第22話 コア、光魔法を使う
マスターが黒い弓矢に貫かれ、剣で斬られ倒れてしまいました。
それを私は頭上に浮かんで見ているだけ。
何がダンジョンを消滅させるですか。何が女神ルアリア様の為にですか。
現実は何もせずリンク契約したマスターの助けも出来ず、ただ見ているだけ。
マスター……九条さんは最初は嫌いでした。
会うなり売ろうとしますし言動はぶっきらぼうですし。
でも話してみると分かります。お金に執着するのは過去に何かトラウマがあった為、そして言動がぶっきらぼうなのは私に気を使わせないようにしているのだということが最近分かりました。
言葉にトゲが残ってはいますが私のことを気にかけてくれて、最近はお金以外でも私の為にダンジョンに潜ってくれていることも知っています。だって影戦士は強い割りにお金にならないから倒す意味はないはずです。お金を稼ぐだけなら1階層で影人間だけを相手にすればいいんですから。
でもマスターはダンジョン攻略をしようと言ってくれました。戦闘が楽しくなってきたと言っていましたのでそれも理由だと思いますがそれだけが理由で私に協力してくれるほどお人好しではないのは知っています。
何より私が悩んでいるのを知っていて魔法の練習にも付き合ってくれました。
その時マスターが言ってくれた一言を私はよく覚えています。
「お前が戦闘ができなくてそれを納得できないと言うなら魔法の一つや二つを覚えればいい。スキルを覚えるのが大変ならそれまでは斥候職として頑張ってくれればいい。俺はそれで何の不満もないし不安もない。それでいいか?」
この一言で私は時間がかかっても魔法を覚えようと頑張り続けることができました。相変わらず足手まといになることには悩んでしまいましたがこれは私の性分なのでしょう。
そんなマスターが矢で貫かれ、剣で斬られて倒れています。
『マスター!』
私はその姿を見た瞬間我を忘れマスターの元へ飛んでいきますが私に何ができるでしょう。せめて魔法スキルさえ使えればこんなことにならなかったかもしれない。私が足手まといでなければ…っ!
そんな時です。突如頭の中に声、いや文字が見えました。私は無我夢中でその文字を諳んじます。
『光よ!闇を打ち払え!
私の目の前で虚空から光が収束し一点に向けて照射されました。これは…魔法っ!
【条件を満たしました……スキル【光魔法】を取得しました。】
同時に私の中にスキルの情報が駆け巡りるのを感じながら私は地表へ降り立ちます。
今はそれよりもやるべきことがあります。
『マ、マスターは私が殺させません!』
私はモンスターの集団の前に踊り出しました。
「ゴホッ………コア?一体どうなって…」
『あああ、マスターしっかりしてください!』
マスターが弱弱しく話しかけます。よく見ると全身ボロボロです。
無理もありません。影人間約50体に影戦士4体を一人で相手にしていたんですから。
今まで無事であったのが奇跡と言える程でしょう。
ですから、ここからは私がいます。私が守ってみせます!
「ギィッ!」
弓使いが再度矢を装填してマスターに狙いをつけますがそうはさせません!私は新たに覚えた【光魔法】を使います。
『光よ。魔を退けよ。
私の言葉に従い発動した【光魔法】はマスターを中心に半透明の球体を出現させます。この
「コア…。お前魔法が使えるようになったんだな。」
『ええ、ええ…っ。これでマスターのお役に立つことができます。こんな風に。光よ。かの者に安らかな癒しを
「これは…すごいな。痛みがどんどん消えていく。」
【光魔法】は攻撃よりも防御、回復に優れた特殊元素魔法です。特に傷の治療には一定の効果があります。マスターに柔らかい光が差し込み傷を癒します。ボロボロの体はみるみるうちに治癒されますが突き刺さった矢までは抜くことができません。マスターに抜いてもらう必要があるのですがモンスターはそこまでは待ってくれないようでした。
「「「ギィィィィィィッ!」」」
回りを取り囲んでいた影人間達が近づいてきます。そして大剣使いもその大きな大剣を構えてこちらにすり足で近づいています。更にはその後ろには弓使いも控えています。まだマスターの治療は終わっていません。ここは私がなんとかしなければ!
『マスター。ここで暫く休んでください。後は私が戦いますから!』
「いや、お前だけに無理はさせられないさ。俺も戦う。何随分と治してもらったからな。後はこのうっとうしい弓矢も……ぐぅぅぅっ!…ほらな。ご覧の通りうまく抜けた。」
なんということでしょう。マスターは力づくで腕に刺さった弓矢を抜いてしまいました。並みの痛みではないはずです。現にマスターの顔からは脂汗が流れています。ああ、なんて無茶を…。
私が心配しているのを感じたのでしょう。マスターは前傾姿勢になりながら私に指示を出します。
「…コア。俺は大丈夫だ。さっさとこいつら片付けるぞ。俺はクソ忌々しい大剣使いを片付ける。お前は弓使いと回りの雑魚を頼む。」
『は、はい!分かりました!お任せください!』
とうとうマスターに認められたみたいで私はこんな時だというのに嬉しくて仕方がなくなります。マスターは
『光よ!闇を打ち払え!
一条の光を顕現させ回りの影人間を消滅させていきます。この
「がぁぁぁぁああっ!」
「ギィィィィイイイッ!」
メイスを突き出せば大剣で防がれ、大剣を振り下されればメイスでいなし戦闘は続いています。
そしてその戦闘を邪魔するように弓使いが弓矢をつがえますがさせません!
『させませんよ!光よ!闇を打ち払え!
「ギィッ!?」
弓使いが攻撃に移る前に私の
「ギィッ!」
弓使いが弓を放つ瞬間--今!
『光よ!魔を退けよ!
「ギィッ!?」
私は防御魔法
半透明のドームが浮かび上がります。そう、弓使いの回りで。
弓使いの弓矢は
この情報はスキル取得時に何故か頭に入った情報ですが、本当に便利です。
そして弓使いはと言うとうろたえています。
『あなたは厄介ですからね。確実に倒します。これなら避けられないでしょう?』
私は
これでは私も攻撃できませんが構わず詠唱します。
『光よ。闇を打ち払え!
光が虚空から現れ一直線に弓使いに向かいます。
このままでは
『これなら逃げ場はないでしょう?』
「ギ、ギィィィッ!!」
弓使いは移動する暇もなく光の本流に貫かれました。
『これでやっとマスターのお役に立つことができました。』
チラリと横を見ればマスターの闘いも決着がつきそうです。
…負けないでください。マスター。コアは信じていますからね。
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