ペット探偵と謎解きカフェ ~君の影は僕のもの~
片瀬智子
第1話 プロローグ
封筒に書かれている几帳面な字体には覚えがある。この手紙を受け取ったからには読まなければならない。いや、読む義務があると実梨は思った。
そういえば、あのペット探偵は彼のことを『この世の悪魔』だと言った。
恐ろしい例え。
だが確かに彼ほど、敵に回して恐ろしい男はいないだろう。
実梨は真っ白い便箋を開く。
それは、悪魔と通じた瞬間だった。
*******
実梨へ
久しぶりだね。僕たちが別れてから、随分と時が過ぎた。
君が別れたいと切り出したときから、ずっと、僕が待っていたのはこの日だったのかもしれない。
「何があったとしても、僕は君を手放すつもりはない」
あの日、僕が言ったこの言葉を覚えていますか。
これは決して嘘ではない。君は、これからも僕のものだ。
ところで、DGのリストに載ったらしいね。
心配はいらないよ。
何も怖がらなくていい。
僕を頼る限り、永遠に君を守ってあげるから。
僕は満足だよ、実梨。
君がまた戻ってきてくれて本当に嬉しい。
また楽しい時を一緒に過ごそうじゃないか。
愛している。
無山恭也
*******
実梨は手紙を読み終わると同時に、安心感というより自己嫌悪に近い心情を覚えた。この時、永遠の自由を失ったと実梨は悟ったのだ。死と引き換えに、囚われたのも同然だった。
柔らかなキャメル色のレザーバッグに入れてあった携帯の着信音が、突然鳴り響く。実梨は心臓が止まったかというような顔で振り向くと、ゆっくり携帯に手を伸ばした。
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