Extend:: Seeking an Angel's ladder

 ……はて? これまた面妖な。

 キミはどうしてこんな所に居るんだい?

 

 なんだ、分からないのか。

 それならキミも、こちら側って事だな。

 残念ながら、帰り道は誰にも分からない。自分もここに落とされて十数年、元いた場所を探すことは諦めたよ。

 大丈夫、この世界には思ったよりも優しく出来ている。絶望に竦むその身体も、じきに慣れてくるだろうさ。

 しかしながら、これは本当に不幸なことに――世界はキミを待ってはくれない。

 それを苦行と捉えるか試練と思い込むかは、キミの自由だ。

 一つは、今からそう遠くない、暑い時期だ。

――閉ざされた庭園の中に、悪童が微笑む姿が見える。

 ……願いとは、何か? それすら解せぬとはな。いや、当然か。知らなければ分からないのだ。そこに横道など無いのだから。

 だがそれは差別でも異常でもない。全ては些末だ、故に求めよ。

 話題を戻そう。

 もう一つは、それから更に遠い未来。

 ――本当の恐怖は、キミが見慣れた景色の中に存在する。

 現実が歪むのでは無い、歪んだ現実が表出するだけの話だ。

 そして最後は、更に遠く離れた、誰もが望んで、そして至らなかった場所で、それは起こる。

 現実からの意趣返し。

 非現実と『非』非現実の激突は免れない。

 もっともキミはその時、こんな戯れ言など既に忘れ去っているだろうが……。


 実に時期の明いた、起こる場所や時間もバラバラの、点と点でしかない事件のいずれも、君にとっては些事に過ぎない。これらは全て観測者へ至るための前座だ。

 感情を握れ。

 すべてが君の血肉になるとは限らない、殆どは毒となる。さりとて、この旅路が無駄という事にはなり得ない。

 勿体ぶった物言いに苛ついているか? 残念ながらこの先は、私の目を以てしても視る事が出来ない領域なのだ。


 少々、怖がらせてしまったかな?

 心配は無用だよ。君の行く手には数多の障害が待ち構えているが、それを挫き、扶く人も同じぐらい存在する。

 だから今は眠るといい。む、私か? すまぬな、私はこれから行くべき場所があるのでね、今すぐ君の力にはなれそうにないのだ。

 その代わり、約束しよう。

 本当に君が必要としたとき、私は君の力になろう。

 ……うむ、気持ち悪いほどの曇天だな! このままでは一雨来るかもしれないので、そろそろお暇させて頂くとしよう!

 しがない魔女の老婆心に付き合ってくれて、本当に感謝するよ。

 そして――君が歩む茨の道程に、幸多からんことを。

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