第4話 僕は魔女っ娘でもないし、女神でもない
『貴様、魔石無しでゴーレムを操れるだと?』
黒竜は驚愕の声を上げていた。
魔力を流し込み、人形を動かす力。
僕は魔女として、ある程度は四大元素の地水火風も使うことは出来るが、一番得意なことではない。
それよりも人形に自分の魔力を与えて、自由に操る力が一番強いことを良く知っていた。
とはいえ、準備はできているとは言いがたいところ。出たとこ勝負で成功するかは五分五分のところだった。
正直な所、こんな大博打をするようなことはあまりしたくはない。
「流石、私の魔女っ娘ライバル!」
うん、震え声っぽい。しかも気が抜けているホッとした感じがかわいいけど、ライバルとか、魔女っ娘もう好きにしてください。
「そうよ。私の女神様は最強なの!」
うん、役立たずエルフは黙っていてください。これ以上状況を引っ掻き回されたらカオスになるだけ。
『何て、ことだ。私は何て魔女っ娘女神を相手にしているんだ』
うん、僕は魔女っ娘でもないし女神じゃないです。というか、何でそんな反応をするんですか。黒竜でしょ。威厳あるんでしょ。
「おう、これはどうすりゃいいんですかい。ああ、ミズキ殿?」
「色々と戸惑うことはあるけれど、ゴーレムを操って何とかしますので」
ガザックさん、あんただけが最後の良心のような気がする。凄い怖い顔だけど。
うん、緊張感あるんですけど、このグダグダの状況を盛り上げてくれてもどうしようもない感じがするのは気のせいでしょうか。
とりあえず、黒竜を何とかするためにもゴーレムを使って何とかしないといけないのは間違いない。
倒せるかどうかは自信が本当に無いのだけれども、今何とか動けるのは自分だけ。
「あの女神様2号を使ってですかい」
「んん? 女神様2号?」
「あのゴーレム。女性の形になっていやすから、女神様といっても仕方ないとルディアさんが言っていたわけで」
「あんの、くそエルフ。騒いでいるだけかと思えば、変な名前をつけやがって」
「名前の付け方は安直ですがわかりやすいとは思いやすが。まあ、俺としてはブルーメゲッティンツヴァイ」
色々と困るし突っ込みどころとかある名前をありがとうございます。
見た目に比べて厨2病だったことについてとか、問い詰めたいのですがやめておきます。
『女神様2号! 私の邪魔をするか!』
採用されちゃったのか。最悪だわ。
「よしっ、いけっ! 女神2号っ。私の女神様のために戦うのだ!」
気付いたらゴーレムの上によじ登ってますかね。
キメ顔で言ってるけど、操っているの僕ですから。
腕組んで、偉そうにふんぞり返っていてもあなたのいう事はひとつも聞きませんから。
『なっ、ゴーレム風情が私に逆らうなど』
「もういいや。とりあえず、女神二号(仮)いけー」
「ま゛っ゛」
ガショんというというような音がしそうな歩みで女の顔をしたゴーレムが歩みを進め、黒竜と対峙する。
『たがが、魔女が操るガラクタ風情が私に勝てるはずが無いのだ』
黒竜がゴーレムの顔に尻尾を叩きつけようとする。
それを僕は必死にステッキに魔法を込めて、上体をそらせた。
グググという軋む音をさせながらも、巨体には意外なほど俊敏に動いて尻尾を避けた。
さらにお返しでヘッドバットで黒竜の顔にダメージを与える。
眉間から鼻にかけての衝撃は大分聞いたようで、黒竜はたじろいで、一歩、二歩と後ろに下がる。
そして、黒い翼を大きく広げた。
「まあ、僕は魔女というか、魔女っ娘でもないし、女神でもないけど。このゴーレムはガラクタとは呼んでほしくないね。一応、僕だって、魔術を使えるはしくれなんだし、自分が作ったものを酷い言い方で言われることについては、気分はよろしくない」
さらに女の姿をしたゴーレムが黒竜の腹に右の拳をぶち当てるッ。
黒竜は距離をとる。
『ぐあっ、何故だ! こんな魂の無いものに私は負けるのだ!」
「そりゃまあ、僕の魂はこもっているから」
『黙れ。キメ顔で言おうが、わたしは強い』
息を吸い、炎を吐き出す竜。
しかし、ゴーレムの素材は石。そう簡単に火にやられず。
ひるまずアッパー気味に左の拳を黒竜の顎に繰り出した。
一方的な舞うような一撃に黒竜が首を振って、また後ろに下がる。
『流石、女神といったところか。ここは撤退だっ』
「えっ、ちょっとここって怒るところとかじゃないの」
『そんなものは知るかッ!』
黒竜は背中の翼を羽ばたかせると、洞窟から飛び出して空へと逃げ出していった。
あっさりとした決着。
自分の拠点である場所をすぐに退くなんてありえないことだが、実際の結果はこういうことなわけで、僕は口をあんぐりとあけるしかなかった。
折角恥ずかしい台詞を言ったのに、すぐに逃げちゃうとかないわー。
「一度、頭をぶつけるだけで黒竜を退かせるなんて、流石女神様2号だ。そして、それを操るミズキ、いや、女神ミズキ殿万歳!」
ガザックの声に他の冒険者が歓声を上げる。
「うーん、あんまり何もしていないような」
「女神様の初陣としてはいい結果ですな」
「何もしていないエルフよりは確かに」
「ひどっ。あ、そうだ。さっきの大魔王っ娘ちゃんに感謝を、あれっいない」
まあ、アイツは村に帰れば治療でもしているだろう。
正体がばれるのは多分大魔王芽衣子にとっては非常に大切なことらしいので。
4クールのラストにわかって急展開を迎えるのが超お約束。または話の半分で味方フラグを立たせる為に必要なわけであり、今の状況では第一話でわかるとか、ギャグフラグにしかなっていないとか言いそうだ。
まあ、僕は芽衣子と会ったころから知っているわけで、わりとどうでもいい話でしかないのを失念している。
正体を知っているのがライバルだとか、ギャグフラグ満載だというのを気付いていないのだろうか。
「よし、野郎ども、戦利品の確認だ!」
「「「へい」」」
冒険者達が黒竜の宝の山に集まった。
一番手、ガザックが宝に手をかける。
「ヌッ!」
彼の悲鳴が洞穴の中に広がった。
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