チーム死神

AZUNA☆

暗殺者育成機関(指導者を何時とも尊敬すべし!)


「ハァァァァッー!!!」

 ナイフを両手で構え、一気に突き刺す。重要なのは、敵に銃を構えさせないこと。その隙に動脈を切る。後は出血多量で死ぬのを待つだけだ。楽勝楽勝!


 …のはずだった。


「ニイナぁぁぁぁぁ!!!!なんでお前は足を刺してるんだぁっ!そんなんじゃ銃で頭一発やられてくたばるぞぉぉぉ!!!!」

 今日もニイナの愛するインストラクターの罵声がジムに響き渡る。

「しゅいません…。」

 耳があれば確実に垂れ下がっている勢いでニイナは謝った。あーあ、またやってるなぁ。私は階段を上りながらチラリと見た。なんたってあんなにうるさいんだ!指定された定位置につくと、愛用しているライフルを構える。

「標的確認。」

 耳についている無線で自分のインストラクターに連絡を取る。

「了解。10秒後に撃て。」

 インストラクターの手短な指示を聞いて、標的をロックする。

 -風力0.3m、障害物なし、目標800m先に確認。よし。

 トリガーに指をかけて、深呼吸。

「5、4、3、2、1。発射!」

 合図と共に、トリガーをひく。すぐに無線から声が聞こえてきた。

「よくやったレビィ。頭をちゃんと打ち抜いている。ミッションクリアだ。」

 よし!これでお昼抜きにはならないはず。すぐにその場を離れようとすると。

「ところで愛する妹を打ち抜いた感覚ってどうなのよ??」

 無線から嫌味ったらしい声が聞こえてくる。別に、ただの人形じゃんか。まったく、なぜ私のインストラクターはこの暗殺機関一の腕前を持ちながら、精神がこうも子供なんだ!いや、だからこそ子供なのかもしれないが。だがしかし、無線越しに浮かべている表情を思い浮かべて、イラッとくる。


 ブチッ。


 何も考えずに無線を切った。そして思った。私はなんてことをしてしまったのだろう、と。

 ~☆~

「レビィちゃん?どーゆーことかしら?インストラクターとの連絡手段をミッション中に切るとは、正気でやったことなのかなぁ?ねぇ?」

 浅黒い肌に釣り目。肩の上で揺れるバイオレットの髪は何度見ても血を彷彿ほうふつさせる。てゆーか、私が愛するお昼タイムを、こんな説教の時間に使われるとは。しかもお昼抜きなんて!午後の体が絶対に持ちません!目の前で鉄の棒を持ちながら立たれると、本気でヤバいんですけど。

「ミッションは達成してたじゃん!」

「だから?」

「てゆーか、ターゲットの人形を私の妹にするとか、タチ悪すぎ!」

「ああ?なんか言ったか?」

 ギロリとにらまれて、反論する気が一気にゼロに。だがそこに我が愛する救世主が現れた。

「まあまあリンさん。そこまでガミガミ言わないでやってください。姉が後先考えずに行動するのは今に始まったことじゃないでしょう?」

 食事を手に持って、妹のニイナが現れた。日の光でキラキラと光る金髪は緩やかなウェーブで腰に垂れる。訓練でも焼けない透き通る白い肌。澄んだ青の瞳で見られれば、どんなやつでもいちころだ。となりにはニイナのインストラクター、アサシン・ハルも食事を持って立っていた。こっちは長い黒髪を高いポニーテールで結んでいる。紺のダサいジャージは背が高い彼女には意外に似合う。なんだかんだ言って仲いいんだよね、この2人。

「ニイナ…。」

 感動する私をよそに、私のインストラクター、アサシン・リンはブチ切れた。

「アサシン・リンだぁっ!何回言えばいいんだ!貴様、それでも暗殺者か?」

 こいつ、そこに食いつくのか。食いつくところ、間違ってないか。本気でそう思ってしまった。

「掟その一!」

「指導者を何時とも尊敬すべし!」

 反射的に、私とニイナは声に出す。

「その通りだ。しかし貴様らを見ろ。何が尊敬だ。侮辱もいいところだ。全く姉妹揃って。」

 あーはいはい。落ち着きないなぁ。なので、ブチブチうるさいやつは放っておいて、その場を去ろうとすると…。

「レビィ?いつ行っていいと言った?お前の昼飯は抜きだ!その根性、徹底的に直してやる!ジムに来い!」

 やっぱりそうですよね。わかってましたよ。わかってましたけどぉ!

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