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第007話:怪我したネコウサ娘を……
「ごちそうさま!」
異世界にも「ごちそうさま」があるんだと思いながら、オレはとりあえずカップラーメンの入れ物を受けとった。
そりゃもう見事に、スープも一滴残らず飲み干している。
まあ、とりあえず車中泊の基本なので、ゴミは持って帰ろうと、ビニール袋にしまいこんだ。
「ところでさ、なんで日本語わかるの?」
満腹で幸せそうな顔のキャラに、オレは非常に基本的な事を質問してみた。
どうみても、彼女は日本人には見えない。
肩まで届く琥珀色の髪、薄いながら褐色の肌、少し赤系の瞳、さらに牙のような鋭い歯まで生やし、ネコ耳とウサギ尻尾まである日本人は、少なくてもいないだろう。
見た目そっくりならば、秋葉原あたりに行けばいそうだけど。
「にゃほんご? なにそれ? わからないけど?」
「つーか、オレと話してるじゃん!」
「ん? ん? ……話してる、うん」
「日本語で話してるじゃん!」
「ん? 話しているのは、いわゆるオバ・ザ・クセン語」
「おばさんくさい語? どこの国の言葉?」
「オバ・ザ・クセン語。同盟系はみんな、これ」
「同盟系?」
「うん。【黒の血脈】同盟国」
「……黒の血脈って……つーか、ここどこよ?」
「ここ? 第十位盟主国【ヘミュン】の端の方」
「どこやねん、それ!……って、オレ、その何とか語を話してるの?」
「オバ・ザ・クセン語、話してるぞ?」
「……まじで?」
「なに言ってるんだ、オマエ?」
キャラに奇異な目で見られるが、むしろオレがそんな目でオマエを見たい。
だが、たぶん「奇異」なのは、オレの方なのだろう。
なにしろ、まちがいなく、オレの方が来訪者なのだから。
「なあ、ところでさ――」
「――ぬぬぬっ!?」
突然、彼女は自分が座っていた、
そして、低く唸りながら車内の内装をキョロキョロと観察し始め、ボディのあちこちをノックするように叩きだす。
――コンコン
――コンコン
――コンコン
一通り叩いた後、彼女はワナワナと震える口を動かし始める。
「にゃ、にゃぴょん!? こ、この小さな建物、不思議な材料、使ってる!?」
「今さらかよ!」
「腹減ってて、気がつかなかった!」
「脳と腹が直結しすぎだろうが! それに建物じゃねーよ。乗り物だよ。車だよ、く・る・ま」
「にゃぴょん!? これが、車!? かっこ悪い!」
「なんだと、こんちくしょう!」
「そう言えば……これ……」
「電気ケトル?」
「火もないのに、お湯を沸かした!」
「つーか、これも今さらかよ!」
「しかも、あっという間に、お湯にした!」
「その『あっという間』も、腹ぺこを我慢できなかっただろ、お前は……」
「こんな……こんな魔法の道具、持っているなんて……」
まるで恐れるようにネコ耳を倒し、上半身を引いて片手で口を押さえてみせる。
「オ、オマエ……何者!?」
「散々、オレから飯を奪っといて、今さら
こいつのマイペースさの方が、オレには恐ろしい。
だが、まあ、確かにまだ自己紹介もしていなかった。
「オレが何者って言われても……。説明しても理解してもらえるかなぁ。……よーするに、こことは違う別の遠い世界からやってきたというか……」
「ああ。異世界から来たのか」
「理解早っ! つーか、いきなり冷静になっているし! 異世界って知ってるのかよ!」
「うん。この前、異世界から来た人と話した」
「えーっ!? オレ以外にもいるの!?」
「うん。まあ、こんな変な車、乗っていなかったけど」
「変じゃねぇよ! つーかそれならその人に会わせてくれよ! 帰り方を教えもらうから!」
「その人も帰れないって言っていた。異世界に行くのは、もの凄く難しいと言っていた。すごい力がいるって」
「……え? そうなの? オレ、寝て起きたら、異世界に来ていたんだけど……」
「オマエ、器用だな……」
「簡単な単語になったな、オレのすごい力……」
「それに、キャラは仕事があるから戻れない」
「仕事?」
「そう。仕事。キャラは配達人」
そう言いながら、彼女はお腹につけていた小さなポシェットをポンと叩いた。
横二〇センチぐらい、縦は一〇センチぐらいしかない。
しかし、ベージュの革製のようで、なかなか丈夫そうに見えた。
「この中の書状を期日までに届ける。それが仕事」
「……それがなんでまた、腹ぺこで倒れてたんだ?」
「時間を短縮しようと、近道をした。でも、そこは魔物が出る場所だった」
「魔物……スライムとかそういのう?」
「スライム? それは知らないけど、襲ってきたのはリビングデッド」
「リビングデッド……って、ゾンビじゃん! そっちのが怖いじゃんか!」
「大丈夫。たぶん、こっちには来ない。たくさんいたけど」
「たくさんいたのか……」
「キャラは足が速いので、なんとか逃げられた。でも、とっさに襲われたので食べ物の入った鞄、落としてしまった」
「なるほど……」
「さて。世話になった。もう行く」
そう言うと、キャラは
とたん、「いたっ!」と左足を押さえて、体を前屈みにする。
顔が苦悶で歪んでしまっている。
「ど、どうした? 足か? ブーツ、脱いでみろ」
オレは問答無用で、彼女の左のブーツを脱がす。
その間にも痛がっていたが、それもそのはずだった。
「これ、足首、くじいたんじゃねーのか!?」
「へ、平気。これぐらい……」
「平気なわけねーだろうが! つーか、とにかくちょっと、そこに座ってろ!」
オレはキャラを
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