第4章 「長い家路」

8月19日 いよいよ家路へ

 早朝、フェリー「なみのうえ」は鹿児島港に到着、目的地は兵庫県、甲子園の自宅。そういや甲子園は高校野球で大騒ぎだ。昨日フェリーで久しぶりにテレビで高校野球を見て妙に懐かしい感じがした。テレビのない生活をしているので、もうすでに準々決勝くらいであさって決勝ということらしい。出発した時はまだ地区予選も終わってなかったのに。アトランタのオリンピックも終わったと聞いた。そういや初日、豊橋の友達の家で見てたっけ……、もう終わってたのか。旅はそれだけ長いつまり、日本ってそれだけ大きな国なんだなあ。


 今日の予定は、九州地方を瀬戸内海沿いのルートを進む。行きの時は九州の西側を通ったので、これも想定通りだ。


 国道10号線に乗って九州の東側を北上、走る先に見える案内標識は「宮崎県都城市」だ。ここに足を踏み入れたと同時に僕は一つの目標を達成した。これで自分の半生で今まで行った事がない都道府県が無くなったのだ。全都道府県制覇である。それはそれで嬉しいが、今回立てた目標はあくまで


   47全都道府県上陸


なので、まだそれは達成していない。とはいえ残りあとわずか。事故しないように気を付けて家に帰りたい――。 


   * * *

 

 宮崎市に到達し、あまり先を急がず相棒を休ませこの界隈で不足していたものを買い足す等の設備投資に時間を充てる。

 それからコンビニ前で休憩しながらこれからのことを考えた。


 家に帰れば現実の生活に戻ることになる。一度清算したアルバイト、辞めたものはいいとして、お休みしているものは再び始めなければならない。

 それから旅の二日目に見事に切られた交通切符、累積点数では恐らく3点になるので、初心者講習の対象になる。一年で通算15000キロ以上は運転して走ってきたけれど、身分の上では初心運転者。もしこれをすっぽかしたら再試験だ。それも一発勝負の受かる保証のない――。

 

 というわけで、旅は続くが今後のことを考えてとりあえず家に電話をした。電話に出たオカンのハナシでは初心者講習の通知はまだ来ていないそうだ。そして、家に帰る日程だ。帰ってすぐにバイトに復帰してもいいけど、それも大変だろうし、予定通りに戻ってこれないかもしれない。なので、今日は19日、バイトは26から始めるとして帰宅の日を


   8月23日


と決定した。トラブルで一日二日遅れても修正できるし、費用とこれからの距離を考えるとこの辺が妥当だろう。

 これまでは大雑把で宛のないぶらり旅だったが、この日初めて終わりの日を決めた。23日に出発して23日に帰ってくる。ちょうどいいじゃん。日本の広さはバイクで1ヶ月ぶんの距離だということだ――。


 すっかり陽が傾きかけた国道を北上。盆を過ぎて、出発した時に比べたら陽は確実に早く沈むようになった。西陽の影も心持ち長くなっている。結局今日は宮崎県北端に位置する延岡市までたどり着き、今日はここで野宿だ――。


   * * *


本日到達した都道府県。

   (鹿児島)、宮崎

               (39/47)

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