ヨコヤマブリッジ

たなかけんと

第1話 ヨコヤマブリッジ

ヨコヤマはブリッジをした。いきなりの状況下でよくわからないがブリッジをしているのである。なぜ、ブリッジをしているのか、いったいなにがしたいのか、私にはよくわからない。


しかし、ヨコヤマはうれしそうにそしてどことなく充実感に満ちた顔をしていた。


これが僕とヨコヤマの出会いである。


今日もヨコヤマはブリッジをしている。早朝のだれもいない教室でひとり、机の上でブリッジをするのが彼の日課だ。嵐で電車が遅れるときも雪で学校に来るのが困難なときも彼は同じ時間に机の上でブリッジをしているのである。


一回、なぜブリッジをするのかときいてみた。そしたら彼は


「ブリッジがしたいからするんだ」


とまっすぐな瞳で言い放った。やりたいからやる。単純明快だが今の現代人にはなかなかできないことだ。

忙しいからバイトがあるからなどと言って理由をつくり逃げてしまう自分とは大違いだ。


彼はバイトをしていないし、部活もボチボチしかやっていない。

しかし、彼はいつも真摯にブリッジに向き合い同じ時間に同じ場所でブリッジをし続けているのだ。


僕はそんな彼に少しずつ憧れをもち尊敬をし始めた。僕はいつも逃げてばかりだ。今もブリッジしている彼に話しかけられないでいる。本当は僕もブリッジがしたい。だが自分の中の何かが邪魔してうまく言葉が出てこないのだ。


「やりたいからやる」


ふと彼の言葉が頭に響いた。その瞬間、頭の中にかかったもやが一瞬で晴れた。そして目の前のブリッジをしている彼に話しかけた。


「ヨコヤマ、俺もとなりでブリッジしていいか?」


「…」


横山は何も答えなかった。ただその質問に答えるように横山が席を空けたのだった。

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ヨコヤマブリッジ たなかけんと @ks199898

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