今すぐ大和撫子になる方法〜テーブルマナー

 箸はもちろんのこと、洋食のテーブルで、優雅に美しい自信にあふれた立ち居振る舞いに、自信のある女性は、どれくらいいるだろう?


 無意識に食べているだけだとしたら、これだけは経験を積んだ方がいいかもしれない。


 結婚式や、お見合いなどでは、緊張してご飯が食べられない、ほとんど料理に手をつけないことで、ごまかせるかもしれないが、結婚したら、会食の機会は多い。


 お茶を真面目に習っていれば、和食については、自然とそういうマナーを身につける機会にも恵まれるが、フレンチのレストランなどだと、テーブルマナーに戸惑うことがある。


 実は俺が、初めてテーブルマナーの本を読んだのは、小学生の時だった。


 なぜそんな本を読んだのかと言えば、単に家にあって、小学生でも読めるくらい、簡単で挿絵もあったから。実のところ、父親が海外出張に備えて買った本らしい。アメリカ人を例に挙げ、欧州のテーブルマナーが詳しく書いてある本だった。


 なので、ナイフフォークやフィンガーボールの使い方だけでなく、海外の素敵なレストランで食事する時、女性は帽子を脱ぐべきなのか、帽子をかぶったままでいいのか、手袋はどうするのか、など、自分にはあまり関係ない情報まで知っている。海外の星のついた高級店にも関わらず、口にした生牡蠣が、万が一にもフレッシュでなかった場合、どう対処するか、など。イギリス式の紅茶のサービスと、フランス式の違い。イギリスのアフタヌーンティのスコーンの切り方、パーティに招かれた場合のドレスコード。


 実際のところ、こういう本からの情報は、実践の機会を伴って、場数を踏んでいないと、頭に入っているだけではあまり意味がない。また、どうしても日本のフレンチレストランと、本場のフレンチのレストランでは、全く似て非なるもの。首をかしげるような事態にならないために、ちょっとかしこまったレストランに行きたい時は、まず現地の人にマナーを習ってからにするほうが無難。メニューを見て注文するだけでも、慣れていないと苦労する。それも微笑ましく、楽しいものかもしれないけれど、バックパッカーならともかく、いい大人になると恥ずかしい。マナーがなっていない人というのは、だいたい一緒にいて、恥をかかされる。ファーストフードやサンドイッチを食べている分には、まだいい。身の丈を超えて、現地のミシュランの星付きレストランに行きたい、とか言うのであれば、それなりであって欲しい。


 楽しく綺麗に優雅に食事ができるなら、マナーはさして重要ではない、と言われているけれど、それはTPOに寄る。あまり高級なレストランでなくて良かった、と思うことは結構ある。良いレストランだと、客に恥をかかせるような対応は絶対にないものの、自分の連れている人が、あまりに無知だと、はずかしさを超えて、憤りが生まれる。


 たとえ知らなくとも、おとなしく、美しく、しとやかであれば、可愛らしさもあるけれど、騒がしいとか、無作法が際立つ場合(意外に男性に多い)、せっかくの楽しい食事が、台無しになる。むしろ、もっともっと、カジュアルダウンした場所や、日本食レストランなら良かったのに、と思う。


 俺は別に”お上品”ということもないと思うけれど、それでも、気になって仕方ない。海外でちょっとしたレストランに一緒に行こう、と言われると、憂鬱になる。連れが外国人の現地の人ばかりなら、気にならないけれど、何故か日本人は、レストランのテーブルで、”我が物顔”になりがち。


 それはおそらく、”客だから”という奢りだろう。日本では、お客様は神様なので、なんでも許されるけれど、海外ではそうじゃない。高いお金を払っているからといって、目に余るワガママなど言われては、連れてきた自分が恥を掻くことになる。


 それでも食べた後のテーブル周りが、清掃のために閉店せねばならないほどのカオスになることもある中国人のマナーに比べたら、まだましかもしれないが。


 郷に入っては、郷に従え。柔軟な気持ちで、周辺をしっかり見渡して、海外旅行と、はしゃぐことなく、その国の習慣にひっそりと従って欲しい。舞い上がる楽しい気持ちはわかる。でも、旅の恥は決して掻き捨てでないことを忘れないでもらいたい。

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