Ep.24 哀しげな日記Ⅲ
「クローチェ様! どうしたんですか!」
クローチェは急に扉を出て机の上の手紙を読んだ。この際、ラブレターだとか言う話は関係ない。
「酷いですよ、置いていくなんて」
エルンストがぶつぶつ言っている。
それよりも手紙だ。先ほど読んだ続きを流し読みした。
やっぱり。
「この手紙、かなり古いものだ……」
「どうしてです? 状態は綺麗ですけど」
エルンストはクローチェの横から覗き見る。
「お前は初めて聞くな。さっきお前が落とした鍵は彼女が木箱と共に持って来たもので、木箱には封印魔法がかけられていた。解いた中身がこの手紙が挟まった手帳。鍵の鍵穴があの扉、扉の机の上の手紙は朽ちてボロボロ。そしてこの手紙」
エルンストが手紙を覗き込んだ。哀しき、叶わなかった彼女が愛する者に当てた思いの手紙。
差出人はこのお手紙を――読むこともなかった手紙。
「え……これはどういう」
最後の一行にはマウォルス暦が書いてあった。
マウォルス暦とはカポデリスやこの周辺の国で使われている暦の名。カポデリスは現在アレウス暦を使っているが、五百年前はマウォルス暦を使っていた。どっちの暦もカポデリス建国初年を基準にしており、暦の数え方は変わっていない。
呼び方が変わっているのだ。
「千年も前のマウォルス暦が書いてある手紙がどうしてこんなに綺麗なんですか!」
そういうことだ。この日記帳を書いた人物は少なくとも、千年も前に生きていた人物。だとするとこれは大きな発見だ。
「扉に鍵かけて、鍵は机の上に戻せ。お前ら仕事だ!」
歴史探索もエクソシストの大きな仕事。悪魔のことに関して記述があれば、研究は大きく飛躍するからだ。
「はい! わっかりました!」
エルンストはビシッとお辞儀をして部屋から出て行った。
仕事だ、そう呟いて机に向かう。
久しぶりの大仕事だ。
◆◇◆◇◆
エクソシストたちは、ドアの陰で、今までの会話を全て聞いているものに気付かなかった。
彼は気配なく彼らの部屋に近づいた。初め彼は中の様子を盗み聞きするつもりはなかった。ドアを開ける寸前、聞こえてしまった、だがそれでよかったと彼は確信する。
ある確信はあった。
だから内部に侵入できる機会をずっと狙っていたことは否定しない。地理的からしてココにあると確信してはいたものの敵の巣を荒らし全ての部屋を手当たり次第探すには時間が無かった。
相手に探られるわけにはいかない。絶対に。
長年探していたモノ。今まで見つけられなかったモノ。
彼は――言う。
「見つけた」
微かに聞こえた含み笑いも。
哀しげに目を瞑った、彼の後悔も。
千年の長い年月を彼は走馬灯のように思い出す。
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