第18話 桜木蜜葉の決断
「俺・・・桜木の事が好きなんだ」
姫島くんに告白をされてしまった。
「じょ、冗談・・・」
「ちげぇよ。本気」
姫島くんが私を好きだなんて考えた事無かった。
でも、私は・・・
「ごめん、私は姫島くんの気持ちに・・・」
「分かってるよ。んな事。でも、今は・・・だろ?」
「へ?」
「今はそれでいい。俺はただ、桜木に自分の気持ちを伝えたかっただけ。これからは遠慮しないからな!」
「ひ、姫島くん・・・」
「帰ろうぜ、桜木」
人生で初めて告白されてしまった。
しかも、好きな人の親友に。
「じゃあな、桜木」
「う、うん!また部活で」
ど、どうしよう!?
姫島くんと別れ、帰宅すると私はすぐさま部屋へ。
「姫島くんが私を・・・」
(姫島くんに告白された・・・)
私は優里香ちゃんにLINEを送る。
(マジ!?それはやばい(*ˊૢᵕˋૢ*))
返信早っ!
(お断りしたけどね:(´◦ω◦`):諦めるって感じではなかったよ。)
(そっか。蜜葉ちゃんは高宮くんが好きだもんね。)
(うん。どうしたら良いか分からない!)
(まあ、いつも通りに振る舞うしかないよ!蜜葉ちゃんは姫島くんの事気になるかもだけど、ちゃんと高宮くんにアプローチは続けなきゃ!)
(が、頑張る(ó﹏ò。))
そうだよね。
いつも通りを意識しよう。
だけど
次の部活日。
「おはよ、桜木」
「ひ、姫島くん!?」
私が部活に行くと、部室には姫島くんしかいなかった。
「早いんだね」
「桜木、いつも早く来るからな」
「そ、そっか」
私は姫島くんの真向かいに座る。
「隣、座らねぇの?」
「へ?あ、綾ちゃんがよくこっち側座ってるから」
綾ちゃんか高宮くん早く来て!!
意識しまくりだよ!!
姫島くんを避けたいわけじゃないけど、そうなっちゃう。
だけど
「俺もこっちにしよ」
「へ!?」
姫島くんは私の隣へ。
ひ、姫島くん!?
「何、びびってんだよ」
「だ、だって・・・」
「そういや、桜木って髪ツヤツヤだよな。いつも寝癖一つなく真っ直ぐだし」
姫島くんはいきなり私の髪に触れる。
ひ、姫島くん!?
いつもこんな事しないのに。
顔が赤らむのが分かる。
ど、どうしよう!?
「あの?姫島くん?顔、近いよ?」
「わざとだ。桜木、動揺させてぇから」
えぇっ!?
だけど
「やめろ!」
え?
高宮くんが来て、いきなり姫島くんの腕を強く引っ張った。
「何だよ?陸斗」
「桜木、困らせるな」
「何だよ、陸斗に俺を叱る権利ねぇだろ?彼氏でもねぇのに」
「俺は・・・」
「陸斗だって知ってるだろ。俺は桜木が好きなんだ。好きな奴に構って何が悪い?」
あ、そっか。
高宮くんも姫島くんの気持ち・・・知ってるんだ。
「焦って八つ当たりするとかだせぇよ、陸斗」
「何だと?」
高宮くんは姫島くんの胸ぐらを掴む。
「た、高宮くん!ストップ!私は大丈夫だから、ね?」
「結斗、許せない」
「高宮くんってば!」
「まさか陸斗が敵になるとはな」
すると
「おはよう!みんなぁ!」
あ、綾ちゃん!
「・・・って!何、不良漫画みたいな事してるのよ!陸斗、ユイユイ!やめなさい!め!」
綾ちゃんが止めに入る。
だけど
「うるせぇ、男同士の闘いだ。オカマは黙ってろ」
「綾斗には関係ない」
二人は綾ちゃんの言う事を聞かない。
「あぁ?誰がオカマじゃ!ぶっ飛ばすぞ?お前ら」
あ、綾ちゃん!?
「綾ちゃん、どこのヤクザ!?」
「あら、やだ。あたしったらはしたなーい」
「綾ちゃんまで喧嘩に加わらないで!私じゃ止められないよ!」
「ごめん、ごめん。ねぇ、みっちゃん」
「ん?」
「今、あたしが二人に柔道の技かけたら二人の骨、何本くらい折れるかしら?」
「綾ちゃん、怖いって!!」
「てへぺろ!仕方ないわね。あぁ!部室の入り口に鬼島先生がぁ!」
「えっ?」
すると
綾ちゃんは部室の入り口に目を向ける二人の手に手錠をかける。
「は?」
「綾斗、何する」
「これで二人はずーっと一緒。きゃっ!仲良しこよしね」
「やめろ!俺は陸斗と離れたいのに!」
「そうだ。俺、結斗やだ!」
「ふふっ。嫌でも一緒にいなきゃいけない。なんて萌えシチュ」
「大体、綾斗だってバトルする側の人間じゃねぇか」
「あたしは大人だから。喧嘩するほどガキじゃないわ」
何でこんなギスギスしてるんだろ。
というか
「綾ちゃん、何で手錠を?」
「みっちゃんにイタズラする為だよ?」
「えっ!?」
「冗談だってぇ!今日はバイトで婦人警官のコスプレをする日だからね!」
「婦人警官・・・」
「あたしが初めて捕まえたのは野郎二人かぁ。みっちゃんが良かったなぁ」
捕まらなくて良かったかも。
「おい、綾斗!手錠外せ!」
「二人が仲直りしたら外してあげる」
「何で仲直りしなきゃなんねぇんだよ!」
「そうだ。俺らの問題だ、ほっといてくれ」
「あんた達は本当ーにバカね!!」
「は?」
「バカ?」
「みっちゃんが悲しそうな顔してんのわかんないわけ!?」
「え・・・」
「桜木・・・」
「みっちゃん、頑張って止めてたのに」
「あ・・・」
「そうだったか・・・」
「良いの!気にしないで?」
「悪かった!桜木!」
「俺も。結斗とケンカしたくなかった。ごめんなさい、桜木」
「大丈夫、大丈夫!ケンカする程、高宮くんと姫島くんは仲が良いんだよね?」
「あ、ああ。そうかもしれねぇな」
「ふ、不本意ながら」
「天然って恐ろしいわ・・・」
「綾ちゃん?」
「さ!気を取り直して!みんなにビッグニュース!!」
「なんだ?綾斗」
「じゃーん!創作研究部、合宿決定しましたぁ!」
綾ちゃんは合宿のしおりと表紙に描かれた冊子を私達に見せ、言う。
「合宿?私達が?」
「そ!夏休み最後は合宿で締めるわよ!」
「合宿って。コミケ終わったばっかじゃねぇか」
「分かってないなぁ、ユイユイ!学園祭と冬コミ!勝負はまだまだあるの!」
「学園祭ねぇ。春に作った部誌配って皆の普段作ってる漫画とか小説とか展示すりゃあラクじゃん」
「分かってないわねぇ!創作研究部よ?何でも作ってやりたい放題できる部活なんだから校則に縛られなくなる学園祭こそいつも以上にはじけたいじゃない!」
「マジかよ。面倒くせぇ」
「合宿、どこでする?綾斗。海?山?」
「山よ!」
山なんだ・・・。
「やっぱり、山籠りが一番良さそうじゃない?シナリオ考えるのには」
「桜木の水着フラグ折れたぜ・・・」
「あら、ユイユイ?川で遊べるわよ?」
「楽しみだぜ、合宿」
「ちなみにあたしはビキニにしようか海パンにしようか悩んでるんだけどぉ」
「桜木、山にはカピバラいるか?」
「や、山にはいないんじゃないかな?」
「熊なら出るんじゃね」
「熊。大丈夫、綾斗が倒してくれる」
「聞けよ、お前ら!てめぇらに柔道の技かけんぞ!」
綾ちゃん、また男子強く出てる!!
でも
「合宿かぁ。何処で寝るの?テント?バンガロー?」
「桜木、ガンバローってなんだ?」
「あはは。バンガローね、高宮くん。小さな小屋だよ!山にある泊まれるとこ」
「テントで良いだろ。皆で雑魚寝しようぜ」
「テント二つ用意しないとね」
「綾斗、何故テント二つもいる?」
「バカ陸斗。みっちゃんの分よ」
「何故?桜木、前は俺と結斗と一緒に寝た。一緒はだめなのか?」
「みっちゃんに何するかわからないでしょ。あんた達は」
「綾斗もだろーが」
「でも、桜木だけ一人になる。それは寂しい」
あ、そっか。
私だけだからね、女子。
「私は大丈夫だよ?高宮くん」
「だめ。桜木はもう一人にさせない」
高宮くん・・・
やっぱり、高宮くんのこういうとこが好きだ。
私の事考えてくれてたんだな。
「じゃあ、優里香ちゃん誘ってみようかな」
「それが良いわね!」
「ついでに桜小路くんも・・・」
「そうね!後でみゃーちゃん達に電話してみるわ、あたしが」
合宿かぁ。
高宮くんと一つ屋根の下だ。
可愛い水着、買わないと!
「てか、いつまで手錠かけてんだよ?綾斗!」
「どうしよっかなぁ!二人がチューでもしたら外すかも。陸ユイ、陸ユイ!」
「何で俺が受け!?てか、絶対やんねぇからな!」
姫島くんとはどう関わったら良いか分からないままだなぁ。
優里香ちゃんは普通が一番って言ってたけど・・・
綾ちゃんに相談すべきかな?
「腹減ったー!」
「俺、コンビニ行く。お弁当、今日無い」
「俺も行くわ、陸斗」
昼時になると、手錠を外して貰えた高宮くんと姫島くんはお昼を買いにコンビニへ。
綾ちゃんと私だけ部室に。
今が綾ちゃんに話すチャンスだよね?
だけど
私が話を切り出す前に綾ちゃんから話を切り出してきた。
「何かあった?」
「え?」
「みっちゃん、悩みがあるんでしょ?あたしに話して?」
「あのね!私・・・姫島くんに告白された」
「やっぱり・・・」
「綾ちゃん分かってたの?」
「ええ。ユイユイは分かりやすいから。振っちゃったんだ?」
「う、うん。でも、姫島くんは頑張るって」
「そう。合宿、大丈夫?二泊する予定だけれど」
「それは大丈夫!意識はしちゃうけど。創作研究部の合宿、楽しみにしてるよ!」
「なら良いけど。何かあったらすぐに部長のあたしに言う事」
「ありがとう!」
「でも、まさかユイユイがねぇ・・・」
「え?」
「みっちゃんはこれからどうするの?」
「私?」
「そう。陸斗の事」
「こ、告白なんて無理だよ!」
「そう。僕にもまだ時間はあるみたいだね」
「綾ちゃん?」
「きーめた!合宿はビキニじゃなくて海パンにする!」
「えっ?良いの?ビキニじゃなくて」
「みっちゃんだって見たいでしょう?生の男の身体。あんなに男の身体デッサンしてたんだもん」
「ち、違うよ!あ、あれは漫画に出す為に練習してただけで!私は変態じゃ・・・」
「ふふっ。どうだか」
「ほ、本当だよ!?」
「ねぇ、みっちゃん」
「ん?」
「僕だって男なんだからね。ちゃんと意識して欲しいな」
「あ、綾ちゃん!?」
「今だってさっきの手錠使ってみっちゃんに悪戯したいって思ってる」
綾ちゃんは私を見つめ、言う。
「い、悪戯?」
「そう。男は皆オオカミなんだから」
「綾ちゃんもそうなの・・・?」
「ふふっ」
「お、お弁当食べよう!綾ちゃん!」
「焦っちゃって可愛いわね」
創作研究部に入ってからドキドキが止まらない気がする。
「ただいまー」
「あ、おかえり!」
「アイス買ってきた。綾斗には桃味の」
「わぁ!ありがとう、陸斗。気がきくわね」
高宮くんはアイスも買ったようだ。
「桜木は苺」
「あ、ありがとう!私が苺好きなの覚えてたんだ?」
「桜木の好きなものだから」
え・・・
ま、また高宮くんは無意識ですごい発言を!!
「今日は何するんだ?綾斗」
「ドラマCD第二弾の会議よ」
「今度はチャラい役とかやってみたい。楽しそう」
「陸斗、やる気満々ね」
「ん。来月、オーディション受ける事にしたから。色んな演技やっておきたい」
「あら!頑張るわね、陸斗!」
高宮くん、オーディション受けるんだ。
きっと受かるんだろうな。
私も来月には決まる。
デビューできるかどうか。
私ももっと漫画上手には描けるよう頑張らなきゃ。
お昼御飯を食べると、私達はドラマCDについての会議を行った。
「じゃあ、あたしはバイトだから!」
「俺は琴莉とこれからランド行く約束してっから。じゃあな」
「う、うん!!」
夕方になると、解散。
だけど
高宮くんと私は同じ方向で帰る。
高宮くんと二人とか久々じゃない!?
「オーディション、頑張ってね。高宮くん」
「ああ。声優デビューして父さん認めさせる」
「高宮くんなら大丈夫だよ」
「だと良いが」
高宮くん、大人気だったもん。
コミケで。
「合宿、頑張ろうね!次は20枚以上売らなきゃ!ドラマCD」
「うん。バーベキューも楽しみだ」
「そうだね!」
「桜木は夏休み、他に予定はないのか?」
「基本的には漫画描くくらいかな。後は勉強したり?」
「桜木は部活無い時も頑張るな」
「成績落ちたらお母さんが怖いからね。勉強もしっかりやらなきゃ」
「ちゃんと寝てるか?」
「うん!3時間くらい」
「少ないよ。もっと休め」
「大丈夫!漫画家になったら徹夜なんて日常茶飯事になるわけだし」
「俺が心配。桜木は甘えないから」
「え?」
「甘えて良いんだ、桜木」
「高宮くん・・・」
「桜木は女の子なんだから体力だって俺ほど無い。ちゃんと休め」
「あ、ありがとう」
やっぱり高宮くんは優しい。
でも、高宮くんに甘えられるかな?
私。
「今日は家寄ってくよな?」
「うん!まーくんと今日はずーっと一緒だね」
「うん。はぁ、みーちゃんは本当可愛いなぁ」
街中を歩いていると、手を繋いだラブラブなカップルとすれ違った。
良いなぁ。
カップル見ると、幸せな気持ちになる。
私も高宮くんとイチャイチャしてみたい。
『蜜葉は本当に可愛いな。今日はずーっと一緒にいよう?』
『もう!陸斗ってばぁ!本当甘えん坊さんなんだからぁ!でも、そんな可愛いとこが大好きだよ』
『こいつー!』
なんか違う!!
明らかに高宮くんと私のキャラ違うし!
「桜木、どうした?」
「な、何でも無いよっ」
「ん?舞香からLINEだ」
あ・・・
舞香さんから?
「舞香さんとやりとりしてるんだ?」
「ああ。毎日LINEしてるな。あいつもアニメ最近よく見るから。ライアスの話もする」
「そ、そっか」
舞香さんは高宮くんを好きなんだよね。
私より可愛いし、明るいし。
強敵すぎる!
でも、もし・・・高宮くんとこのままだったら私・・・
部活が一緒でよく話すけど、全く高宮くんは私を意識してなさそう。
気持ちに気づいていなそうだ。
このままだと舞香さんの方が有利かもしれない。
そんなの・・・
「今度、舞香がまたうちに来るんだ。桜木も来るか?」
え・・・
「わ、私は大丈夫!」
「そうか。スカイツリー行く約束したんだ。見たい言うからさ」
二人で行くのかな・・・?
やだ、やだよ!!
私、やっぱり・・・
高宮くんの彼女になりたい。
ずーっとこのままはだめだよね?
とられちゃうかもしれない。
私、私は・・・
やっぱり逃げたくない。
「桜木、どうした?暗い顔だ。体調悪いか?」
高宮くんは私のおでこに自分のおでこをくっつけ、聞いた。
っ・・・
「熱は無いな」
私は・・・
「だ、大丈夫だよ!高宮くん」
「そうか。なら、良かった。何かあったら俺に頼れ、桜木」
私、高宮くんに告白する・・・。
合宿で。
伝える・・・。
高宮くんに意識して欲しいの。
一ミリでも良いから。
やっぱり逃げるのはだめだ。
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