第14話 俺たちはただの大学生
玄上法師との戦いの後、皆で俺の部屋に集まった。道端に放置してある元・付喪神は、晴瑠が安倍家の人を派遣して処理してくれるらしい。
「はるるん、金野さん大丈夫なの?」
「4日もあればお札から出て来れるようになりますよ。完全復活だと更に3日は掛かるでしょうか」
「合わせて一週間か……長いな」
いつ敵が攻めてくるか分からない状況で、金野の不在は大きな痛手だ。玄上法師は『百鬼夜行の一介』だと言った。つまり百鬼夜行は他にもいるということだ。もし、また玄上法師レベルの妖怪が来たら俺たちはとても太刀打ちできない。
「でも、もう心配いりませんよ」
「それってどういうこと?」
「ついに百鬼夜行の手がかりを掴んだんです。ヒントは付喪神通り魔事件です」
付喪神通り魔事件って、中古家電の付喪神が人を襲う事件だ。俺と如月が中古のブラウン管テレビ付喪神に襲われたように。待てよ? 今回襲ってきたのも中古家電の付喪神たちだった。これは単なる偶然か? それとも――
「付喪神通り魔事件の真犯人が百鬼夜行にいるってことか?」
「丑門くん正解です。しかも真犯人が何の妖怪かまで分かりました」
「中古家電を付喪神にする妖怪でしょ? そんな妖怪、ウチ聞いたことないよ」
「それがいるんです。『
晴瑠が言うにはテレビ付喪神と、今回襲ってきた中古家電の付喪神から同じ妖気を感じたそうだ。普通なら妖怪の種類が違えば、妖気も違ってくる。でも一致するということは、元は同じ妖怪の能力によるものではないかと考えたそうだ。
「塵塚怪王は珍しい妖怪なので、個人を特定するのもそう難しくないでしょう。塵塚怪王を追えば、いずれ百鬼夜行のアジトだって分かります」
「でも
「予言がなんであれ、丑門くんや南天ちゃんはただの大学生なんですよ?」
晴瑠にそう言われ、俺はハッとした。なにも俺たちが敵を倒さなくてもいい。自分から危ないことに首を突っ込む必要はないのだ。
「私にとって丑門くん達はただの大学生で、大事な友達なんです。丑門くん達に金野みたいな目に遭って欲しくないんです」
金野のことを思い出したのか、晴瑠の目には涙が浮かんでいた。
「大丈夫です、事件が解決するまで安倍家が全力でお守りしますから。丑門くん達は平和なキャンパスライフを送ってください」
そうだよ、俺たちはただの大学生だ。ただ勉強したり、バイトをしたり、遊んだりしてればいいんだ。
晴瑠はシリアスな雰囲気から切り替えるように、パンッと手を打った。
「さて真面目な話はこの辺にして、何か楽しい話でもしましょうよ」
「そういえば夏休みももうすぐだね‼ 楽しいイベント盛りだくさんだよ‼」
「でも夏休みの前に、期末テストっていう一大イベントもあるけどな」
「せっかく忘れようとしてたのに……あ‼」
テーブルに突っ伏していた如月が、突然大声をあげ、ばねのように飛び起きた。
「花火大会ってテストの前にあるよね!? 皆で花火見よう!!」
「それって来週の土曜にある花火大会でしょ? ウチ屋台行きたい‼」
「おいおい浮かれんなって。お前ら大事なこと忘れてんぞ」
「丑門くんの言う通りですよ」
この時期になると川沿いで大きな花火大会が開かれ、毎年多くの人で賑わうらしい。不特定多数の人がいる所に行くのはさすがに不用心すぎるだろ。『事件はまだ解決してないんだ』って晴瑠から言ってやれ。
「花火大会といえば、浴衣を着るのも忘れちゃいけませんよ‼」
「思ってたのと違う!! 」
「もしかして、丑門くんって甚平派でしたか?」
「そこじゃない‼」
晴瑠曰く、そのくらい安倍家には問題ないという。こうして俺たちは日常に戻ろうとしていた。
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