第446話 獣王国へ
GWなので頑張ってみました。
もうちょっと頑張れれば、もう1話くらいGW中にアップできる、かも。
アップできたら褒めてください。
頑張ります。
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獣王国は北の地だ。
夏であってもどこか涼しい。
今回の件が解決したら、避暑地としての別荘を獣王国に1カ所持つのも悪くないかもしれない、そんなことを考えながらシュリは獣王国の辺境の町中を歩く。
獣人の町を歩いても違和感が無いように、自前の猫耳・猫しっぽを生やしてぴくぴくさせながら。
スキルの副産物とも言えるものなので、自前と言い切るのは少々違うかもしれないが。
ちなみに今回使用中のスキルはこちら。
スキル[猫耳]。
使用すると耳の感覚が鋭敏になり、内緒話を聞くのもお手の物。
でもその代わりに、他のスキルが無効化されるちょっと使い勝手の悪いスキルである。
獣人に見える姿を確保できるスキルとしては、[モード・チェンジ]もあるのだが、今回の同行者や諸々の事情を考え合わせた上で、前者を選ぶことになった。
獣王国に潜入するにあたり、子供のシュリが単身でうろついていると目立つので、獣人であるという事と冒険者としての経歴からナーザに協力を仰ぐことに。
ジャズに冒険者としての経験をつませたい、というナーザの意向を受け入れてジャズも同行することとなり、シュリはナーザの息子でジャズの弟という設定となった。猫獣人のナーザの息子なら犬科の狼形態の[モード・チェンジ]のハーフビーストモードより、猫形態をとれる[猫耳]の方がいいだろう、と言うことになり、現在に至る。
イルル、ポチ、タマは、イルルを探す氷の
立場的には、シュリ達親子と仲のいい冒険者、あるいは護衛をしている冒険者と言うことにするため、彼女達には事前に冒険者ギルドに登録もしてもらってある。
そんな訳で、猫耳猫しっぽのシュリは、可愛いことと耳がいいこと以外全くの無力なのだが、周囲を固める面々の実力はかなりのものなので全く問題ないだろう、と言うのが愛の奴隷達の判断だった。
別れ際、猫獣人の姿になったシュリを見つめる彼女達の鼻息が若干荒く感じられたのは、きっと気のせいに違いない。
獣王国に密かに入国する際は、オーギュストの力を借りた。
彼のスキルで、オーギュストとシャイナがリューシュを見つけた場所まで移動した後、人目につかないポイントを見つけて崖を上り、とりあえず近場の町に宿をとった。
今晩はここで休み、準備を整えて、明日は獣王国の城下町を目指す予定だ。
「シュリ。ほら、母の膝へ来い。食事を食べさせてやろう」
「だめだよ、お母さん。シュリは私と食べるんだから。シュリはお姉ちゃんのお膝の方がいいよね?」
「シュリ様、マザコンもシスコンも流行らないでありますよ? ここは無難にポチのお膝でご飯というのも」
「ポチ。シュリ様はタマとご飯が食べたいって言ってる。タマの膝が1番座り心地がいい。ね、シュリ様」
「シュリ~!! 見てみよ。うまそうな肉じゃぞ。さすが肉好きの獣人達が住まう国は違うのぉ。塊肉のクオリティがすごいのじゃ!! 妾はこっちからかじり付くから、シュリは特別に反対からガブガブしても良いぞ!!」
夕食の席で、シュリはみんなのお誘いを吟味した。
吟味した結果、イルルの塊肉のご相伴に預かることを選ぶ。
難しい決断だったが、それが1番無難そうだったから。
イルルがあぐあぐしている反対側から肉に挑んだシュリは思う。
おいしいけど固い、と。
普段であればなんてこと無く食べられたのだろうが、今のシュリはとにかく非力。
あごの力も一般の人間の子供程度しかなく。
シュリは己のあご力を頼ることを早々に諦め、ナイフとフォークを手にした。
ナイフで獣人好みの歯ごたえ抜群の肉と格闘し、どうにか切り取った肉をあぐあぐ食べる。
噛んでも噛んでもなかなか飲み込める状態に持ち込めない肉を味わいながら思う。
早く色々を解決して、こんな窮屈な格好からはおさらばするぞ、と。
まずそのためには情報収集だ。
そう目標を定めたシュリは、腹が減っては戦は出来ぬ、と言わんばかりに、せっせと肉を口に詰め込むのだった。
◆◇◆
1泊した翌日、早速情報収集に動き出す。
シュリはナーザと、ジャズはポチと。
最後の1組は恐らくなんの役にも立たないであろうイルルとタマの2人組だが、ポチはともかくジャズにイルルやタマを押しつけるのが気が引けたため、こういう組み合わせになった。
そんな3組で情報収集に励んだが、最初の町ではめぼしい情報を得ることが出来なかった。
3組が持ち寄った情報は全て事前にリューシュから聞いていたような話ばかり。
国境近くの小さな町では仕方がないかもしれないが。
国境の町での情報収集に早々に見切りをつけたシュリ達は、獣王国の王都を目指し旅立った。
途中の村や町で情報収集をすればいいか、と割と気楽に考えて。
だが、その思惑は見事に外れた。
王都から遠い場所ではめぼしい情報はなく、王都に近づくにつれ住民達の口は重くなった。
「あまり目立つ真似をしない方がいい」
そんな忠告を受けたのは、王都にほど近いある村でのことだった。
中央に近い割には荒れ果てた印象のその村の住人達はみんな年老いており、ひどくおびえたような目をしていた。
「女王に味方する者は容赦なく処刑される。よくても強制労働送りだ。だが、あんたらは綺麗どころが多いからな。もっと悲惨な目にあう。この村も、こんなことになる前は豊かな村だった。働けば働いただけの見返りがちゃんとあることに感謝し、その国を治めている女王に敬意を抱いていた。だが、それが徒となったんだ。女王が捕らえられたとの情報が流れ、村の男達はすぐに立ち上がった。近隣の村や町の男衆と手を組み、女王を救い出そうと。しかし、すぐに潰された。彼らは見せしめとして吊され、その妻子も連れ去られた。この村にはもう、わしのような年寄りしかおらん」
言われて改めて見回せば、疲れ果てたように村のあちこちで座り込んでいる人達のほとんどが老人だった。
「悪いこたぁいわない。これ以上王都へ近づくのはやめておきな。女王様のことは他の偉い人に任せておけばいい。宰相様が動いているという噂もある。宰相様は頭のいいお方だ。きっと女王様を助けて下さるさ」
老人はそれっきり口をつぐみ、シュリ達もその村を離れた。
その後は無駄な情報収集を諦めてまっすぐに王都を目指したのだった。
そして今。
王都の街中で、シュリとナーザはなぜか柄の悪い兵士に絡まれていた。
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