◆Middle02◆悪役令嬢とスパイ令嬢

 王都ホテルは格式ある老舗であった。

 豪奢な内装は見る者の目を楽しませてくれ、行き届いたサービスは、くつろいだ一時を保証するレベルにあった。伯爵令嬢として厳しい審美眼を持つラヴィニアから見ても、文句のつけようのない一流ホテルだ。

 ただひとつの問題は、案内された部屋にとある少女がいたことだった。


GM:では、次のシーンです。引き続き全員登場で、舞台は王都ホテルの一室になります。

ラヴィニア:ほう。

GM:皆さんはキシャーが用意した王都ホテルの一室に案内されます。さすがに至高のプリンセスのための部屋なので、最上階のスイートルームが用意されています。

ラヴィニア:あら、良さそうな部屋じゃない? と中に入ろう。

GM:すると、「お待ちしておりました」と、声がかかります。

ラヴィニア:だれぇぇぇぇーっ!?

GM:そこに待っていたのは、貴族の装いをした銀髪のエルダナーンの女性です。足下には黒猫とサバトラの猫がいます。二匹はいわゆる使い魔ですね。

ゼロ:二匹の使い魔の猫をつれた銀髪のエルダナーンの女性……もしやイレーネですか。

GM:ご名答。


イレーネ

 『アリアンロッド 2E・エスピオナージ・リプレイ+データ ハードラック・ミッション』に登場したPCのひとり。エルーラン王国情報部の元締めを務める貴族の令嬢です。一話で、ラヴィニアと交流のあった冒険作家フレッチャーとともに、とある事件を解決しています。


イラスト↓(お手数ですが下記URLをコピーして、ブラウザに入力してください。イラストを閲覧できます)

http://www.fear.co.jp/kakuyomu_gazou01/26illust06.jpg


GM:実は第一話でフレッチャーさんの話がでたので、『リプレイ・エスピオナージ』のキ

ャラを登場させようと思いまして。

ラヴィニア:プレイヤーはもちろん知ってるけど、ラヴィニアにとっては初対面ですわよね?

GM:ですね。

ラヴィニア:ではそういう対応を……部屋に入っているのは感心しませんが、わたくしは寛大な心を持つ至高のプリンセス。まずはあなたのお名前と、このぶしつけな訪問のわけをお聞かせいただけますか?

GM:あたしの名はイレーネ。フレッチャーさんの担当編集者のような役目で、あなたの原稿も読ませてもらっているのです。

ラヴィニア:へへー! と平伏します。

一同:おい!? 悪役令嬢!!

ラヴィニア:はっ! しまった、編集者と聞いたら反射的に……。

GM:「……と、いうのは仮の姿」

一同:お?

GM:「あたしはこのエルーラン王国の情報部の長を務めている者なのです」一礼して彼女は話を始めます。

ラヴィニア:情報部の長? それは興味深い。

ゼロ:確かに。先々ラヴィニア様のよいコネクションになりそうですね。と名刺を差し出して挨拶しましょう。

GM:では、彼女は丁寧にそれを受け取って話を続けます。「単刀直入に申しまして、あなたに依頼があって来たのです」

ラヴィニア:依頼?

GM:「実はエルーランの宮廷内に不穏な動きがありまして」

ゼロ:ほう、どのような?

GM:「究極プリンセスのルティさまは、たいそう人気があるのです」

鉄也:ギッ……その人気の程は知っている。老若男女、果ては動物にまで大人気。

GM:「なかでも、四人ほどの高官の子弟が特に彼女にご執心なのです。四人は彼女を崇拝していて、なにやら不穏な相談をしているという噂があるのです」

ラヴィニア:不穏な相談って?

GM:要するにクーデターです。

一同:クーデター!?


 話の跳びっぷりに呆れる一同。


ゼロ:クーデター……ですか。して、いかなる根拠でそう思われたのですか?

GM:「実は、彼らはこれまで貴族のバカ息子を地でいくような者たちだったのです。それが最近急に闇市場で取引されているマジックアイテムを購入したり、軍のはみ出し者と交流したりと噂を補強するような情報まで入ってきて」

ポメ郎:なるほど。四人をそそのかしているのが、ルティかも知れないポメね。

ラヴィニア:ほら、あの女は腹黒いでしょ! 動物に好かれるピュアなキャラづけなんて、ただの目くらましだったのよ(笑)。

GM:「まだ彼女が首謀者と決まったわけではないのです」

ラヴィニア:首謀者よ。わたくしの主観によればね。

一同:主観かい!?(笑)

GM:「ついては、ルティとその取り巻きの四人の陰謀の調査をお願いしたいのです」

ラヴィニア:わたくしが調査……ですか?

ゼロ:にしても、エルーラン情報部が自分で手をくださないのは、少々気になりますな。

GM:「組織の恥を承知で言えば、四人の金の使い道や、闇市場で何を買ったのかはもちろん調べました。……が、そのルートはことごとく何者かの妨害にあって失敗したのです」

ラヴィニア:そんな案件、素人であるわたくしの手に余りますわ。

GM:「ルティも親友のあなたには気を許すだろうし、舞踏会には例の高官の子弟四人も出席の予定です。近づく機会も設けやすいかと思ったのです」

ラヴィニア:わたくしは、あの女の親友なんかではありません。

GM:「これは失礼……なのです」

ラヴィニア:だとしても、わたくしが調査に乗り出す理由が乏しいですわね。

GM:(つぶやくように)「……たしか、来たる舞踏会では彼女の婚約発表と、ラヴィニア様と彼女の対決があったはずなのです」

ラヴィニア:あらよくご存じで。

GM:「その対決の前に、ルティ様がクーデターの首謀者と発覚すれば、王子との婚約は解消。対決は不戦勝。あなたは最高の意趣返しができると思ったのですが、引き受けていただけないというのなら、とても残念なことなのです」と言います。

ラヴィニア:…………。

GM:…………。

ラヴィニア:(満面の笑みで)そのお話……引き受けたわ。お近づきの印にダイアモンドの粉をまぶしたお菓子でもいかが?

一同:引き受けたぁっ!!(爆笑)

鉄也:すごい成金みたいな菓子までつけて(笑)。

ゼロ:多少ラヴィニア様のリスクが大きい気もしますが、よろしいのですか?

ラヴィニア:いいのよ。この国の情報部の長に恩を売っておくのは悪い話じゃないわ。

GM:「ありがとうございます。実は王子の婚約者のルティ様の調査をやりすぎて、王室に睨まれていたので、ラヴィニア様に依頼を引き受けてもらえて本当にたすかったのです」にこにことイレーネは話します。

ラヴィニア:あなたもけっこうな腹黒ですわね。まあ、わたくしはルティを倒せれば、なんでもいいのですわ。

ポメ郎:ラヴィニア様は分かりやすい人だポメ(笑)。

GM:ではラヴィニアが依頼を受けたところで、シーンを終わります。

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