バースデー・ワンダーランド

 クレしんで伝説のヒット作を監督した原恵一監督最新作(※執筆時)がこの『バースデー・ワンダーランド』です。監督のアニメ作品は出来るだけ追いかけようと思っていた私は、今作が上映されていると言う情報を目にして観に行ったのですよ。原監督の映画を観るのは『カラフル』ぶりでした。


 映画の原作は柏葉幸子氏の小説『地下室からのふしぎな旅』児童文学ですね。だからでしょうか、少し整合性に欠ける所はあります。細かい事は気にしちゃ駄目なのでしょうけど、気にする人は気にしちゃうかも。説明不足な所は原作では説明されているのかもですが。あ、原作は未読です。


 この映画の特徴としては美しい背景美術に、特徴的なキャラデザインがあります。色んな意味でちょっと大人っぽい感じなんですよね。調べてみると、キャラデザインはロシア出身のイリヤ・クブシノブと言う方が起用されているのだとか。道理で。


 大人っぽいキャラデザインのせいで主人公のアカネがとても小学生に見えません。ランドセルを背負っているので小学生のはずなんんですけど、中学生が無理やりランドセルをしているような違和感が。

 でもモデルっぽい小学生って設定ならばアリなのかな? 女の子の方が成長は早いですしね。パンフを買っていないので公式サイトで確認しようとしたのですけど、彼女の年齢は書かれていませんでした。何故に?


 今回もカラフル同様にメインキャラの声に俳優さんが多く採用されています。とは言え、ちゃんと声優さんも参加されているのでバランスはいい方、なのかな? クレしんコンビの矢島晶子さんと藤原啓治さんもコンビ役で参加されていますよ。

 主人公格のアカネとチィおばさんが女優さんなので、違和感を感じる人は出てしまうでしょうね。そこは仕方ないです。私も少し引っかかりましたもん(汗)。


 この記事を書くにあたって原作のあらすじを調べたら、物語は原作そのままの展開じゃないみたいですね。どこまでが原作に忠実なんだろう……。


 話の流れ自体はオーソドックスなんですよ。ひょんな事で異世界に行く事になって、その世界を主人公が救うと言う……。監督の作品としては実に王道です。カラフルみたいに最後に何らかのどんでん返しがあるのかなとか思ったら、そんな事はありませんでした。

 観ていると先にヒントが提示されて、こうなるのかな? と思った通りに物語が進んでいくので、ある意味安心して楽しめます。


 これ系の物語って主人公に特殊な能力があったりするじゃないですか。この物語ってそう言うのは特にないんですよ。それが一番の特徴かも知れません。昔の児童文学って異世界に飛ばされても本人の能力だけで乗り越えましたよね。そう言う流れになっています。原作の児童文学も出版されたのは1980年代ですから。

 特殊な能力もなしに異世界で活躍と言うと『千と千尋の神隠し』もそうでしたね。


 展開が王道で特にひねってもいないので、感想としては普通となります。普通の作品です。逆に言うと万人に進められるとも言えるかな。癖はないです。

 繰り広げられる冒険は児童文学らしく奇想天外なのですが、どこかに安心感はありますし、怖そうなキャラも本気の極悪人ではありません。そう言う意味では、刺激を求める人には物足りないかも。


 背景美術は本当に素晴らしいです。童話の世界がそのままのイメージで具現化されています。キャラデザインが日本で余り見られない感じなのでそこも魅力かも。

 やっぱりネックになるとしたら声関係かな? 俳優が声を担当するのがどうしても許せない人には向きません。後、整合性を気にする人にも向かないかも。


 公式サイトなどで映画の予告映像を見て気になった人は観て問題ないと思います。ちゃんと笑えるシーンもありますし、感動するシーンもあります。美しい美術を見るだけでも劇場で観る価値はありますよっ。

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