第86話還って来たメリッサ
ほどなく広間にオーフェンがキースを引き連れて現れた。
「おお、イツキではないか?どうしておった。噂ではアバントのところへ行っていたそうじゃな」
「さすがだな。そうだよ。ちょっと遊びに行っていた。今度オーフェンと戦う事があったらアバントを召喚するって約束してきたわ」
「あんな奴を呼び出すな。どうせならアバントと戦う時にワシを呼べ」
「どっちにしろ一緒じゃん」
「まあな」
そう言うと二人は同時に笑った。
「今日はまた一人黒騎士を連れてきたよ。ダイゴだ。よろしく頼む」
イツキはそう言ってダイゴをオーフェンに紹介した
「ほほぉ、クマみたいな男だな」
オーフェンもダイゴの大きな体を見て感心していた。
「彼も一応魔王を3人倒した事のある勇者だ」
「ふむ、それは頼もしい……どうじゃキースこの男、お主のメガネに適うかのぉ」
「何の問題もございません。ジョナサンの部下にちょうど良いでしょう」
キースはダイゴの前に立って頷きながらそう言った。どうやらキースの目にもダイゴは充分合格点であったようだ。
「では、私についてくるが良い」
そう言うとキースはダイゴに背を向けて歩き出した。
ダイゴはその背中に
「よろしくお願いします」
と言いながら後をついていった。
「今日はキースは何も絡んでこなかったなぁ。どうしたんだ?」
イツキはいつものキースの嫌味な言動を予想していたが、何もなくキースが去っていったので気持ちが悪かった。
「何か悪いもんでも食ったのか?」
イツキはオーフェンに尋ねた。
「いや、あんなもんじゃろう……ただ、メリッサが帰ってきた」
「ほほぉ……これでキースも年貢の収めどきか?」
「うむ……」
「うちの娘二人はメリッサの焼きもちのターゲットにされていないだろうな?」
「それは大丈夫だ。メリッサのお気に入りの二人になっておるわ」
「他の奴にいじめられたりとかはしてないだろうな」
「それも大丈夫じゃが……」
「なんか、さっきから歯切れが悪いな?どうした。オーフェンらしくない」
「うむ……まあ、お主も用が済んだらさっさと帰れ」
「なんだ?今日はなんだか邪険な扱いじゃね?」
「いや、そんな事はないぞ」
「だから早く帰れ」
オーフェンはまるで犬でも追い払うようにシッシと手を振ってイツキを追い立てた。
ちょっとムカッとしたイツキだったが、ロンタイル最強の魔王オーフェンがこんな態度を取るのはよっぽどの事だろうと思い何も言わずに去ろうと思った。
広間に女の声が響いた。
「何!イツキが来ているとな?」
「なんだか騒がしいな?」
イツキは声のした方に視線を移した。
「ちっ!見つかってしもうたか」
オーフェンが舌打ちをして顔をしかめた。
「何に見つかったんだ?」
イツキは全く状況を理解できていなかった。
サルバがイツキの袖を引いて
「さ、こちらへ」
と隣の部屋へ導こうとした瞬間に広間の大扉が勢いよく開き一人の黒騎士が入ってきた。
よく見るとそれは女性騎士だった。
「黒槍騎士(シュヴァルツランツェンリッター)?」
イツキは眉間に皺を寄せてその騎士を見た。
「いや、黒薔薇騎士(シュヴァルツローゼンリッター)か?……え?まさか??メリッサ?」
イツキは一瞬嫌な予感がした。
それはまたメリッサと戦う事になるという予感ではなく、更に自分にとってどうしようもない不幸が舞い降りてくるという予感だった。
「間に合いませんでしたな」そう言うとサルバはさっさとイツキから自分の身を守る様に離れていった。
「え?おいサルバ?」
と声を出した途端イツキはその黒薔薇騎士(シュヴァルツローゼンリッター)に激しく抱きつかれた。
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