転生刃護~カクヨム版~
押利鰤鰤 ◆r5ODVSk.7M
第1話 the Beautiful World
子供の頃というものは、ただ根拠もなく毎日は楽しいものであり、それは大人になればなるほど可能性と共に広がっていくものだと思っていた人は多いと思う。
もしそうでなく、今と未来を呪って生きているような子供時代だったとしたら、それは不幸であったとしか言いようが無い。
子供が子供らしく生きられない様な社会に幸せなどがあるのだろうか。
たまに耳にするのが「ドラえもん」の話だ。
ドラえもんの道具でのび太は目の前の問題を解決してもらい、甘やかされているから、そんな姿を子供に見せるのは教育的に良くないと言う意見。
作者の 藤子・F・不二雄先生はのび太もいつかはドラえもんが居なくなって、問題を自分の力で解決しなければならない時が来る事を解っていると言っていた。
その上で、のび太はまだ子供であって、子供が子供として甘やかされるのは、健全な世の中として赦されるべき事であると、そんな事を言っていたと言う記事を読んだ事がある。
恐らくは、自身の子供時代の戦争体験が根底にあると思われるが、現代でも子供が労働力として教育を受ける機会が奪われたり、あるいは少年兵として戦場にかり出されるような世の中がまともであると言えないという事は誰しも理解できる事だろう。
子供はあくまで子供であり、親の老後の世話を見る為の労働力でなければ、発展途上国でよく見かけられるように、親が酒とドラッグに溺れて寝て暮らしている中で、路上で物乞いをして家族を食わせる為に存在しているわけではないのである。
最近はすっかり「虐待」と言う呼び方に変わったが、私が子供の頃、ニュースを見ているとたまに「せっかん死」と言う報道があった。
今では単純に「虐待」と言う事になるのだけれど、昔は子供が言う事を聞かないので親が「躾」と言う事で体罰を振るい、加減を間違えて死なせてしまった場合に使われていた。
人一人が死ぬほどの暴力を受けても、それが躾の延長上と言う事で「せっかん死」である。
そんな事件を過失ののように報道する様子を見て子供心に違和感と怒りがあったのだけど、幻冬舎から出ている
「声だけが耳に残る」 著/山崎マキコ
と言う小説の冒頭で主人公が同じ事に怒りを覚えている姿を読んで、あぁ、自分の感覚と同じように感じている人もいたのだなと思うのである。
作者の山崎マキコ先生は私よりほんの少し年上なので、世代的に近いと言う事で過ごした年代がほぼ同じであるから重なってくる部分もあるのかも知れないが、それとは別に命を落とす事がなかったにせよ、幼い私の目の前でそういう折檻が行われていたという事もあるのだろう。
私の母はよく姉を叩いていた。
昔の掃除機の吸い込み口から本体に繋がるホースまでの堅いプラスチックの柄の部分で。
もちろん、空気がうねる程のフルスイングである。
それで頭を叩くとカーン!!とか、パーン!!とか乾いた音が響き渡り、次に来るのが姉の悲鳴である。
泣き声は家の壁を通り抜け、外まで伝わっていただろう。
今なら近所に虐待で警察へ通報されるのは間違いないと思う。
姉は泣きながら言う。
ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ !!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!! ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさい っ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!! ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさ いっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!
幼い私には姉が何をして母親をそこまで怒らせているのが理解できなかった。
大きくなってから考えてみれば、それほどたいした理由があって、あそこまでの虐待を受けていたのではないという事が解った。
言う事を聞かない。
言う事を聞かないと、自分が夫に言う事を聞かせられないと文句を言われる。
自分の立場が無くなる。
自分が悪くなる。
つまり、母は教育的な理由ではなく、娘の為ではなく、自分の為に娘を叩いていたという結論に至る。
そんな世界が美しいわけがないのである。
自分の中で現実という奴は以外と厳しいと理解しなければ無くなったのはいつだったのかと考えてみれば、それは中学校に入学した頃かも知れない。
制服は着なければならないし、教師は小学校と比べても格段に厳しく恐ろしい。
もちろん高校進学という壁を控えている生徒達を預かっていて、出来る限りに希望する限りその壁を乗り越えさせようと思っていればこそ、それは厳しくなるのかも知れないのだけれども、温かった小学校時代と比べても、いきなり熱湯に叩き込まれた気分であって、逃げ場もなければ行き場もないように感じられたのかも知れない。
もちろん今なら不登校という手段も生徒側からすればあるのだろうけど、当時の心境としてはせめて高校くらい出ていなければ、この先の人生が詰んでしまうので選択肢がないと言う思いだった。
クラスにも不登校の生徒はほぼおらず、学年でも二人もいなかったように思う。
その唯一の不登校生徒とは小学校の六年間と、中学の二年間、彼女が転校するまで同じクラスだった。
中学ではほとんど登校しないで三年生の春先に転校していったが、小学校の時になぜ学校に来ないのかと聞いた事があった。
「うち、お父さんが居なくて、お母さんが働いているから、小さい弟たちの面倒を見ないといけないもの」
それは親として正しくないだろうと心の中で思った。
口にしたところで、小学生の自分に救う事はできないし、それを受け入れている彼女に何も言う事が出来ない。
中学二年生のある日、授業を終えて家に向かって歩いていると、その子と擦れ違った。
もう半年は学校に来ていないはずだった。
「学校に来いよ」
私はそう声をかける。
「もういいの。行ったところで何も解らないもの」
彼女はそう笑って答えた。
世界というのは残酷だなと思う。
救ってくれる人がいないのだから。
当然自分は救う力など無いし、自分の事で精一杯で、いつしか高校受験という壁に追われていくのであった。
いつしか私も大人になって、その頃の親よりも自分は年上になってしまい、自分の家族など持っていないのだけれども、それはそれで当然の事だと思う。
自分は人の人生に責任など持てないし、持ったところで家族を経済的に支えていく事など出来ないからだ。
いちおうこれでも正社員であって、毎月100時間近い残業をしているのにもかかわらず、一家族の生活を支えていく事が出来ない程度の収入である。
まともに働いて、生活が出来ない社会とはどういう事なのだろう。
そんな世界は美しいだろうか?
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