第394話 [悪魔の下着屋さん]始動①

 シュリが隣国でひっそり活躍した事による諸々の面倒ごとが一段落し、学校での生活も通常営業で大過なく過ごし。

 気がつけば、夏休みまであと少しという時期になっていた。


 オーギュストを中心に、シュリやシュリの愛の奴隷達、スカウトされてきた悪魔レッドとブランも手伝ってこつこつと準備をすすめてきた[悪魔の下着屋さん]のオープンも間近となった。

 みんなで相談した結果、隣国の商都への出店は王都の1号店が軌道にのってからにしよう、と言うことに。

 正直人手も足りないし。


 それまではこちらで作った商品を輸出し、ディリアンが紹介してくれた商人さんを通じて販売しながら商都の人達の反応を見る。

 それと平行して、商都での人材も発掘し、色々準備が整ったら満を持して2号店を出店すればいいだろう。


 その辺りの調整はオーギュストとジュディスに丸投げして任せている。

 今現在、シュリは学生として学生生活まっさかりなお年頃。

 学生の本分は学ぶことであり、商売に手を出している暇はない……ってわけでもないのだが、オーギュストとジュディスから商売は自分達に任せて勉強を頑張って欲しい、と言われれば断る理由もない。


 そんなわけで、シュリが積極的に[悪魔の下着屋さん]にかかわるのはオープンまでの期間と、最初の1週間を予定しているオープニングセレモニーとセールを行う間だけ。

 後は、オーナーとしてどーんと構えていて欲しいと言われている。時折、買い物がてらお店の視察でもしながら。


 現在、オーギュスト渾身の下着を商品とする[悪魔の下着屋さん]はつい先日知り合いを招いてプレオープンをしたばかり。

 数日後には正式なオープンを控えており、オープニングセレモニーやセールの準備もほぼ整っている。


 混雑を予想して、正規に雇ったスタッフの他にも、セールの間はルバーノ家で働くメイドさん達にも売り子さんを手伝って貰う予定だ。

 ちなみに、オープニングセールの期間中は男性のお客様はご遠慮いただく事になっている。

 お客様達の購買意欲を刺激するためにちょっと変わった接客を計画している為だ。


 オープニングセレモニーも同様で、お店のラインナップには男性向けの商品も少なくはあるが置いてあるものの、男性が実際にお店へ来れるのは女性向けのオープニングセールが終わった後から、ということになる。

 女だけ不公平だ、という意見が飛び出てこないように、最初のオープニングセール後も、男性向け商品のセールは更に1週間延長して行う予定である。

 とまあ、そんな風に色々な計画をして、準備をして、あっという間に時は過ぎ。



 (ドキドキするような、ハラハラするような不思議な感じだなぁ)



 楽しみなドキドキと、なにが起こるか分からないハラハラを抱え込んだまま、オープンの当日を迎えるのだった。


◆◇◆


 オープン当日。

 オープニングセレモニー、というか、オープン記念の出し物として、オーギュストの下着コレクションのファッションショーが計画されていた。

 新たな下着の性能やデザインを見て知って貰うために必要な出し物として行われるのだが、男性がいるとどうしても邪な目で見る者は出てくると思われたので、男子禁制とさせて頂いた。


 心が女性ならOKとしたが、なりすましを警戒するために、アグネスとバーニィになりすましチェック要員として朝から働いて貰っている。

 他、無理矢理入場しようとする奴がいないとも限らないので、[砂の勇士]の女性メンバーと[月の乙女]の面々にも警備として警戒して貰う。

 そんな万全の体制の元、午前中の部の整理券を持った乙女達が続々と入場していく。


 店舗選びはジュディスとシャイナに一任していたが、彼女達が選んだのは繁華している街中からは少し外れた場所に立つ、かつてある商人が持っていた邸宅だった。

 貴族にあこがれていたらしいその商人は、金に任せて貴族の屋敷に劣らない豪華な住まいを作り上げたのだが、息子の代で商売をしくじり。

 あっという間に転がり落ちた商人一家は、維持できなくなった屋敷を手放した。

 しかし、余りに豪華な屋敷に買い手がつくこともなく、そこは長い間放置されていたのだった。


 そこに目を付けたのがジュディスとシャイナだった。

 長く放置されたせいで荒れ果てている事を理由に買いたたき、驚くほどの安値で手に入れたその場所を、シュリが仲良くなったわらしべの時の細工師ギルエンさんの知り合いを募って、これまた格安で華麗にリフォームし。

 すっかり当時の輝きを取り戻した屋敷の1階部分を主に販売店舗として利用し、2階はいずれお客様の為のカフェサロンとする計画らしい。


 とはいえ、現段階ではカフェサロンは影も形もないため、今回のオープニングイベント中はファッションショーの会場として整えられていた。

 ファッションショーのステージなので、中心からランウェイが伸びている。

 そのランウェイをはさんだ両脇にいすが並べられ、そのいすを整理券を持ったお客さんが埋めていく。

 会場の席はあっという間に埋め尽くされ、あとはショーの始まりを待つばかり。


 老いも若きも、富める者も貧しき者も。

 互いの違いも身分の差も関係なく、並んで座った女性達はなにが始まるのか興味津々の様子で舞台に注目していた。


 会場には音楽が流れている。

 その音楽はアガサが開店祝いに気前よく譲ってくれた、彼女秘蔵の音楽を奏でる魔導人形によるもので、手順を踏んで曲を覚えさせれば、どんな曲でも覚えて奏でてくれるという優れもの。

 かつて、ヴィオラ達と冒険をしていた頃に行った海底の古代迷宮で見つけた遺物をアガサが修理したものらしい。


 そんな貴重な代物を貰っていいのか、念のためアガサに確認したところ、彼女のところにはオリジナルを研究して自作した、もっと小型の音楽魔導人形があるらしい。

 オリジナルのものよりは、少し性能は落ちるようだが。

 オリジナルは大きくて場所をとるため、性能は良くとも個人の部屋には置きづらく、ずっと収納されっぱなしだったから貰ってもらえた方が助かる、そう言われそれ以上の遠慮はやめてありがたく頂くことにした。


 そんな訳で、優雅な音楽が流れる中、人々の期待は徐々に高まっていき。それが最高潮に高まったところで会場内の照明が落とされた。

 次の瞬間、舞台上にスポットが当てられ、そこに立つ女性の姿が浮かび上がる。


 ごく普通のワンピースを身につけたごく普通の女性。

 実はこの人、今日来てくれたお客さんの中の1人。

 色付きの当たり整理券を貰った人にお願いして、こうして舞台に上がって貰った。


 そこへ、黒いスーツでびしっと決めたオーギュストが出てきて、お客様へ挨拶。

 自分がこの店の下着のデザイナー兼店長だ云々、店長は自分だが、オーナーは別にいてとてつもなく可愛い云々と、余計な情報も入っていた気がするが、まあ、及第点であろう挨拶を終え、彼はこれから行うデモンストレーションの説明をはじめた。



 「彼女は今日ここを訪れてくれた客の1人だ。彼女にはこれから、今までの下着と俺の作った下着の違いをここで体感してもらいたいと思う」



 そう言ってから、オーギュストは彼女の姿をじっと眺め、それから小さく頷くと、舞台上の台にいくつか用意されていた下着の1つを手に取り、彼女にそっと手渡した。



 「あなたにはこれがぴったりだと思う。だまされたと思って身につけてみてくれ。俺の下着を美しく身につけるコツは、この衝立の向こうのスタッフが教えてくれる」


 「は、はい」



 オーギュストの男らしい美貌に女性の瞳は釘付けだ。

 夢見心地で頷く女性を、オーギュストは舞台上に用意された衝立の向こうへと送り出す。

 その向こうでは、メイド服に身を包んだシャイナとルビスが待ちかまえていて、旧来の下着しか知らない女性に、オーギュストの下着の正しい身につけ方をレクチャーする手はずになっていた。



 「さ、お嬢様。こちらへどうぞ」


 「お、お嬢様!?」


 「大丈夫ですよぉ、お嬢様。私達がちゃんとした付け方をお教えしますからねぇ」



 衝立の向こうから聞こえてくるそんな会話。

 自分よりも若い女性2人からお嬢様呼ばわりされ、混乱するお客様の姿が目に浮かぶようだ。


 [悪魔の下着屋さん]の接客の基本として、お客様の事を呼ぶ際、女性に対しては「お嬢様」、男性に対しては「ご主人様」と呼ぶことにしよう、と言い出したのはシュリだった。

 商品の準備をするのに手一杯で、従業員の制服の準備を忘れており、しばらくはルバーノ家の予備のメイド服と執事服を流用しようという話になったとき、脳裏ぱっと浮かんだのだ。

 前世で流行したカフェの形態が。

 メイドカフェ、執事喫茶といったらコレだろう、と何気なく提案したのがみんなから絶賛され、気がつけば[悪魔の下着屋さん]の制服はメイド服と執事服、お客様は「お嬢様」「ご主人様」呼びでいく事が満場一致で決まっていた。



 「ささ。全部脱いじゃって下さい。大丈夫。他からは見えません」


 「そうそう、脱いだらこっちの下着に替えちゃいましょーね~? ほんと、びっくりするくらい付け心地が違いますからぁ!!」


 「は、はあ」



 衝立の奥からはそんな会話とごそごそと服を脱ぐ音。

 オーギュストは特に何か話すわけでもなく、衝立の前に腕を組んで立ってるだけ。

 ただ、男前な美形なのでそれだけでも絵になる。

 会場の女性達は、うっとりと彼を見つめ、ちょっとした身動き1つ、目線1つに吐息をもらす。

 きっと今日1日で、オーギュストのファンは急増することだろう。


 「後ろをとめたら、カップの中に手を入れて、こう……」


 「そうそう、背中とか脇のお肉を胸に寄せちゃう感じで」


 「うそ、でしょ!? これが、私の、胸? ほんとに!?」



 衝立の向こうから聞こえてくる驚愕の声。

 それに気づいた人達が、ぽつぽつと衝立の向こうの会話に耳をすませはじめたようだ。



 「この下着で毎日過ごせば、背中の肉も脇の肉も、だんだんと自分は胸の一部だったのだと信じ込ませる事ができます」


 「うんうん。おっぱいって育つものなんですよねぇ。この下着と出会ってそれを実感しました」


 「育てます!! 私、このおっぱいを大事に育てます!!」



 嬉しそうなそんな声が聞こえてきて、続いて再び服を身につけているらしい衣擦れの音。



 「……着替えが終わったようだな。では、俺の作った下着を身につけるとはどういう事か、その目で確かめてみて欲しい」



 オーギュストの声を合図に、衝立の向こうから1人の女性が出てくる。

 誇らしそうに胸を張りながら。

 衝立の向こうに消える前と後の、明らかな違いを目にして、観客達がざわめく。

 それほどの変化が、彼女の胸におきていた。

 服の上からも分かるほどに、明らかに2、3サイズはアップして見える胸の存在感は圧巻だった。


 まあ、スポーツブラの劣化版みたいな下着から、機能性抜群のブラジャーに付け替えたんだから、このくらいの変化は当然だ、と前世の世界を知るシュリは思う。

 でも、スポーツブラしか知らなかった人達からしたらものすごく画期的なことなんだろう。

 実際、初めてオーギュストの下着をつけたルバーノの女性陣はみんなものすごく感動していたし。



 (この下着、早くアズベルグのみんなにも持って行ってあげたいなぁ)



 お店が少し落ち着いたら、下着をお土産に1度アズベルグに帰ろう。もうすぐ夏休みになることだし。

 そんなことを考えているうちに、舞台の上にいたお客様は大満足で自分の席へ戻り、会場内も画期的な下着の登場に盛り上がり、デモンストレーションパートは好評のうちに幕を下ろした。

 でも、本番はこれから。



 「では、これから俺の下着のコレクションを披露しよう。楽しんでいって欲しい」



 言葉少なにオーギュストがそう告げ、舞台袖へと消える。

 お客様たちから残念そうな吐息がこぼれ、それと同時に流れる音楽が変わった。

 最初に舞台に上がったのは、シュリの愛の奴隷の5人。

 1人がランウェイを歩く間、残りの4人は思い思いのポーズを取り、下着の性能とデザイン性をお客様に披露する。


 モデルなんてしたことが無かったから、ファッションショーという案は出せてもウォーキングの仕方なんてものは教えられなかったのだが、なんの指導がなくとも堂々と自信を持って歩く姿はみんなとても美しかった。


 続いて出てきたのは、月の乙女の小隊長達。

 モデルの人手が足りなかったのでダメもとでお願いしたら、思ったより簡単に引き受けてくれた。

 その中で唯一ケイニーだけは出ることを渋ったのだが、正直5人の中で1番モデルとして欲しかったのがケイニーなので、どうにかこうにか説得した。

 結果、1日だけ女の子の格好をしてお出かけをする、という妙な約束をさせられてしまったが。


 でも、ケイニーは他のみんなにないものを持っていて、どうしても彼女にはモデルとして舞台に上がって欲しかったのだ。

 他にも候補として、フィオラの同級生のリメラの事も検討したのだが、まだ学生の彼女に頼むべき内容ではないと判断した。

 その結果、ケイニーはいま、舞台の上に立っている。


 両脇の4人の隊長達はオーギュストの下着で完全武装しているが、ケイニーがつけているのは旧来の下着。

 その姿をまずお客様に見せつけてから、ニルとソニアが足下に置いてあった布を持ち上げて、ケイニーの姿をその向こうに隠す。

 さっきのデモンストレーションのお客様のように、舞台上で生着替えを行い、前と後の違いを見比べてもらおうという趣向だ。

 ただし、さっきはお客様だったので下着姿を披露するわけにはいかなかったが、身内のケイニーには下着姿を披露してもらう。

 旧来の下着ではほぼ平面だった彼女の胸部装甲がどれほど強化されるか、お客様にしっかり見ていただこうというわけだ。


 そんな訳で、舞台上でケイニーがせっせと下着を着替えている間、4人の隊長は交代でランウェイを歩き、その素晴らしい下着姿をお客様の前で余すことなく披露する。

 そうこうしているうちにケイニーの着替えも終わり、



 「……もういいっすよ」



 そんなケイニーの言葉を合図に、ちょうどその時彼女を隠す布を持っていたトーリャとアマンダは目を見交わして頷くと、タイミングを合わせて布を持っていた手を離した。

 落ちる布の向こうから現れるケイニーの姿。

 純白の下着に包まれた彼女の胸は、旧来の下着では決してできなかった膨らみが、確かに作り上げられていた。


 そのことにどよめく客席を見回してにっこりと微笑み、それから流れるような仕草で前屈みになり、両腕で胸を寄せるようなポーズをとる。

 重力と物理の力で、ケイニーの胸にわずかではあるが谷間が現れ、そのことに更に会場がざわついた。

 それを確認してから、ウォーキング。

 ケイニーは自信を感じさせる足取りでランウェイを歩き、しっかりとポーズを決める。

 そんなケイニーの後ろ姿を見ながら、



 「一生懸命にポーズを決めるケイニー、可愛いなぁ」


 「……思ったよりあるのね、ケイニーの胸。このまま育てればもっと大きくなるかしら? おっぱいって育てるものだって言うし、今年のケイニーの誕生日はオーダーメイドの育乳ブラで決定ね」



 ぼそぼそと独り言をこぼす変態が2人。

 それを聞いたアマンダが笑顔の裏でうんざりしたような吐息を漏らし、トーリャは楽しそうにくすくす笑う。

 そんな中、自分の胸に突き刺さる多種多様な視線にちょっと居心地が悪そうな顔をしたケイニーがランウェイから戻り。

 5人揃ったところで再びポーズを決め、舞台袖へ引っ込んだ。


 次に出てきたのはジェスとフェンリー、キルーシャの3人。

 ファルマにも出演を持ちかけたのだが、意外と独占欲の強いジガドに下着なんてダメだと猛烈に反対され、出演は叶わなかった。


 3人は手に模擬刀をもって壇上へ上がり、ランウェイを歩く以外の2人は模擬戦を披露する。

 これは、激しく動いても大丈夫というデモンストレーションでもある。

 3人の身につけている下着は、冒険者や騎士など、戦闘を生業とするひとでも安心してつけられる、しっかりホールドタイプのものだった。

 なので、どれだけ動いても剣をふるってもぽろりすることはなく、ランウェイでのウォーキングと、舞台上での模擬戦を無事に終えた3人は晴れ晴れとした顔でポーズを決めると、舞台袖へと消えた。


 それと入れ替わりに出てきたのはナーザとサギリ。

 彼女達には、獣人向けの下着を身につけるモデルをしてもらえないか、わざわざお願いに行ったのだ。

 この場にジャズがいないのは、リメラ同様、彼女がまだ学生だからだ。

 といってもジャズの場合、学校に通いながらも冒険者としての活動も行っているのでもうほぼ冒険者といってもいいとは思うけれど。

 でも、まだ学生に片足をつっこんでいるのに無理にモデルを頼むこともないと判断して、ジャズには声をかけなかった。

 今日は、フィリアやリメラと一緒に、この会場のどこかでこのファッションショーを見ているはずだ。


 ナーザもサギリも、与えられた下着をしっかり着こなして、自信たっぷりなウォーキングを披露している。

 しっぽのところはちゃんと穴が空いていて、そこから出た猫しっぽと兎しっぽが動く様子は、何ともいえずに可愛らしい。

 着心地も、しっぽの出る穴の辺りの生地を伸縮性の特に強いものを使っている為、緩すぎずきつすぎず、いい感じだとの意見も2人から上がってきているし、種族により様々な形態のしっぽはあるが、よほど特殊な形状じゃない限りは問題なくはけるはずだ。


 2人の魅力的なしっぽが舞台袖に消えた後、最後に出てきた2人はヴィオラとアガサ。

 どうしても出たいとねじ込まれた2人だが、着こなしもポーズもウォーキングもばっちり決まっている。

 おじー様とヨリを戻してから、ヴィオラが王都に滞在する日数は格段に減ったが、シュリへの愛も変わりなく、定期的にたずねてきてはいた。

 今回も、店舗のオープニングの少し前にひょっこり現れ、どこから聞きつけたのか(たぶん、ナーザからだとは思うけど)自分も下着モデルをすると言い張り。

 それに便乗したアガサと共に、舞台に上がる権利をもぎ取った。

 断って、無理に舞台上に乱入されるよりはましだろう、とジュディスが折れた結果なのだが、2人ともまじめにモデルさんをしているし、やってもらって正解だった、んじゃないだろうか。


 さて、モデルさんそれぞれの出番が終わり、最後は全員勢ぞろいで順番にウォーキングを披露する。

 そしてフィナーレ。

 ウォーキングを終えたモデルさん全員が舞台の上に並び、そこへオーギュストが出てきて締めくくりの言葉を告げる。



 「俺のコレクションのショーはこれで終わりだ。楽しんでもらえただろうか。俺の作品を気に入ってもらえたなら嬉しい。この後は下の階で、買い物を楽しんでいってくれ」



 盛大な拍手と共に舞台に幕がおり、お客様は階下のショップへと送り出されていく。

 この後は、下着のモデルをした面々がそのまま階下へ降り、彼女達は下着姿のまま接客をする。

 そうすれば、間近で下着を身につけている姿を見ることができるし、付け方のコツなんかも質問しやすい。

 そう考えて、男子禁制のオープニングセール中は毎日、メイド制服のスタッフさんの他に、下着姿のスタッフも配置する事になっていた。



 「シュリ様。私達も行きましょう」



 ジュディスに誘われ、流れるような仕草で彼女の腕に抱き上げられる。



 「だめだよ。ジュディスに抱っこされてたら目立っちゃうでしょ? 僕はひっそり隅で観察してるから、みんなは接客よろしくね?」



 そう言って、どうにかジュディスの腕の中から逃れると、シュリは帽子を目深にかぶり直し、残念そうな顔をするジュディスや愛の奴隷達の後をこそこそしつつ追いかけた。

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