珠玉の文具達

ゆあん

万年筆編

万年筆① 万年筆って一体何?

 主要な筆記具(ペン)を思い浮かべて下さい。



 と言われれば、多くの人が以下の三つを上げるのではないでしょうか。


 ①鉛筆

 ②シャープペンシル

 ③ボールペン


 ①の鉛筆と言えば学業のお供として定番ですね。

 歴史が古く、学校教育の筆記ではまず鉛筆、そして歴史を知るために書道、という位置づけです。

 鉛筆は安価な割に筆圧に強く、また細身の為筆記フォームを作るのに適していると考えられていますね。

 その最大の売りは「間違えたら消せる」こと。消しゴムはお供といえますね。


 ②は①の発展形ですね。多種多様なものがありますが、コチラも単価は安いです。追加購入出来る芯をしっかり最後まで使えるのであれば、ランニングコスト的には鉛筆を下回る、非常にコストパフォーマンスに優れた商品です。

 鉛筆と同じく「間違えたら消せる」メリットを持っていますが、芯の特性上過度な筆圧には弱く、商品によって重要バランスがバラバラなのでフォームを作るのに適さないと考えられているからか、学校教育では禁止されている所もあります。


 ③は社会人に必須の道具ですね。鉄球が紙との摩擦で回転し、それによってペンポイントにインクを送り続けるという、なかなか渋い設計になっています。

 その利点はずばり「消せない」事。公文書に使用可能になり、保存しなければならない書類の多くでこのボールペンが用いられています。

 最近は消せるボールペンもメモなどで人気ですね。

 逆にその特性から学業の現場ではあまり用いられません。しかし社会にでるとボールペン字講座などが通信教育でも取り扱われているほど、ボールペンがうまく扱えるかは重要な要素になってきています。


 社会人になると、「複製できないものの証」として筆記する事が増えます。複製出来るものを作業する時はPCの方が俄然効率がいいからですね。

 領収書、各種届出書、履歴書、重要文書のサイン等…


 一言で行ってしまえば事務用品です。


 そんなボールペンが主要になる前。その消せない利点を最大限生かして活躍した筆記具があります。


 それが「万年筆」です。



 万年筆は英語でfountain Penと言われるように、インクを使ったペンです。インクが毛細管現象によってペン先に持続的に送られるという、自然現象を使った賢いペンです。


 具体的には以下のような特徴があります。

 A、インクを交換する事で、半永久的に使用可能

 B、極めて少ない筆圧で筆記でき、抵抗が少ない為、長時間の作業に適している

 C、書き続ける事で、ペン先が使用者の癖に馴染んでいき、格別の書き味を楽しめる

 D、インクカラーが豊富で、一本のペンで気分によって使い分ける事が出来る

 E、化学反応を利用した「消えないインク」で筆記する事も可能

 F、インクの濃淡による味のある筆記が出来る

 G、アクセサリー性が高く、スーツに映える


 これらの特徴は①②③にはない特徴で、特にA、Bについては代えが聞かない特徴となっています。


 先にも上げた通り、「わざわざ書く」というのは特別な意味が求められています。

 実生活の例ですと、

 ・結婚式招待状の宛名、返信本文

 ・年賀状、暑中見舞い、手紙などの気持ちを込めたもの

 ・各種顧客に対しての送付物宛名全般

 この辺りは、「ボールペンで書くと失礼にあたる」ことがある場合もある例ですね。今時はなかなかそんな事いう人も多くありませんが、格式高い場面でボールペンは憚られる、という文化もあります。


 特別な相手には特別な筆記具で。


 そんなシーンに活躍するのが万年筆です。


 万年筆は製造に高い技術が求められた事から、いっときには日本のお家芸といえるほど、日本産の万年筆が世界中に溢れかえっていた時代もあった程です。



 本章ではまず、Aについて取り上げたいと思います。



 鉛筆は自身を削りだす事で中の芯を使います。シャープペンシルは芯自体を送り出します。ボールペンはインクが充填された芯を、ペン先ごと交換します。


 万年筆はそのいずれとも異なり、交換するのはインクだけです。


 様々な構造がありますが、基本的に万年筆にはインクを貯めておけるスペースがあり、そこにインクを「吸い上げて」補充します。

 ペン先の中にも空洞があり、矢尻状のペン先の中心のわずかな溝を通じて、常にペン先にインクが送られます。

 ペン先は堅い金属で出来ており、これが紙と接触する事で、溝からインクが染み出し、筆記が可能になります。


 インクは液体ですから、絵の具の如く色鮮やかに染色する事が可能で、このインクを交換する事で非常に多彩な色合いを楽しむ事が出来ます。


 私個人は実際の仕事でも活用しています。例はこんな感じです。

 ・提出された企画書、提出物のチェック、加筆(青黒、または赤インクを用いて)

 ・雑誌などの重要な箇所のチェック

 ・メモ帳(月ごとにインクの色を変えて、いつ頃の内容だったか瞬間的に把握)


 最初に上げた項目は大切です。モノクロで印刷された書類に黒文字筆記具で加筆しても視認しにくいですし、消えるボールペンのカラーを使っても、消されてしまっては意味がありません。消せないインクのカラーボールペンは発色が悪かったり、何かポップでビジネス用途としては書き上がった文字含め微妙、という事もあります。

 採点などの作業にも非常に優れた性能を発揮しますね。特に、滑るようなかき心地ですから、アンダーバーや○をつけ続ける作業、英語の筆記体などに特にその威力を発揮します。


 小説家の皆様も、下書きは筆記具で行う、という方も未だに多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 大量筆記するとどうしてもタコが出来てしまったり、腱鞘炎になってしまうなどの弊害もありますよね。特にボールペンは腱鞘炎に注意です。

 そんな時、万年筆を使って滑るように書ければ、楽になるかもしれません。

 また書いている内に新しいアイディアが生まれてくるかも知れませんね。



 次回以降、不定期で、万年筆の特徴、得意な事、苦手な事、アクセサリー性や、入門編のお勧めなどしていければと思います。


 少しでも多くの方々が、特別な筆記具を持つ喜びと出会える事を、切に願っております。

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