魔王ノ守護者ハ異世界ヨリ
@MonochroKB
プロローグ
「ぐあああっっ!」
息ができない。
口から入った酸素が胸に開いた穴から、ヒュウヒュウと音をたてて逃げていく。
耳元で声が聞こえる気がするが、空気と一緒に外に出ていくばかりでまるで頭に入ってこない。
肉の焦げたにおいと流れ出てくる血と痛みで頭がおかしくなりそうだ。
痛い。
何が起こったのかわからなかった。
覚えているのはカメラのフラッシュの様な目が眩む光だけ。
痛い痛い痛い。
じりじりと死の気配が近寄ってくるのを感じる。
口の中に溢れてくる血が気持ち悪い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
「……えに……わが……あたえ……」
朦朧とする意識の中で遠くから呼ぶ声が聞こえる。
夢の中の出来事のようで、幼い頃の記憶のようなおぼろげなものだった。
それは次第に大きくなり、続く言葉ははっきりと聞くことができた。
「エンド・ヴァン・アレグローウェン、お前をわが守護者とする」
次の瞬間、驚くほどはっきりと目が覚めた。
授業中うたた寝しているところを叩き起こされたような平凡な感覚だった。
ありったけの空気を肺に送り込む。
胸に空いていた大きな
仰向けに寝かせられた俺は二つの顔に見下ろされていた。
一つは小学生が悪ふざけで描いたような笑うピエロの仮面、もう一つはぱっちりとした目のかわいい幼女。
「おはようございます。エンド様。ご機嫌はいかがでしょうか?」
ピエロの中性的な声が、まるでその台詞を何度も練習してきたかのようにすらすらと俺に訊ねる。
「なんか……不思議な感じだ」
エンド様……そう呼ばれるのがさも当然のように感じた。まるでずっと前からそうだったような心地よさがある。
「貴方は心臓を消し飛ばされ、肺に大きな穴を開けられたんです。覚えておいでですか?」
「やめろ。言葉にしないでくれ。アーアーオボエテナイナー」
想像しただけで消えたはずの傷の痛みが蘇る気がした。
「ところでなんで俺の傷は治ったんだ?」
“この世界”ではそういうものなのだろうか?
「それはわたしから説明しようかの」
幼女が薄い紫の髪のツインテールを揺らしながら立ち上がる。
「お前は……わたしと契約したのじゃ!」
彼女は無邪気にそして嬉しそうに笑って、そう言った。
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