シン・ゴジラ

 この夏の話題をかっさらってシン・ゴジラ。ご多分にも漏れず私も観に行きました。結論を最初に言うと面白かったです。本当に面白かった。

 もう公開から一ヶ月以上経ちますし、ネタバレ感想を言っていいのかな?

 ちなみに、私は2回観に行きました。リピーターの中で2回は少ない方でしょう。3、4回とか観に行った人がザラに居るみたいですもんね。


 私が最初に観たのは8月の映画の日、そう、1日でした。地元の地方都市はやはり東京ほどの混雑ではありませんでしたね、当時は。

 でもいい席で観られたのでラッキーでした。混むといい席で観られませんからねー。

 その後でゴジラ人気が田舎にまで浸透して多分8月10日くらいには結構人が入ったんじゃないでしょうか?確認してないので知りませんけど(いい加減)。


 さて、この映画、なぜそんなにリピーターが発生したのか……。

 普通、映画って一回観たら終わりです。面白かったね~で終わります。大抵同じ映画を劇場で2回以上見る事はないでしょう。よっぽどのファンなら別かと思いますが。


 映画を観た人ならこの答えも分かると思いますが、情報過多なんです、シン・ゴジラ。圧倒的な情報量を前にして一回観ただけじゃ頭の理解が追いつかないんですね。

 それで何度も観るハメになるんです。流石庵野監督!憎いぜ!


 その膨大な情報量は映画3時間分に相当したそうです。それを無理やりあの尺に収めた。登場人物をむっちゃ早口に、そして余計な間を入れないと言う力業を使って。なのでテンポが凄く早い。え?え?と言っている間に物語が進行していきます。テンポが良いから間延びしないんですよね。最初に観た時は2時間があっと言う間でした。


 私がこの映画で最初にすごいって思ったのは流れるようなカメラワークでした。もうそこから痺れていましたね。邦画であそこまでかっこいいカメラワークを駆使した作品があったでしょうか?いや、ない(反語)。むっちゃ会議ばかりする映画でしたが、その会議が面白く感じたのはひとえにあのカメラワークのお陰だったと思うんです。

 2回目に見ると顔のアップが多いかな?って感じたりもするんですが、最初に観た時はそんな事全然感じませんでしたね。


 この映画のゴジラ、観た人は分かると思うんですけど、何度か姿が変わるんですよね。公開前に情報を秘密にしていたのはこの情報を隠すためだったのでしょう。最初に知っているのと知らないのとではやっぱり衝撃度が違いますから。

 私は上映前にパンフをちょっと読んでいたので、姿が変わるのを事前に知ってしまい後悔しましたもん。パンフ封印のネタバレ厳禁は伊達じゃなかった……。


 徹底的にシミュレーションした日本政府の反応はこの映画を政治シミュレーションとして観る事すら可能にしていました。思想的に右の人も左の人もそれぞれ思うところがあったみたいで、娯楽映画を超えた楽しみが出来る映画になっていますよね。

 映画評で監督を右だ左だ言う人もいましたけど、どちらも的外れかなと私は思います。

 監督は好きに作っただけなんですよ。右も左もないからどちらに人の心も打ったんじゃないでしょうか?


 国会議事堂前でのゴジラデモのシーン、ゴジラを守れとゴジラを殺せとゴジラは神!の異なる三種の主張を全て混ぜて叫んでいるんだそうです。その人が聞きたい言葉が耳に残る素敵仕様。心理テストにも使えそうです。

 ちなみに私は1回目、ゴジラを守れしか聞こえませんでした。こう言うデモに対する偏見が私の耳からそれ以外の情報を消していたのでしょうね。2回目に聞くと今度はゴジラを殺せの声が強調されて聞こえて来てびっくりしたのを覚えています。


 今回のゴジラがリアルに感じたのは出てくるのがゴジラだけで、対処する自衛隊も米軍も現実の兵器しか使っていないと言うのも大きいと思います。大きな嘘をつく時はその嘘以外は全てリアルにすると言う昨劇の基本が生きていると感じます。


 大きな嘘と言えば米軍大統領特使のカヨコと言う存在がリアルからはかけ離れていて謎ですが、アレは多分特撮映画のお約束を踏襲したと言う事なんでしょうね。あの手の海外からの特別任務を帯びた人物の登場は特撮映画ではよくある事です。


 この映画を語るとまだまだどんどん語る要素が出てくるんですが、語り過ぎると長文になるし、どこまで語ってどこを語らないようにするか取捨選択が難しいです。


 絶対に語りたいところだけ抜き出すとまずはゴジラ対策チーム、通称「巨災対」の頑張りが良かった。この映画のメインなんですが。少しずつゴジラの謎が解けていくところ、一度壊滅して再結集するところ、切り札を発案しそれを実行に持って行くところがプロジェクトXを見ているみたいで興奮しました。尾頭さんはこの映画のメインヒロインです!


 そして肝心のゴジラなんですが、これがすごい破壊でその巨体は歩くだけで災害なんですね。歩く災害。クライマックス近くまでゴジラはただ歩いているだけなんですが、それでもその破壊は3.11を髣髴とさせるものがあります。あの地震を経た上での描写が随所に見られました。私は西日本在住なので実感はあまりないのですが、あの地震をリアルに体験した人には更に被害シーンが心に響いた事と思います。


 ゴジラに対する自衛隊もかっこ良かった。映画の予告ではしょぼいかな?と思わせておいて実際に見ると違います。むっちゃ頑張っています。全弾命中です。ゴジラが強過ぎるだけで自衛隊は決してヘボくはなかったです。ピエール瀧が凛々しかった。


 ゴジラの攻撃と言えば放射熱戦なんですけど、シン・ゴジラのそれはゴジラ映画史上一番えげつないです。とんでもない破壊力があります。ただし、強過ぎる為か吐き続ける事は出来ないようです。もしそうなったら人類は太刀打ち出来なかった事でしょう。こんなのに勝てる訳がないと私も最初に見た時は絶望しました。


 政治劇で言えばゴジラを倒すために米軍が核を落とすって言うんですよね。ある意味お約束とも言える展開なんですが。それを「巨災対」そして日本政府の要人達が持てる力を使って何とか引き伸ばして時間を作る。

 このシーンがまんま政治劇なんですけど、ここらへんも良かったなぁ。実際に有事が起こった時もこんな感じで国際社会に対して毅然な態度で行動して欲しいと願うばかりでした。


 過去のゴジラはただの災害怪獣でしかなかったのですが、今回のゴジラは研究次第では人類の福音にもなると言う設定になっています。これは原子力も使い方次第で人類の役に立つと言う事を暗喩しているのかも知れません。


 問題点と言うか、しっかりした理由付けが欲しかったなと思うのが、そもそものゴジラが東京に上陸した理由ですね。その理由がはっきり分かればもっと映画に説得力が出た気がします。多分設定にはしっかりと書かれているのでしょう。ネットに流れる考察では姿を消した博士がゴジラに取り込まれて東京を目指すようになった説が流れていますね。多分これ正解に近いんじゃないかと思います。


 リピーターが多いこの映画ですが、複数観ている人は女性が多いそうです。恋愛要素が絡んでないから人気が出ないだろうと映画関係者は不満を持っていたらしいのですが、この映画のヒットで今やその考え方自体が古いと言う事が証明されました。

 つまり、邦画の悪いところがほぼ入っていないのでこの映画はヒットしたとも言えます。きっとこの映画のヒットを分析して今後は無理やりな恋愛要素ゴリ押しとかの作風は減ってくるんじゃないでしょうか?そうなるといいなって私は思います。


 最後に、この日本をシュミレーションしまくったシン・ゴジラ、どうも海外では不評のようです。向こうの人にはまどろっこし過ぎる展開が観ていて苛々するのだとか。文化の違いもあるしこれは仕方がないのかなぁ。逆に日本がどう言う国か知りたい時にはいい教科書になる気はしますね。


 庵野監督の実写映画と言えば今まではあまりパッとしたのがなかった印象ですが、それは監督自身がそういうのを求めていなかっただけなのかも知れないですね。ゴジラを任されてここまでのものを仕上げてくるんですから。勿論樋口監督などの優秀なスタッフありきですが。


 今後監督が実写とアニメの二足のわらじで行くのかアニメ専業に戻るのか分かりませんが、どちらにも才能があると分かった以上、これからは今以上に注目される事になったのは間違いないですね。

 監督の作り出す作品にこれからも注目していきたいと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る