駄目人間のゴミムシが親孝行する話
天ノ川源十郎
第1話
これから駄目人間の話をしようと思う。
駄目人間といっても大きく分けて二種類あって
反社会的で犯罪的な行為を平気でする胸糞悪くなる駄目人間と、
バカでどうしようもない奴だがどことなく愛らしいタイプの駄目人間がいる。
今からする話はどちらかと言えば後者の話だ。
駄目人間が両親に対して駄目人間なりに親孝行をするお話。
平たく言ってしまえば駄目人間である私自身が親孝行をした時の話だ。
実のところ、この話が両親もしくは姉夫婦にバレるようなことがあれば私は非常に拙い立場に立たされることになる。とはいえ、何せ数年前の話であるしこんな場所で不特定多数の人々に語ったところでそうそう個人が特定されるようなこともないだろう。
自身の恥を公の場で何のてらいもなく語る私の存在自体がある意味親不孝なのかもしれないのだけれど、まぁ何。バレなければ問題はない。
今となってはもう時効のようなものだし、親孝行をしたという事実には違いないので気楽に語らせてもらうとしよう。
恥の多い生涯を送ってきました。
これは太宰治の人間失格「第一の手記」の冒頭に書かれた一文だ。
駄目人間を自認する私には身に覚えのある一文といえる。
私自身の過去を振り返れば恥、恥、恥、とさまざまな恥がそこらかしこに散らばっており、その恥を恥と気づくことさえもせずにまた一つまた一つと生み出しては散らかしていく作業を今もこうして現在進行形で行っている。
もしも私が真っ当な人間であればその恥の多い過去を顧みて羞恥のあまり七転八倒して悶えずにはいられないのだろう。けれども自分は駄目人間であるため恥を恥と感じることができない。
世間一般では「黒歴史」などと呼ばれるような過去なのだろうが、私にとってそれは「歴史」ですらない。先ほど現在進行中と述べたとおり私自身の人生は「黒歴史」の真っ最中でありその黒い道程を歩んでいる道半ばなのだ。
ああ、そうだ。
道程で思い出したが私は幸いなことに童貞は道半ばではない。十七歳の時に風俗で卒業を迎えている。裏口からの救済措置を実行したわけだが、駄目人間たる私が正規のルートを辿って童貞を卒業することなど不可能だったに違いない。裏口を使わなければ私はおそらく今でも在学中だったはずだ
とまぁ、自身の恥をさして自覚することもなく今まで生きてきた。
客観的な視点。
いわゆる厳しい第三者の目で見れば間違いなく恥なのだが、どうにも私には恥ずかしいという感情が欠落しているようだ。きっとこれが、恥知らず、というやつなのだろう。
具体的に私がどの程度恥知らずなのかを述べるならば、
もし美人なお姉さんから蛇蝎のように嫌われゴミムシを見るような目で睨まれるようなことがあれば、情欲の歓喜に震えて自身がゴミムシであることに感謝の念すら抱きつつ堕落のマゾヒズムに酔いしれてしまう、という程度には恥知らずな人間だ。
そんなわけで私の拙作を読み終えた時、うわぁコイツ最低、と思ってくれる美人のお姉さまがいらっしゃいましたら心の中で構わないので、ゴミムシが! と罵ってくれるよう是非ともお願いしたいと思う。
さてそんな恥知らずな私を育て上げた両親は私とは似ても似つかない真っ当な人物だ。どうしてこの普通の両親からこれほどまでどうしようもない息子が誕生してしまったのかについては我ながら不思議でしょうがない。
名馬の子供が必ずしも素晴らしいサラブレットになるとは限らないように普通の両親から普通の子供が生まれる保証などどこにもないということなのだろう。
せめてカエルの子がカエルでありさえすれば良かったのだが生まれた子供がゴミムシなのだから天の采配というのは時として残酷なものだ。
優しい両親はゴミムシたる私を一生懸命に育て上げて大学にまで行かせてくれたのだがゴミムシが人並みの教育を受けたところで立派な人物に育つはずもなく、結局のところどうしようもない性根の駄目人間が出来上がってしまった。
とはいえ、こうして成人するまで育てくれたことに感謝しないほど私も恩知らずというわけではない。いくらゴミムシといえどもその恩に対して消費税分くらいはお返ししておきたいとは常々ゴミムシなりに考えてはいた。
そんな折、母の還暦が迫っていた。
我が家は両親が共働きで母も一家の家計を父と共に支えてきた。
母は高校を卒業した後すぐに就職して会社で出会った父と結婚した。そして二人の子供を産んだあとも ずっと同じ会社に四十年以上勤めてきた。
そんな母もようやく還暦となり定年退職を迎えようとしていた。
ちなみに母より10歳以上離れた父はずいぶん前に定年を迎えている。
当時の私は学生でまだ就職しておらず、お金も碌になかったため大したことはしていない。もっと正確に言えば、父の還暦には私は何もしなかった。
そんなわけで親孝行をするタイミングとして丁度良い機会に思われた。
これを機に何もしてあげられなかった父の分も含めて何かできるのではないかと考えたのだ。その結果、私は両親を旅行に連れて行くことを思い立った。
両親を旅行に連れていくためにはどうすればいいのか?
旅行にはお金がかかる。ならば単純にお金を用意すれば良いだけの話だ。
二人で好きなところへと考えれば100万円もあれば十分だろう。
東京都知事の視察旅行のような贅沢をさせてあげられる程の金額ではないが、二人で好きな場所へ行ってしばらく楽しむ程度であれば十分に違いない。
そう考えて私は100万円を用意しようと決心した。
とはいえゴミムシたる私が100万円を用意しようしても、ドラえもんの秘密道具よろしくポケットの中からポンッと出てくるはずもない。
現実的に考えれば私の雀の涙ほどの安月給から毎月わずかながらに積み立ててお金作る以外に方法はないだろう。
もちろん犯罪に手を染めれば簡単にお金が手に入るのかもしれない。しかし駄目人間とはいえ私はそういう反社会的なタイプの駄目人間ではない。
犯罪などという大それたことはゴミムシたる私にとって善悪の判断以前の問題であり、そんな恐ろしいことをする肝っ玉がそもそも備わっていない。
善いか悪いかは別として、私に社会を敵に回して生きていくだけの気概があればもっと違った人生もあったかもしれない。けれども小心物のゴミムシたる私にはその身の丈に合った生き方というのがあるのだ。
自分の器以上の物を求めてはいけない。
これはゴミムシがゴミムシなりに学んだ人生における経験則だ。
自分の身の丈にあった以上のものを求めると碌なことにならない。
私はそのことを身に染みて学んでいた。
中学時代、私は学年で一番の美少女と噂される子に恋をして告白したことがある。ゴミムシたる自分がゴミムシであるという自覚のなかった頃の話だ。
いわし雲が黄金色に輝くある秋の放課後、私は初恋にあたるその少女を用事があると校舎裏に呼び出して好きだと口頭で伝えた。
私の愛の告白を耳にした少女の反応は劇的だった。
あろうことか絶望を露わにした真っ青な表情になり号泣してしまったのだ。
もちろん嬉し涙などではなく、屈辱の悔し涙。
私が一方的に愛した少女の朗らかな可憐さは影をひそめ、可愛らしかったはずの顔には嫌悪と怒りがこもった憎悪が映し出されていた。少女の美貌は激しくしかめられ大好きだったその瞳には拒絶の意志が宿っていた。
「ありえない。悔しい。ありえない」
それが少女からの返事だった。
ゴミムシから告白されるなんて、ありえない、ということだろう。
私は初めて好かれるという事が時として屈辱になりえることを知ってやるせない気分になった。私に好かれるということは彼女にとって屈辱だったのである。
初恋は実らないというが、私の場合は結果として当てはまらなかった。
何故なら初恋はラフレシアのような醜悪な花を咲かせ悪臭をまき散らし思春期の少年の心を取り返しがつかなくなるほど汚染させるまで立派に実ったからである。
この一件で私は学年中の女子を敵に回したのみならず、少女に憧れを抱いていていた男子からは『一方的な正義感』という名の制裁を加えられることとなった。
その後、失恋による心の痛みだけではなく学校生活そのものが嫌になるほど酷い目にあった。それもひとえに私がゴミムシである自覚をもっていなかったせいなのだった。
身の程というものを自覚したのはこの時からだ。
こうして私は自分の器以上の物を求めると碌な結果にならないこと学んだのだった。
さて話を本筋へと戻すとしよう。
100万円というお金を貯めるため、私は身の丈にあった手段を選ぶことにした。
それは駄目人間としては思いのほか真っ当で現実的な手段かもしれない。
2年かけて100万円。
これが私の考えた無理のない貯蓄計画だった。
一か月に2万円ずつためてボーナスの時に少し多めに貯金をする。それならば無理なく100万円くらい貯められる。そんな風に考えたのだ。生活費やら交際費を差し引いても無理のない計画と考えると月に2万円くらいが丁度良いように思われた。
幸い私にはヘルス以外にお金のかかる趣味はない。
ヘルスが趣味というと健康維持かな?と思うかもしれないがもちろん駄目人間たる私がヘルスと言えば健全な意味であるはずもなく風俗的な意味においてのヘルスになる。
何度も通えば決して安い遊びではないが私は月に2回と遊ぶ回数を決めている。
そのための予算は給与から「下半身思いやり予算」と名付けられた別口座に振り込まれるため間違って余計に使ってしまうこともない。
月に二万円の貯蓄はさほど難しいことではなかった。
手元にあるお金はすぐに使う、という習慣が私にはない。使わないお金は基本的に貯蓄に回す。風俗通い以外の趣味には読書があるが、そんなものは図書館に行けば一銭もかかることはない。堅実と言えば聞こえはいいが、結局のところせこくてケチなのだ。
100万円というお金は計画通り母の定年退職に合わせて順調に蓄えられた。
無事に100万円も溜まり旅行の費用としてあとは両親に渡すだけの段階となった。
ここで、はいどうぞ、と100万円をポンと両親に渡してあげたのなら、この話はただの美談で終わる。駄目人間ではなく純粋に孝行息子の物語としてハッピーエンドを迎えていたはずだ。
しかし私は駄目人間である。意志薄弱で誘惑に弱いゴミムシである。
私は両親に渡すためコンビニのATMで数回に分けて100万円を引き落とし、そのお金を封筒袋の中に入れた。その紙幣の厚さと重みに私はたじろいでしまったのだ。
私はその時まで20万円以上の金額を通帳上の数字として以外に見たことはなく、そのお金の重みに私の心は激しく揺さぶられた。
樋口一葉なら200人分。野口英世なら1000人分。
紙幣の頂点に君臨するお方。天の上に人を造らない人がなんと100人もいた。
100万円という金額は決して安くはない。
なにせ欽ちゃんの仮装大賞の優勝賞金と同額だ。
軽自動車なら新車で買えるものだってある。無課税ならうまい棒が10万本買える。
2万円のヘルスコースが50回も行ける。私なら合計で150回はイケる。
100万円という大金を手にした私は目がくらんでしまったのだ。
無理もない。お金持ちであればそんなことはないだろうが、一般庶民にとって100万円は決して安い金額ではない。駄目人間の心を揺さぶるには十分すぎた。
そして私の心の脆弱な部分から悪魔の声が聞こえてきた。
「別に両親に予告しているわけでもなし、このままなかったことにすればいいじゃないか」
その通りだった。
親孝行とはいっても何もそこまでする必要などない。
還暦おめでとう、定年退職ご苦労様でした。と両親をレストランに連れていけばそれだけでお祝いとしては十分だろう。両親もそれで納得するはずだ。
しかし同時に私の心に住まう天使がこうも囁いた。
「育ててくれた両親に対する恩をないがしろにしてはいけません」
もっともだった。
今までゴミムシの自分を育ててくれた恩は100万という額では決して収まるもの程度のものではない。そんな両親の大恩に報いるのは息子としての義務のように思われた。
心の中で悪魔と天使が激闘を繰り広げた結果、その闘争は両者の共倒れに終わった。
悪魔は断末魔の叫びを残して地獄へと還っていき、天使は満身創痍となって神の国へと召されていったのである……
「よし50万で手を打とう」
こうして駄目人間は誘惑の前にして初心を忘れたのだった。
しかしそうなると困ったことが発生する。
50万では近場の海外旅行程度なら何とかなるだろうが、ヨーロッパに二人で旅行となると少々心もとない…… というより明らかに足りないのだ。
一応、私にも意地というか両親をそれなりに楽しませてあげたいという思いはある。
そこで私は考えた。
100万円という当初の目標金額を達成する裏技はないものか?
50万円を100万円にするような錬金術はないものか? と。
無い知恵を絞って頭をフル回転させた結果、錬金術の存在に気が付いた。
私が思いついた錬金術、それは『姉夫婦をたかる』という裏技であった。
私には3つ年の離れた姉がおり結婚して既に家を出ているのだが、母の還暦祝いに関しては無関係なわけではない。
相手が実姉である以上、私の両親は彼女の両親でもある。
「悪いけど俺、風俗行きたいから50万くれよ」というのは無茶苦茶だが
「俺も半分出すから、両親の還暦祝いのために50万融通してくれないかな?」というのは通用する気がした。
そこで、私はさっそく姉の携帯に電話をかけてその話を持ち掛けた。
姉の返事はこのようなものだった。
「私は良いけれども、誠治君に聞いてみないと何とも言えないかな?」
どうやら旦那に聞いてみないことには分からないらしい。
姉は二人の子供を持つ専業主婦だ。結婚と同時に寿退職をして今は働いてはいない。
お金の管理は姉がしているようだが、実際に稼いでいるのは夫の誠治さんだ。二人の子供を養わねばならないし、そうでなくとも姉の一存で50万というお金を好き勝手に動かすわけにはいかない。
だが私は姉のその言葉を聞いて勝利を確信していた。
誠治さんはNOとは言わないことを私は知っていたのだ。
誠治さんにとっては私の両親は義理にあたり50万円も融通する義務などどこにもない。子供たちの養育のこともあるし、そうでなくともお金は必要だ。私の提案を跳ね除ける権利は十分にあった。
しかし誠治さんなら断らないだろうと私は踏んでいた。
何故なら姉夫婦が新居を立てる際に父は私が提示した額の10倍以上のお金を姉夫婦のために援助したことを私は知っていたからだ。
私のために50万払え、と言っても聞き入れてはもらえないだろうが
両親のために50万融通してくれ、といえば誠治さんは断れない。
私はそのことを知ったうえで姉夫婦を利用したのである。
思惑通り、誠治さんは旅行費用の半分を負担することを了承したというメールがその晩に姉から携帯に届いた。計画通り順調に運んだことに私は安堵してほくそ笑んだ。
こうして私は独身でありながら二人の子供を養っている姉夫婦にたかるという中々にクズな交渉を成立させ、本来両親に渡すはずの50万をぬけぬけと自分の懐へと収めたのだった。
そして母が還暦を迎えた誕生日の当日。
私は両親と姉夫婦とその子供を予約していた高級中華料理店へ招待した。
コース料理をほぼ食べ終えてあとはデザートを残すのみ、というタイミングで私は還暦を祝う言葉を述べ、これまでの感謝の気持ちを込めて云々という前置きをしたあと旅行をプレゼントするという話を切り出した。
「俺と姉さん、誠治さんがお金を出し合って旅行にということでお金を集めたんだ。まぁ、何はともあれ還暦おめでとうございます。父さんの時にはさして何もしてなかったこともあるし、二人で海外旅行にでも行っておいでよ」
私はそういうと厚みある封筒をテーブルの上に置いた。
母は身に覚えのない証拠品を突き付けられた無実の容疑者みたいにキョトンとした表情でその封筒を見つめた。どうやら封筒の厚みに気が付いて戸惑っているようだ。
動けない母に代わって父がその封筒を手に取るとその中身を確かめる。
ほう、と軽く目を見張った父は封筒の中身を母に見せた。
母はそれを見て目をぱちぱちとさせた。
「これだけあればそう悪くない旅はできると思う。ヨーロッパあたりに行くもよし、近場を何度か楽しむもよし、好きにすればいいさ」
「本当に、いいの?」と母は声を震わせながら言った。
「かまわんよ。俺も姉さんも誠治さんも母さん達には感謝している。いい機会だから退職後に暇を見つけてどっか行っておいで」
私はここぞとばかりに尊大な口調で母にそう言った。
母は私の言葉に思わず嬉し涙で目の内を潤ませていた。感激のあまり言うべき言葉も失ってしまったようで、何度も頭を下げて感謝を表しながらハンカチを手に取り涙を拭っていた。どうやら私が二年越しで用意したサプライズプレゼントは十分に母を喜ばせることに成功したようだった。
デザートを食べ終え私が会計を済ませた後、誠治さんが近づいてきて「いくらだった?」と言った。
私は「ここは良いよ」と支払いを断ったが誠治さんは奪い取るようにしてレシートを受け取るとその金額を眺めた後、万札を数枚押し付けるようにして私に渡した。少しだけ総額に届かないのは端数をよろしく、ということなのだろう。
もともとあげる予定の50万円の中から出すつもりだったので少々申し訳ない気もしたが万札を受け取った私は内心で、これでヘルス1回分浮いたな、と私は下種なことを考えた。
こうしてレストランから出た私は両親が喜んでくれたことを素直に喜びつつ、今回の名采配を心の中で自画自賛した。
私が50万を出し、姉夫婦も50万を出し、両親が100万円を受け取った。
私はもともと計画しなければ払う必要のなかった50万円を損した。
姉夫婦も私にたかられて50万円を損した。
そして両親は私から貰えるはずだった50万円を損した。
こうして全員が50万円ずつ損をした計算となる。
これぞ三方一両損と呼ばれる大岡越前の名裁きではないか。
今回の策略を有名落語になぞらえ、私はその結果に満足したのだった。
それから2か月後、両親は香港へと旅立っていった。
どうやら一回で使い切るのも勿体ないという理由で近場の旅行を数回に分けて楽しむことにしたらしい。
車で両親を空港まで連れていった私は幾度となく感謝の言葉を受けた後、二人の乗った飛行機が飛び立つのを見送った。
落日に朱く染まった夕空へと消えゆく飛行機を眺め終え、私はふぅと一息つく。
あと1時間もしないうちに陽は落ちて夜の闇が朱い空を覆うだろう。
財布の中には使われなかった50万。
やるべきことは終わって手元のお金でヤルべきことを楽しむ時間がやってきたのだった。
私は空港の駐車場から車を出すと高速道路を通ってそのまま都会へと直行した。
車を走らせること40分、私は歓楽街近くの有料駐車場に車を止めた。
夜の都会は人で溢れかえり酔狂なさざめきがビルディングのはざまから聞こえてくる。普段は淡く漂う人々の欲望を夜の街はくっきりと映し出していた。
喧騒の中で私はもともとここにあるはずのないお金を握りしめた。
私の人間性を宿したお金は両親が持っていってしまった。
ここに残されたのお金には私のゴミムシとしての矮小性だけが残されているのみである。
妖しく光るネオンから生まれた私の影は、
人間の形からゴミムシのそれへとゆっくりと変化していった。
そしてゴミムシの影はガサゴソと人目を避けるように欲望渦巻く風俗街へと姿を消したのだった。
駄目人間のゴミムシが親孝行する話 天ノ川源十郎 @hiro2531
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