鮮血が舞い散り、悲鳴が響いた。
しかし、それは襲い掛かった側の、妖獣からであった。
少年に襲い掛かった妖獣は、少年の右手が持った剣によって、その牙を抑え込まれ、左手の剣で首を斬り飛ばされたのだ。
人類を滅亡へと追い込む怪物、妖獣に、全く臆することなく対抗できる人間は、この日本では数少ない。
――それが、『勇士』。
彼の両手の甲にある『紋章』の力で、武器を虚空へと収納、いや、一時的に消失させた少年は、小さく息を吐く。
すると、少年の胸元の無線機から、声が聞こえてきた。
《作戦終了です。帰還してください》
その手短な命令を聞き、再び小さく息を吐くと、少年は命令に従って歩き出す。
――暁 海斗。
2年生ながら、【疾風の双刃】など、複数の異名を持っていた。それが、少年の名前だった。
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