第28話 大事な存在だからこそ
高宮くんに好きな人がいる。
その事実は私を苦しめる。
諦めるんじゃないの?私。
「蜜葉ちゃん、蜜葉ちゃん!!」
「あ、優里香ちゃん!何?」
「やっぱり気にしてる!蜜葉ちゃんに高宮くんを諦めるなんて無理だよ」
「でも!私の気持ちは迷惑だし」
「高宮くんの好きな人なんて蜜葉ちゃんに決まってるじゃん」
「な、無いから!」
「あたし、結構勘鋭いよ?」
「違うに決まってるよ!高宮くんが私を好きなわけないよ」
「蜜葉ちゃんってばー!あ、じゃあ桜小路に聞いて貰う?」
「もういいの!」
「でも・・・」
「大丈夫だよ、優里香ちゃん」
諦めるって決めたんだもん。
諦めなきゃ。
「さーて、今日は冬コミに向けて作業するぞ!綾斗、ドラマCDやるんだよな?第二弾」
「え、ええ」
放課後になると、部活だ。
冬コミに向けてやる気を見せる姫島くんに綾ちゃんは複雑な顔をする。
そうだよね。
部活続けられないかもしれないって話してないし。
「やっぱり今回は過激に行くか?ちょっとエロい感じで」
「結斗は変態」
「俺は顧客視点なんだ!桜木だってドキドキするCDのが良いだろ?」
「そ、そうだね。女性ユーザー向けだし」
「陸斗はどう思う?」
「ああ」
「ああじゃなくて!何か案ねぇか?」
「そういうのはストーリー考えるのが得意なお前らに任せる。俺、分かんないよ」
「は?皆で案出すから会議なんだろうが。陸斗も参加しろ。お前だってやりやすい方が良いだろ?」
「俺は声優志望だ。何だってやる。お前らに任せた方が良い」
「丸投げかよ」
「まあまあ、ユイユイ」
「つーかさ、さっきから何だるそうな顔してんだよ?」
「は?」
「陸斗、また部活頑張るって言っただろ?俺は嬉しかったんだぜ?だったら会議でもちゃんとやる気出してくれよ。
「わ、悪かった」
「よし、陸斗は素直だな!」
「結斗、俺を琴莉扱いすんな」
「し、してねぇわ!」
私達は笑う。
「よし、なんか腹に入れるか。陸斗、昼少なかったから調子出ねぇんだよ。購買行こうぜ」
「そうだな・・・」
「あたしは太るからパスー!野郎だけで行って来なさい」
「綾斗のその言い方腹立つな」
「行ってらっしゃい!」
高宮くんと姫島くんは購買へ向かった。
「高宮くん、大丈夫かな」
「陸斗は意外と繊細だからね」
「そうなんだね」
「まあ、ユイユイがいるから大丈夫よ。ユイユイは陸斗の一番の理解者だから」
「そうだよね!」
「みっちゃんは陸斗陸斗だねぇ」
「ご、ごめん!」
「もう!謝らないの!」
「そうだ、今日の放課後!綾ちゃんち行って大丈夫?」
「あら、デートのお誘い?」
「もう!綾ちゃんのご両親と私が話をしたいの。やっぱりこのままは良くないから」
「みっちゃん・・・」
「迷惑かな」
「ありがとう。みっちゃんには申し訳無いけど、お願いできる?僕からちゃんと話はする。みっちゃんは側にいて。それだけで心強いから」
「うん。役に立てるのであれば」
すると
いきなり部室のドアが開かれた。
「た、高宮くん!」
「・・・財布、忘れてた」
「もう!陸斗のおバカさん!」
聞かれてた?
「良かったな、桜木」
「え?」
「結斗ー、財布あった!」
高宮くんは部室を出て行った。
「何か勘違いしている?あの子」
「聞いてたのかもしれないね、私達の話」
「みっちゃん・・・ごめん・・・」
「良いの!私、もう高宮くんの事好きじゃなくなってきてるから!大丈夫だよ」
「嘘。泣きそうな顔してる・・・」
「良いの!高宮くん、好きな人いるみたいだし、諦めるよ」
「えっ?」
「もう良いの!」
大丈夫。
諦められるよ、きっと。
姫島くんと高宮くんが戻って来ると、会議が再開された。
高宮くんも姫島くんに言われたからかたまに案を出すようにはなった。
だけど
部内はぎこちない空気が流れていた。
部活が終わると、皆で帰る。
だけど、空気は変わらない。
「はぁ!何とかまとまったし、後は台本作って音源化するだけだな」
「そ、そうだね!冬コミまでハイスピードでやらないと!」
「桜木は連載に向けて頑張らなきゃだし、今回は台本のチェックお願いするわ」
「良いの?姫島くん」
「おうよ!桜木の負担減らしたいしな」
「ありがとう!姫島くん!」
「お、おう!俺に任せろ!」
私は姫島くんと台本について話しながら歩く。
だけど
「何怒ってんの?陸斗」
「別に。気にしすぎだろ」
「嘘。あたしの目見ないし」
「綾斗さ、学祭辺りからおかしくね?俺や結斗といる時だけなんか変」
「は?あたしが?」
「俺、そういうのムカつくんだが」
「おい、綾斗!陸斗!何睨み合ってんだよ?」
「結斗は気にならないのかよ?」
「気になるけど、綾斗だって俺らに言えない事あんだろ。友達だからって何でも話すわけじゃねぇし」
「俺は友達に何でも話してもらいたい」
「それって陸斗のエゴよ。みっちゃんと内緒話してただけで怒ってるとかガキじゃん、陸斗。それが気になるから怒ってんでしょ?」
「陸斗、そうなのか?」
「俺は・・・」
「僕はただ好きな子に真っ直ぐなだけ。陸斗みたいに消極的な奴とは違う」
「綾斗、落ち着けよ。陸斗も。話が見えないぞ」
「なんなんだよ、綾斗」
なんだか余計部内がギスギスしてきた。
「俺、あっちだからよ」
「俺も。じゃあな、桜木。綾斗・・・」
「あ、バイバイ!」
「またね」
綾ちゃんが不機嫌な顔をして早足で歩き出したので私は綾ちゃんを追っ掛ける。
綾ちゃん、大丈夫かな?
「ごめんね、振り回して」
「え?あ、大丈夫だよ!」
電車に乗り込むと、綾ちゃんは私に謝った。
「陸斗はなーんにも分かってないんだ」
「高宮くん、心配してるんじゃないかな?綾ちゃんが何か隠してるって察してたし。やっぱり話そうよ?綾ちゃん」
「親に捨てられるって?」
「っ・・・」
「言えないよ。情けなくて。僕はこれでもやっぱり男子だ。あいつらに弱みを見せたくない」
「でも・・・」
「だって陸斗もユイユイも僕を強い人間だと思ってる。部長として何だかんだ頼ってるし、僕の情けない姿を知らない。見せたくない!見せて幻滅されたくないんだ」
「高宮くん達はどんな綾ちゃんもきっと・・・」
「僕は捻くれてる。親から見放されて生きてきたから。人を信じるのが苦手なんだ。僕がいなくなって部活が無くなったって・・・」
「高宮くんはもう一度部活頑張るって決めたよ?姫島くんだってさっきやる気満々で会議を仕切ってた。高宮くんも姫島くんも部活が大好きなんだよ。確かに最近ギスギスしちゃう事もあったけど。だから、部活を作った綾ちゃんに感謝してるし、綾ちゃんが大好きだと思うよ」
「みっちゃん・・・」
「皆、部を無くしたく無いに決まってるよ。それに綾ちゃんが倒れた時、二人ともすごく心配してたよ。綾ちゃんがいなくなったらたくさんたくさん悲しむよ」
「っ・・・」
「私は友達が辛い事を何も言ってくれない方が悲しいよ。きっと私は上辺なんだなぁとか考えちゃう。高宮くんや姫島くんだって悲しいはずだよ?綾ちゃんが弱みを見せないままでいたら」
「みっちゃんは本当純粋ね。羨ましいくらい」
「え?」
「分かった。今日、親と話つけた後・・・陸斗達に話してみる」
「うん!」
綾ちゃんはずっと高宮くん達に全てをさらけ出せずにいたんだ。
どんなに仲良くても実は色々あるんだなぁ、男子でも。
高宮くん、怒ってたし・・・ちゃんと安心させたいな。
まずは綾ちゃんのご両親と話さなきゃ。
「着いた!」
ここに来るのは綾ちゃんの看病以来。
相変わらず、大豪邸!!
バラ園ある家って・・・。
「今日はたまたま二人ともご在宅よ」
綾ちゃんはそう言うと、髪をおろす。
「綾ちゃん?」
「男子として話さないと」
そう言うと、綾ちゃんは化粧を落とすシートで化粧も落とす。
「男子モード、久しぶりだ」
「父さん、嫌がるから。僕の女装」
「き、緊張してきた」
「ありがとうね。みっちゃん。でも、みっちゃんは見ているだけで良いよ。僕の闘いを」
「う、うん!」
「さ、行こっか」
綾ちゃんと私は家の中へ。
「ただいま帰りました」
綾ちゃんが挨拶するも、返事は無い。
リビングからテレビの音が漏れているから人がいるのは確かなのに。
「いつもこうなんだ」
綾ちゃんは寂しく笑う。
私はいつも帰る度、母が暖かく迎えてくれる。
なのに
綾ちゃんはいつも迎えて貰えない。
まるで空気のような扱いだ。
そんな毎日を彼が過ごしていると思うと、胸が痛む。
だけど
綾ちゃんは私にスリッパを出すと、気にせずリビングへ。
「ただいま帰りました。父さん、母さん!話があります」
「なんだ?」
私もリビングへ。
「その子は?」
「僕のクラスメイトの桜木蜜葉さんです」
「親がいる時に女を連れ込むとはな」
綾ちゃんのお父さんは鋭い目つきをしていて、柔道家にいそうな外見をしていた。
厳つい感じのお父さん。
「私、忙しいのだけど」
綾ちゃんのお母さんは不機嫌な顔で言う。
綾ちゃんのお母さんは三十代後半くらいで髪をハーフアップにしていて、吊り目のきつそうな女性だ。
「父さん、母さん。僕は・・・家を出て行きたくありません!」
綾ちゃんは突然言い放った。
「何を今更?こないだ同意してたくせに」
「どうして家族なのに僕は出て行かなければならないんですか?」
綾ちゃんは拳を震わせながら言う。
「貴方がいるせいで海斗はいじめられてるのよ」
「っ・・・」
「女装した気持ち悪い兄がいるって知れたからね。保護者である私達まで白い目で見られるようになったわ」
そんな言い方・・・。
「弟の人生を壊さないで!」
綾ちゃんのお母さんは冷たく言い放った。
海斗って綾ちゃんの弟だよね?
「だ、だからって綾ちゃんを追い出すんですか?」
私は綾ちゃんのお母さんに聞く。
「そうよ。海斗の為よ」
「綾ちゃんも貴方のお子さんですよね?」
「私が産んだわけじゃないもの」
あ、そっか。
お母さんは継母なんだった。
でも・・・
「綾ちゃんの事、ちゃんと知らないですよね?綾ちゃんの外見の話ばかりして内面を見てないように見えます」
「みっちゃん!」
腹が立った。
綾ちゃんと向き合ってないんだ、お母さんは。
「綾ちゃんはとても優しくていつも明るくて頼りになる素敵な男性です!お母さんもちゃんと綾ちゃんの事を知れば好きになるはずです」
「知る必要無いわ。私は夫と海斗がいれば良いの。こんな息子、いらないわ」
ひどい!!
「海斗は嫌なはずよ。こんな兄で。だから私はあの子の為に・・・」
お父さんはずっと黙っている。
「あの、お父さんはどう思ってますか?綾ちゃんの事」
私は綾ちゃんのお父さんに聞く。
「俺は・・・」
「夫も同じ意見よ。ずっと迷惑してたの、綾斗くんに」
綾ちゃんのお母さんが綾ちゃんのお父さんの言葉を遮る。
「結局、父さんも味方はしてくれないのね」
綾ちゃんは悲しい表情で言う。
「綾斗・・・」
「もう良いかしら?私としては出て行ってくれないと困るの。貴方、前の奥さんにそっくりでムカつくし」
はぁ!?
「そんなの理不尽ですよ!」
「貴方は関係ないでしょ!」
私が反論すると、綾ちゃんのお母さんが私を睨みつける。
「綾ちゃんはずっと苦しんでたんです。ご両親から関心を持たれなくて。今、綾ちゃんはお父さんやお母さんと向き合おうとしてます!受け入れてあげてください!お願いします!」
「みっちゃん・・・」
「綾ちゃんの事もっと知ってあげてください!お願いします!!」
「な、何なの?この子・・・」
綾ちゃんをちゃんと暖かく受け入れて欲しい。
綾ちゃんを苦しめないで欲しい、ご両親には。
私は深く頭を下げる。
「みっちゃん、良いのよ」
「綾ちゃん?」
「僕は・・・ちゃんと家族になりたいんだ!父さんと母さんと海斗と四人で!」
「綾斗・・・」
「僕は家を出たくない!学校をやめたくない!大切な仲間と築き上げてきたものを失いたくない!」
綾ちゃんは強い口調で言った。
すると
「ただいまぁ」
突然リビングのドアが開かれた。
綾ちゃんの弟さん?
どことなく綾ちゃんと雰囲気が似た小さな男の子がリビングに入って来た。
だけど
「海斗、おかえりなさい。って!あら、やだ!何その怪我!」
綾ちゃんのお母さんが彼の元へ駆け寄る。
彼は顔や膝にバンソウコウを貼ってる。
だけど辛そうな顔を一つせず、言った。
「お兄ちゃん、僕・・・いじめっ子に勝ったよ!」
「海斗、あんたまさか・・・」
綾ちゃんはぎょっとした顔をする。
「お兄ちゃんが教えてくれた技をたくさんかけてきた!だってあいつら、お兄ちゃんを気持ち悪いとか言うから。だから、こらしめた!やられたらやり返さないとなんだよね?お兄ちゃん!」
綾ちゃんの弟・海斗くんはキラキラした瞳で言った。
「綾斗、お前海斗に何教えた?」
「海斗、気弱ですぐいじめられそうだったから・・・柔道の技を少し。父さんが昔、僕に教えてくれたやつ。もちろん相手にやられたらやり返せって言っただけ!いきなり何もしてない相手にするなと教えたよ!」
綾ちゃん、弟さん想いなんだな。
「海斗が不良に・・・」
綾ちゃんのお母さんの顔が青ざめる。
「でも、いじめっ子達とこれで仲良しになったよ!僕がかけた技、お兄ちゃんが教えてくれたって言ったらお兄ちゃんかっこいいねって!僕、強くなった!お兄ちゃんのおかげ!」
「そう。良かったね、海斗」
「うん!」
すると
いきなり綾ちゃんのお父さんが笑い出した。
「貴方?」
「すまん。まさか綾斗が弟とこんなに仲良くなっていたなんてな。全然知らなかった」
「父さん・・・」
「俺は選択を間違えていた。綾斗はいつも家で居心地の悪そうな顔をしていた。だから、叔母さんの家にいた方が幸せなんじゃないかって。でも、俺は・・・綾斗を嫌いなわけではないんだ。捨てるという認識ではない。綾斗は母さんが大好きだったから今の新しい家庭にずっと不満があるんじゃないかって俺は思ってたんだ」
「え?」
「気付いたら綾斗だけ一人にしていた。俺はどうする事も出来ずにそのままにしてしまった。綾斗と向き合ってなかったんだ。綾斗が女装したのだって俺が綾斗に自分の理想を押し付け、自由を奪ったからなんだろ?当てつけだったんだな」
「そうだよ・・・僕はずっと一人だった。父さん達と上手く関われなかった。正直見放されてすごく辛かった。僕は誰からも必要とされない人間なんだって思った。でも、やっぱりこのままは嫌だった。ちゃんと自分の気持ちを父さん達に伝えないままなのは。それに、今の僕は仲間もいる。全部手放したくないし、手放しちゃいけないんだ!家族も仲間も」
綾ちゃん・・・
「母さん・・・俺はもう一度家族をやり直したい」
「あ、貴方!?」
「母さんは受け入れるのが大変かもしれないが、俺にとって綾斗も海斗と同じくらい大事な息子だ。俺は綾斗を手放したくない」
綾ちゃんのお父さんが言うと、綾ちゃんのお母さんは唖然とした表情をする。
「綾斗とちゃんと向き合おう」
「海斗は・・・お兄ちゃんが好き?」
綾ちゃんのお母さんは海斗くんに聞く。
「うん!僕、お兄ちゃん大好き!強くてかっこいいから!皆が気持ち悪いって言っても僕はそう思わないの!僕はお兄ちゃん世界一かっこいいと思うから!」
海斗くん・・・。
「わ、分かったわ。もう一度・・・やり直しましょう」
綾ちゃんのお母さんが言うと、綾ちゃんは笑顔になる。
「桜木さん、だったかな。すまなかった。巻き込んでしまって」
「い、いえ!」
「安心したよ。綾斗を想ってくれてる子がいて。ありがとう、綾斗の為に」
綾ちゃんのお父さんは優しい声で私に言った。
綾ちゃんのお父さんはずっとどうしたら良いか分からなかったんだな。
家族の在り方が。
私の家は家族皆仲良しだからこういう感覚は分からない。
でも
綾ちゃんの気持ちを考えたら辛かった。
だから良かった。
上手く行きそうで。
「みっちゃん、ありがとう。みっちゃんがいてくれたから勇気出せたよ」
「いえいえ。良かった。綾ちゃんがちゃんと家族と話せて。ずっと辛かったんだよね」
「うん。でも、もう一度頑張るよ。僕は海斗の憧れのお兄ちゃんだから。しっかりしなきゃ」
綾ちゃんは私を家まで送る事に。
綾ちゃん、すごく嬉しそう。
良かった。
「ねぇ、みっちゃん」
「ん?」
「僕、みっちゃんが本当に大好きだよ」
「あ、綾ちゃん・・・」
「でも・・・みっちゃんが大好きだからみっちゃんには幸せになって欲しい。みっちゃんも我慢するのやめて」
「え?」
我慢するのをやめる・・・?
綾ちゃん?
「おっはよう!」
「やけに元気だな、綾斗」
「うん!ハイテンション美少女よ!」
「つっこむの面倒さ・・・」
翌朝、学校に行くと綾ちゃんがハイテンションで登校してきた。
「綾ちゃん、おはよう」
「おは!てか、ユイユイ。なんか不機嫌な顔してなーい?」
「当たり前だ!琴莉に好きな奴ができたんだよ!橘海斗とかいうくそガキ!」
「あら・・・」
えぇっ!
「綾ちゃんの弟さんって琴莉ちゃんと同じ小学校だったの?」
私は綾ちゃんに小声で聞く。
「確かそうだったわ。ユイユイには内緒ね」
「う、うん・・・」
「こないだまでお兄ちゃんと結婚するーだったのに!」
「ユイユイ、落ち着いて!」
「ぶっ飛ばしてやる」
「シスコンすぎて怖いわ、ユイユイ」
あ・・・
高宮くんが登校してきた。
「おはよう、高宮くん」
私は高宮くんに挨拶する。
だけど
「ああ」
高宮くんはそう言うと、自分の席に鞄を置いて教室を出ようとする。
だけど
綾ちゃんが呼び止めた。
「陸斗、どこ行くのよ?」
「C組」
高宮くんは素っ気なく答えると、教室を出て行った。
高宮くん・・・?
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