第8話 九条、ダンジョン攻略の準備をする

古今戦術武器商店オーナーの眞志喜さんとの商談を終えた俺は再び電車に乗り帰路についた。

眞志喜さんは物が物だから車で運んでくれるという申し出があったがコアを見せたくないという思いもあり段ボールに詰めて持ち帰ることした。メイスが思ったより重量があったのでなかなか大変な作業となってしまったが、しょうがないことと割り切った。







「コアただいま。」


『あっ!マスターお帰りなさい。』


コアは俺のことをマスターと呼ぶようになった。

ダンジョンコアとしての矜持らしくていくら言っても止めないのでもう諦めた。

それにしてもただいまなんて言うのは随分と久しぶりだな。

まっ元々、一人暮らしが長かったから今更どうということもないが。


『どうですか?武器は手に入りましたか?』


「ああ、お蔭様でな。上手く武器商人と契約ができてこれだけ仕入れることができたな。」


そう言って手に入れた武器を段ボールから取り出してみる。

まずはメインウエポンとして金属製のメイス。

サブウエポンは山刀。

防具は防刃シリーズ

その他に使えそうなものを見繕ってある。

これだけあればそうそう遅れをとることもなさそうだ。

コアは並べられたアイテムを見て水晶玉をピカピカと光らせている。


『私の世界の武器とあまり変わりはないんですね。防具?は普通の服に見えますが大丈夫ですか?』


「この世界の武器はもっとスゴイもんが山ほどあるが法律上の問題で手に入らないからな。防具は見た目以上に頑丈だぞ。これでも刃物の攻撃を防ぐことができるんだからな。」


『それはスゴイですね。見たところ魔力も宿っていないのにどうやって防ぐんでしょうか?』


「魔力はなくとも科学の力だな。見た目以上に頑丈だから鎧を着こむこともなくて便利だぞ。」


コアの世界、ルーナリアは典型的な剣と魔法のファンタジー世界であり、魔導具も存在しているとのことだ。ダンジョンには魔導具もドロップするとのことなのでここら辺は楽しみだったりする。

コアは自分の世界にない物を見ては一喜一憂するので結構見てて飽きなかったりする。言うと調子に乗りそうなので黙っておく。


『じゃあ早速ダンジョン攻略をしましょうか!』


おいおいコアよ、今何時だと思ってんだ。


「今日はダンジョン攻略はしない。」


『ええー!なんでですか?』


「今は19時だぞ。夏場で日が伸びているとはいえすっかり夜だ。だから今から飯にすんだよ。」


『あっ、もうそんな時間なんですね。すいません…。早くダンジョンを消滅させなければと勢い込んでしまいました。』


コアは異世界の女神確かルアリアだっけか?に作られた存在でダンジョン消滅を使命にしているんだが、それには俺みたいな現地人の協力が必要不可欠みたいで一人では何もできないとのことだ。まあ、見た目ただの水晶玉だからそれも仕方ないとは思うが。コアとの会話を続けながら食事の準備でもしようか。と、その前に


「コア、一つ聞きたいんだがいいか?」


「はい。なんでしょうマスター。」


「お前食事はどうすんだ?見た目水晶玉だけどそもそも食事は必要か?」


『私は周囲の魔素を吸収しますので大丈夫です。ご心配頂きありがとうございます。』


「まぁ一人分作るのも二人分作るのも大して変わらんからな。じゃあ悪いが俺の分だけ作るぞ。」


『はい。お気になさらずに。』


コアの了解も得たので手早く晩御飯を作ることにする。

今日はダンジョンが出来たり秋葉原まで行ったりと疲れも出ているので簡単な物にしよう。

冷蔵庫の中を見ると昨日の白米が残っていたので炒飯でも作るか。


まずは長ネギを小口切りで切った後、水をさらしておく。豚肉が欲しかったがなかったのでベーコンでいいか。ベーコンも同じように長ネギと同じように細かく切り分ける。

中華料理用に作っておいた鶏ガラスープをレンジで解凍しておく。移動販売をやってるおかげでこういった出汁は良く作るので余った物を家の調理に回しているわけだ。職権乱用と言うなかれ。


フライパンにスライスしたニンニクとサラダ油を適量垂らして熱しておく間に卵をといで白身と黄身を混ぜ合わせる。この時しっかり混ざらないと味が統一されないのでしっかりと混ぜておこう。十分に加熱したフライパンに長ネギとベーコンをそれぞれ投入してさっとに炒める。長ネギがしんなりしてきたら一旦取り出し、再度フライパンを熱する。ベーコンの油で肉のいい匂いをさせているフライパンに白米を投入し更に卵をご飯に満遍なくかける。そうすることにより卵の旨みが白米に沁み込み黄金色のお米となる。しばしフライパンを振りながら炒めて十分に火が入ったら先程の長ネギとベーコンを戻し、最後に鶏ガラスープを掛け合わせる!水分を飛ばすために再度フライパンを振ったら九条特製炒飯の出来上がりだ。


ま、出来合いのものだが十分食えるもんだと思うぞ。

付け合わせに鶏ガラスープにワカメを入れてワカメスープも作っておいた。


『マスター料理上手いんですね。』


「まぁこれでも料理関係の店主の端くれだからな。」


作ってるのがかき氷やらポップコーンやら簡単なものばかりだから自慢できるほどでもないけどな。

食卓に炒飯とワカメスープを並べて夕飯としようか。

寂しいメニューだが男の一人暮らしなんてこんなもんだろ。










「ごっそさんっと。」


食事を終えて一息ついたら最後にコアとの質疑応答をすることにした。

そもそも金になるとのことでダンジョン攻略することになったが無策で乗り込みたくないので今のうちに聞けることは全部聞いておこう。


「じゃあコア。明日からのダンジョン攻略についていくつか聞きたいことがある。」


『はいマスター!どんと来てください!なんでもお答えします!』


「まずはおさらいだ。ダンジョンとはなんだ?」


『ダンジョンとは異世界ルーナリアより漏れた魔素が溜まり具現化したものがダンジョンとなります。』


「次だ。なぜその異世界ルーナリアとやらから魔素が漏れ出した?」


『それは分かりません。自然発生的なものだとは思うんですが……。』


「ということは人為的な要因も考えられるわけだな。」


『ですがそれは考えにくいと思います。別世界に魔素を送り込むなんて女神ルアリア様にもできません。』


出たよ女神様。どうせならコアを派遣するんじゃなくてもっとやり口があると思うんだがそこんとこどうなんだろうな?


「その女神様についてだ。魔素が漏れるならなんで向こうの世界で止めようとしなかった?」


『魔素の流れを止めるには世界の魔素を止める必要があり、それは世界の死を意味します。その為実行はできないと判断し私をこの世界に派遣しました。』


まぁここまではコアに聞いていたことだから改まって聞くことはないがここからが重要だ。


「次にコア。ダンジョン攻略についてだがコアがサポートするということだがどういったことができるんだ?」


『はい。この世界には元々魔素がない為、今は魔力を使うことができません。ですが私とリンクすることにより魔素に親和性ができ魔素を自身の魔力として取り込むことができます。』


「なるほどな。今は魔力を使うことができないということだが普通の人間はいつになったら使えるようになるんだ?」


『それは個人差があるのでなんともいえないです。魔素の親和性によってさまざまみたいですのですぐに使える人もいればいつまで経っても使えない人も出てくると思います。ですが私のスキル、リンク契約があればすぐに使えるようになります。ただし無制限とはいかないです。私の力ではせいぜい一人二人が限界です。』


ダンジョン攻略は俺だけで進める予定ではあるからここは別にいいか。

次だ。


「よし魔素の親和性については分かった。次に魔力を使って何ができる?」


ここは結構重要なところだ。

魔力をどう使えるかで話は大分違ってくる。

魔法が使えるのかってことも含めてだ。

眞志喜さんや忍が聞いたら興奮してエライことになりそうな話だな。

コアはピカピカと水晶玉を光らせながら回答してくれた。

その内容はある意味定番ではあった。


『はい。魔力が使えるようになることによっての利点は3つです。一つはレベルつまり魂の位階が上がります。これにより取り込むことのできる魔力総量が増えます。次に魔力を使った身体強化が使えます。

最後に魂にスキルを刻むことができます。』


ゲーム的に考えるとレベル制とスキル制がごっちゃになった感じか。


「質問だ。スキルはどうやって覚えるんだ?」


『スキルは長年による修練と経験によって発動すると言われています。私の世界でもスキル発動する条件はほとんど明かされていません。…お力になれず申し訳ありません。』


「ああ、大丈夫だ。色々試していけば分かるだろうさ。」


これはコアの責任じゃないだろうしな。

それにしてもそうすると暫くはスキルなしで攻略することになるのか。思ったよりハードル高いな。

あっコアのことも聞くのを忘れてた。魔力の話のついでに聞いておこう。


「そういえばコア。お前のレベルはいくつなんだ?それとコアも成長はできるのか?」


そもそも生物なのか無機物なのかそれも怪しいところだ。

女神に作られたって言ってたから人工物、いや神工物となるのか?


『あ、はい。生まれたばかりなので私のレベルは1ですがスキルは【魔素吸収】と【浮遊】と【探査】を持っています。どれも戦闘には使える能力ではないのですが…レベルが上がればできることも増えてくると思います!これから頑張りますのでよろしくお願いしますマスター!』


「お、おう。よろしく。」


『はい!マスター!』


そのスキル構成だとどう見ても何もできないよな?ただ俺の後をくっついてくるだけじゃ…と思ったがコアはピカピカと光りながらやる気をみなぎらせているのを見て俺は何も言えなかった。

俺にも言いにくいことはあるんだよ。悪いか。


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