間話 女神様奮戦記①

 「第3回女神様会議~~!!」


 「お~! いいぞ~!」


 「……第3回? というか、今までこんな会議をしたことがあったか?」


 「雰囲気よ、雰囲気! もう~、相変わらず戦女神は頭が固いわねぇ。もっと柔軟になんないとダメよぉ? お堅い女は男に好かれないわよ?」


 「む? 堅い女は男に好かれない? それは困るな。他の男はどうでも良いが、シュリに嫌われるのは困る」


 「そうだぞぉ~、戦女神。ボクを見習ってもっと頭を柔軟にだね……」


 「後は胸がぺったんこなのもマイナスね。男の子はおっきくて包み込まれるようなおっぱいが好きなものよ」


 「そうそう、ぺったんこは……ぺったんこは……」


 「ふむ。その辺りの育ち具合はまあまあだと思うが。お前から見てどうだ?」



 戦女神ブリュンヒルデは言いながら愛と美の女神ヴィーナの方へと己の胸を突きだした。

 ヴィーナは吟味するようにその胸を眺め、おもむろに手を伸ばすとブリュンヒルデの胸を鷲掴みにした。

 そして、感触を確かめるようにもにゅもにゅと揉みながら、



 「ん~、大きさ、弾力、柔らかさのバランスが良いわね。大丈夫、合格よ、戦女神。まあ、アタシの完璧な美乳には負けると思うけど」



 大きく頷きそう評価する。



 「そうか。それは良かった。ところで愛と美の」


 「ん? なぁにぃ~?」


 「お前はいつまで私の胸を揉んでるつもりだ」


 「なんか、指を跳ね返すこの弾力が癖になっちゃって……ねえ、これって大胸筋? 大胸筋なの? 大胸筋鍛えたら私もこの弾力を手に入れられるわけ??」


 「んっ、こら、私の胸はシュリ専用なんだから、そんなに容赦なく揉むんじゃない。んっ、あっ」


 「お、可愛い声~」


 「う、うるさい! 大体、弾力を確かめるだけなら本体だけでいいだろう!? 先っちょを触るな、先っちょを!!」


 「あ~、ごめんごめん。つい」


 「まったく、油断も隙もない」



 ようやく解放された己の胸を守るように手を交差させ、ブリュンヒルデはヴィーナを軽くにらんだ。

 にらまれた当の本人はへらりと笑い、



 「えへへ~、さわり心地が良かったからよ。これならシュリも大満足ね」



 そう言って、ブリュンヒルデを抜かりなくしっかり持ち上げる。



 「そ、そうか。なら安心だな」



 ブリュンヒルデも褒められて悪い気はしなかったのか、厳しかった目元をゆるめた。



 「あの~、そろそろボクのおっぱい……」



 自分をまるっと抜きで進む2人の会話に、運命の女神フェイトがどうにか入り込もうとするが、



 「それにしてもあの弾力はすごいわ。ねね、今度、胸に効く運動とか教えてよ~」


 「んむ? 構わないが。いつも私がやってるのでいいのか?」



 2人はその声が聞こえなかったように更に会話を続ける。

 が、フェイトも諦めずに切り込んでいく。



 「2人とも、ほら、ぼちぼちボクのおっぱいのチェックもさ……」



 しかし、2人の会話が止まることはなく。



 「もちろんよぉ。アタシもあの弾力、欲しいわぁ」


 「大丈夫か、結構ハードだぞ?」


 「へーき、へーき。こう見えてやる時はやる女よ!」


 「そうか?」


 「ちなみに、どんな感じの運動してんの??」


 「そうだな。まずは腕立てを1000回から始まって……」


 「あ、ごめん。ムリ。やっぱなしで」


 「ボ、ボクの胸ぇ……」



 うつむき、ぐすっと鼻をならしはじめた様子に、流石にやりすぎたとヴィーナが慌てて声をかけた。



 「あ、ごめんごめん。わざとだけどやりすぎたわ。ほら、鼻かんで!」


 「む? そうだったのか? すまんな、運命の。てっきり順番でやるものと思って、お主を後回しにしてしまった。ほれ、シュリの為に別の世界から特別に取り寄せた飴玉なる甘味をやろう。これで許せ」


 「な、泣いてなんかないよ! ったく、鼻水だの飴玉だの、子供じゃないんだから……」


 「そう言う割にはちゃんと飴玉なめるのね」


 「ボクはものを無駄にするのはキライなんだよ」



 ブリュンヒルデに貰ったおっきい飴をほおばってほっぺの片方をまん丸に膨らませながら、



 「ん!」



 フェイトは2人に向かって己の胸を突きだした。

 ブリュンヒルデとヴィーナは顔を見合わせ、おもむろに2人揃って手を伸ばす。

 左右の胸を同時に2人それぞれに掴まれたフェイトは目を白黒させたが、すぐに神妙な顔になり2人の判断を待った。



 「ど、どうだい?」


 「ん~、そぉねぇ」


 「んむ」



 2人は吟味するようにフェイトの胸をもにゅもにゅする。



 「ぁ、ん……愛と美の女神はちょっとエッチくさく揉みすぎだし、戦女神は力が強すぎやしないかい?」


 「ああ、ごめんごめん。運命の女神のおっぱいは、そうねぇ。もっと牛乳飲んだらいいんじゃないかしら! 後は、別の世界から高性能な下着を取り寄せて思いっきり寄せて上げるとか!」


 「む? 強すぎるか? すまんな。お前の胸の評価か……ふぅむ、そうだな。取り敢えず、私と一緒にトレーニングをして大胸筋を鍛えてみたらどうだ?」



 己の想像の斜め上をいく2人の返答に、フェイトは口をあんぐり開けた。

 そして、それはボクの欲しかった答えじゃない、とがっくりと肩を落とす。



 「誰が豊胸の方法を教えてくれと。ボクが聞きたいのは、おっぱいを大きくする方法じゃなくて、正当なボクのおっぱいの評価……」


 「まあ、茶番はこのくらいにして、そろそろ本題に入りましょ」


 「茶番!?」


 「そうだな。おふざけはこのくらいにしようか」


 「おふざけ!!」



 真面目な顔で向かい合う2人から置いて行かれた感満載に、ひどすぎるよ、2人とも、とフェイトががっくり肩を落とす。

 だが、女神に限らず神というものはそういう生き物である。

 フェイトもその事実は身にしみて分かっていたので、諦めたように吐息をひとつこぼして気持ちを切り替えた。

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