第百三十八話 精霊の愛し子①

・炎の精霊・イグニスと精霊契約(仮)を行いました!


・風の精霊・シェルファと精霊契約(仮)を行いました!


・大地の精霊・グランスカと精霊契約(仮)を行いました!


・水の精霊・アリアンディと精霊契約(仮)を行いました!


(注)仮契約のまま一定時間過ぎると契約が無効になります。所定時間内に本契約を行ってください。



 いきなり頭の中にいつもの奴が流れて、シュリは心地よい眠りから無理矢理引き起こされた。

 でもまあ、そうでなくてももうしばらくしたら自然に目は覚めてしまっただろう。

 何でか知らないけど、着ぐるみが脱げていてすっぽんぽんになっていたせいで、ものすごく寒かったからだ。

 いくら日溜まりの中にいようと、風が心地よかろうと、素っ裸で耐えられる気温ではなかったのである。



 (あの着ぐるみ、以外と高性能だったんだなぁ)



 と無意識に感心しつつ、鼻水を垂らしながら着ぐるみに手を伸ばしてぎゅうっと抱きしめる。

 それだけでもとりあえず暖はとれたので、シュリはほっとしたように息をついた。

 それから改めて、さっき流れたアナウンスのことを考える。


 なにやら、契約がどうのと流れていたが、どう言うことなのだろうか?


 シュリは首を傾げつつ、とりあえずはステータスの画面を呼び出す。

 すると、ステータス画面の下の方、神様の加護とかそう言うのが書いてある上の辺りに、新たな項目が出来上がっていた。

 契約精霊、という項目だ。

 しかも、契約した覚えがないのに、そこにはすでに四人の名前が記されていた。

 まあ、名前の横に(仮)の文字は入っているが。



 「なんだぁ?これ??」



 シュリは思わず声に出して呟く。


 精霊って、あれだろうか?

 アンクを通じてシュリをここへお呼びになった、あの?

 その精霊様が、いつの間にか現れて、勝手にシュリと契約(仮)を結んだって事なのだろうか??


 シュリは混乱する頭で考える。

 正直、勝手に契約を結ばれたというところに、シュリはあんまり引っかかってはいなかった。

 そうやって勝手に何かを与える存在に、心当たりがあったからだ。


 それは誰か?

 もちろん、現在シュリに加護を与えてくれている三人の女神様の事である。

 特に、運命の女神様なんかは、シュリが全く知らない間に加護を与えてくれちゃってたりした。


 そんな経験があるから、精霊もそんな感じだろうと、勝手に思っていたのだ。

 実際の精霊契約は、そんなものではないのだが。

 本人の了承なく、一方通行に契約を結んだ簡易版契約だから、あくまで(仮)なのである。

 つまり契約したくなければ、まだお断りできる余地はあるということだ。


 だが、シュリがそんなことを知る由もない。

 が、とりあえず、ここに呼び出された理由である精霊様と知らないうちに契約をしてしまったのであれば、もうここにも用は無かろうと立ち上がりかけたとき、



 「シュリっ!!やっとみつけたぁぁぁぁぁ!!!」



 そんな声と共にものすごい勢いで飛びつかれて、その勢いのまま地面をごろごろ転がった。

 飛びついてきたその人と共に。



 「……おばー様?」



 シュリはぎゅうぎゅうに抱きしめられたまま見上げれば、そこにはちょっと前に分かれたヴィオラの今にも泣き出しそうな顔があって。

 シュリはちゃんと迎えに来てくれたんだなぁと、そんなごく当たり前の事実にちょっと感動しつつ、ほっこりと胸を暖かくしたのだった。

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