第132話:激闘すぎる、本戦。②
ゼルが凜に囁く。
「さすがに手ごわいですね。ただ、まだ試していない方法があります。凜、ゴーレムの額に字が刻印されているでしょう? あれは「
「なるほど、試してみる価値はありそうだな。」
凜が跳躍する。そして、ゴーレムの繰り出す腕をかいくぐると額に書かれた三つの文字の一番右の字を突き刺した。ゼルが慌てる。
「凜⋯⋯『頭文字』と言ったはずですが⋯⋯。」
しかし、ゴーレムは地面に昏倒するとそのまま身体が崩れ去った。
「あれ、凜?」
意外そうなゼルに凜はややドヤ顔で言った。
「ゼル、ヘブライ語は
ここで制限時間が終了。
「さあ、ここから見せどころだ。」
サミジーナが本気モードに入る。
「レブ縛り」で予選を偽装して走っていた
「どうやら、心臓は『手術』ではなく『移植』だったようですね。」
「おい、そんなこと言ってる場合か? バックストレートで砲撃があるぞ。」
ピーター・パーフェクトは苦虫を噛み潰したように言う。
「量子キャノン、来るぞ。」
いわゆるワープキャノンの一種である。これはすべてのマシンの兵装は同形式である。亜光速で飛翔する機体から打ち出される兵器はビームであれ弾丸であれ止まったように見え、遅々として進まない。物質である以上光速は超えられないのだ。
それで、量子が光速を超えた距離で共振することを利用した量子兵器が武器になるのである。つまり、ビームを放つとその波動が跳躍して当たるのである。
ただ、後方への攻撃は意味がない。というのも物質は光速に近づくほど質量が増すため、大抵の物質兵器では傷一つつけられないからだ。ブラックホールを利用したコースであっても、ブラックホールに落ちない理由でもあるし、どんなに速く飛んでも映像として捉えることが可能なのもそのためだ。
「 マーリン、頼んだよ。」
「目標をセンターに入れて⋯⋯スイッチ。目標をセンターに入れてスイッチ。」
マーリンが量子兵器のトリガーを握りしめながらブツブツと呟く。
「マーリン、それは『碇シソジ』ですか?」
ゼルはからかおうと思ったが、マーリンの目が座っているのを見てやめた。
「凜、この小説始まって以来、マーリンのこてれほどマジな顔を見たのは初めてです。」
ゼルが驚いたように呟いた。
マーリンの思いは身体とは別に遠い過去へと遡っていった。
「
「ええ。」
マーリンは
「面白そうじゃないか。我々が忽然と消えたら、銀河系は大騒ぎだ。きっと、我々の痕跡を求めてゴキブリどもが大挙して押しよせて来るだろうね。どうするんだい? そんな時は。」
「まあ、めぼしいものは地下空間に穴を開けて収納しておきました。どこにも入り口はありませんし、誰にも見つけられませんよ。」
「まるで
やがて、ゴメル人たちがいなくなったことは大ニュースになる。そのニュースが駆け巡ると多くの惑星から「調査団」が送り込まれる。しかし、それは調査団の名を騙るただの窃盗団であった。彼らは美術館や博物館、商店に押し入ると手当たり次第に物を盗み始めたのだ。銀河系最高水準と言われた美しい街はたちまち泥棒たちの草刈り場と化したのである。
「こうなることは分かってはいましたが、あまり気分がいいものではありませんね。」
「やはり、まだまだ『民度』は低いようですね。」
マーリンは忌々しそうに呟いた。
二度三度とこういうことを繰り返していくと、段々「調査団」も大胆になってゆく。より大きな重機を持ち込み、街の破壊を始めたのだ。
「まだ、ここに住みつくくらいなら可愛げがあるというものですが。」
マーリンは化肉をして何度か姿を現し、調査団の略奪を思いとどまらせようとしたが、彼らにとっても、生活がかかっているものや、ここに来るために多額の資金を投じている者たちもいて、面従腹背の者がほとんどであった。
いつしか、
(やれやれ、どうしたものか⋯⋯)
対策に頭を悩ませている
(これでようやく一息つけそうですね。)
ほっとしたマーリンの目の前で信じられない光景が繰り広げられた。それは核兵器の使用である。
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