海外の働く女性事情 〜 日本の専業主婦のしあわせ

 「大和撫子ネオ」の条件では第一に「女性も働いて経済的自立を果たす」を掲げましたが、そもそも自己矛盾を抱えます。働き、子育て、スーパーウーマンじゃないから、両方を完璧は無理、と。


 海外においても、実は程度の差はあれ、同じ問題があります。


 欧州、フランスでも男性よりも女性の平均給与は低く、出世も男性の方がしやすい。専業主婦はほとんど見かけない、話によると専業主婦率は10パーセントくらい。なのに子育ての負担は、女性の両肩にかかりがち。粉ミルク、紙おむつ、市販品の離乳食に始まり、食器洗浄機や冷凍食品の利用。1週間に2回、家事お手伝いの人、毎日の放課後のベビーシッターの雇用。専業主婦に比べたら、子育てに入れる力、そのきめ細やかな対応には、当たり前ですが、代替えが不可能。海外の子ども達は見るからにクールで大人びていますが、それは人種の違いもあるかもしれません。それでも最近は、日本でも大人びた子どもが増えました。


 海外で幼い子と話すと、驚くほどに冷めていることも。恥ずかしがったり、物怖じもあまりなく、日本の幼い子どもが母親にべったりしているところを見かけると、不思議な印象。個人的な違い、個体の差はあるものの、西洋の絵本で見るような「跳ねっ返り」な子どもが、海外には結構います。アジア人種は比較的、優しい子が多いのと比べたら、西洋人は自立心が旺盛で強い。子ども部屋を見張るカメラを設置して寝かしつけても、どこかしら安心なのは赤ちゃんの幼児であっても、どことなく「既に自立した個」を感じさせるせい。人種間の違い、文化の違い、子ども達を取り巻く社会環境の違いが見えます。


 革靴を履かせ、赤ちゃんが歩行器で歩いている様子を見ても、体躯がしっかりしています。日本の子のように、ぽちゃぽちゃしてない。それはとても不思議ですが、赤ちゃんの肌着のデザインの違いからもわかるように、西洋人の赤ちゃんは手足もシュッとしています。とても不思議な違いが見られます。


 さて、体つきもメンタリティも、西洋と日本ではここまで違うのに、西洋の場合をそのままに当てはめて「女性もフルタイム勤務推奨」というのはどうなのか。実のところ、女性の経済的自立度合いを高めればいい、と思っても、日本の専業主婦という女性の立ち位置は「実はしあわせな家族形態なのでは」と筆者は考えます。


 ちょっとパートで家計を助ける程度に働くというのも、日本に合っていると感じるのは、日本の子どもはそもそも、西洋の子に比べて、おとなしく引っ込み思案な子が多いというのがあります。不思議ですが、国民性かもしれません。ミックスの子供を見れば明らかで、純粋な欧米人よりもどこかよく言えば優しそう、悪く言えば、自信がなさそうで流されやすそうに見えます。


 ステレオタイプ化、筆者の偏った目線かもしれない危険性も孕みますが、実際に個体差はあり、例えばコメを主食にし、海産物の摂取が多かった日本人と、小麦を主食にしているドイツ人の腸の長さでは、日本人の方が3倍ほど長いらしい。また、西洋人には海苔を消化する酵素がない、と言われています。長い間の環境適応の結果で個体差は合って当然です。


 先に「専業主婦は幸せかも」と書いたものの、それは近年変わりつつあることは否めない。それは配偶者の収入が十分な場合のみに限られるし、収入格差があれど「自立した夫婦関係」が約束される場合のみ。逆に現金収入の格差で、「働いてやってるんだ」というような配偶者のパワハラ、モラハラによるDVなどが出現するリスクもあり、女性の地位向上という意味で「現金収入」があるに越したことはないです。日本の場合、難しいのは、女性が一生フルタイムで働き続けられる職業が限られること。また、女性の収入が男性よりも多い場合、日本では主夫的な男性の立場が守られないことが大きな問題として横たわる。


 こんな真昼の時間帯にラフな服装の男性がウロウロしてる?


 男は男で、まだ好奇の目に晒される現実。(執筆当時:2021年)

 昔より恵まれているものの、昼間から何をするでもなく、男性が楽しくおしゃべりし、路地やカフェでワイワイとたむろしている自由な文化圏に比べたら、今の日本にはそういう文化はない。コロナ直前の2020年の1月、日本は過去最高の2000万人のアウトバウンド※(※日本から海外旅行に出かける人達を指す)を達成したが、自由とは何か、旅に出ると考えさせられる。真の国際化は草の根レベルの文化交流が必須、その真逆を行くこのコロナ禍で各国、文字通りの「鎖国化」が進むと予測されます。


 その他、日本に合わなかったのは、サマータイム制度の導入などもありますが、欧州との緯度の違いに寄りました。海外の制度、仕組みを無条件に日本に取り入れ当てはめようとするのも危険と感じます。


 欧州では浮気や不倫、離婚も多いです。出会いの多い都市部ほどそうなり、フルタイムで働いていれば、下手すると自分の妻や夫よりも、そちらの人と顔を突き合わせて一緒に過ごす時間の方が長かったりするので当然です。


 海外でもフルタイム勤務の女性の方が子育て・家事の負担が多いとなると、これからの日本はどういう家庭形態を目指せば良いのか、考えなければならないところです。


 西洋圏の一例。料理は妻、たまに夫。後片付けは夫、掃除は気付いた時に各自、洗濯機を回し干すのは妻、アイロンは夫……。ゴミ出しは夫。買い物は週末に二人でまとめて郊外スーパへ買い出しに。子供の送り迎えは交代で。よくあるパターンですが、食事の後片付けは食器洗い機、アイロンは実はクリーニングにカッターシャツを出したりするので、そんなになかったり。フランスでは育児休暇は3年ほどとれても、一生働き続ける負担というのは、女性の場合、出産が大きな仕事のために、子どもを3人、続けて産むとすれば、ほとんど10年近く休んでいる期間ということになります。そうなると企業にも負担になりますが、フランスの場合、育児休業前の元いた職場に必ず戻さねばならない義務があります。


 預けてばかりの子どもが大きくなり、どこかしら他人行儀というまではいかずとも「親に何を教育されたの?」というくらい、生活のごくごく基本的なことを大人になってもよく知らないパターンはあります。やはり、コミュニケーションというのは重要です。幼い頃に両親以外の人と接するのは社会性が培われて良いにせよ、肝心の両親との密なコミュニケーションが奪われてしまうと、よくありません。


 一昔前の日本の「完全専業主婦」とまでは無理でも、欧米の後追いでなく、日本はもう少し日本式の家庭運営方法を検討するべきでしょう。欧米との国民性の違いが大きすぎます。日本の場合、何世代か前は農家が多かったというのもありますが、西洋も同じで、近年、核家族化が進み、祖父母世代に子どもを預けることがしにくくなりつつあります。40年近く前は、祖父母に子どもを預けることができた。今でもラッキーな人はそうです。時々、子どもを祖父母に預けます。都市部で人と人との絆が薄れているけれど、職を求めて田舎から都会へ若者が流出するドーナツ化現象が起こり、地方が人口減少し、寂れていき、都市部はますます栄えるものの、自然も少なく、人々が孤独を深めているのは各国同じです。


 ファミサポ制度など、近年日本も、子育て共働き家庭における人と人との繋がりが消えないように対策を取ろうとしても、やはり「結婚・子育ては面倒」、「ほとんど経済的に無理」なので、高齢化・少子化が進んでいるのです。行政ができる対策としたら「一人子どもを産んだら1000万円をプレゼント」のように極端な政策を取らない限り、事態の深刻さは食い止められないと感じます。わかっているのに少子化対策しないのは、「日本滅亡」を選択しているから、としか思えないのです。


 カソリックは中絶の禁止を掲げていますが、日本の場合も、中絶させずに里子、養子縁組の制度を充実させた方が良いでしょう。不妊治療で子どもが授かれなかったと悩む夫婦が多いことからも、この一石二鳥の策をなりふり構わず、検討して欲しいところです。全ては価値観、子どもを授かれば、未婚だろうが学生だろうが、この国の危機的状態から見れば、大金のプレゼントに値する「めでたいアクシデント」のはずなのです。

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