私にくれますか?

風上イヌ

第1話

あそこの献血センターは駄目だ。タオルで注射器を隠しやがる。いつもの方は良いんだけどちょっと遠いからなー

「あの、そこのあなた」

頻繁に行けないし、3日はあけなきゃいけないらしいからその間の繋ぎがな…

「ちょっと、」

血を抜いてるのに変わりはないけどどうせなら見たいしぃ…隠すのとか致命的だよな!ポカリとか出されてもポカリよりタオルのけろや!ってなるし…でもしばらくはお世話になるしか…

「それわざとですか?!」

「……自分、神様とかあんまくわしくないんで…」

「なんです急に」

「いやぁ、こういう系かと」

「違いますよ」

「お金ももってませんよ」

「そういう系でもないです」

普通、変なのに話しかけられたら神様を祀る系かカツアゲかだよね。あ、カツアゲはイカツイ二ィちゃんか?

このお兄さん言葉遣い綺麗だし、顔も綺麗だし。

「余計怪しいです」

「全然ですよ。あ、わたくしこういう者です。」

名刺らしきものを渡されて目を通す。いやこれは……

「怪しさ増しましたね」

もうこのひとわかんねえわ。話し進まねえわ。だめだ。

「待ってください。僕もう貴方しかいないんです。」

「いや、なんですかほんと?!職業“吸血鬼”のひととか知りませんし?!」

渡された名刺はシンプルなものだった。職業、名前、それだけ。だからこそ衝撃がすごい。ゴテゴテに飾られても困るけど。

「このご時世、気前よく吸わせてくれる人もいなくて…」

気前よく吸わせる…顔がつりそう。

「ほかあたってくださいよ…なんでおれなんすか」

「狙い目なんです。あれ、」

あれ、と指さす先にはあまり気に召さなかった献血センター。

「あれが、なに、」

「あなた何個か先の駅でも献血センター行ってるでしょう」

あ、ああ…

「センターに来た人をマークするんです。マークはずしてた人物とまさか、こっちで会えると思ってませんでした」

マーク、え、なに尾行的な…うん。てか

「おれマーク外されてたんですか」

「はい」

「えなんでなんで、てかなに基準にしてんの?」

「まあ、あなたの場合」

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