なんでもできるようになったら

ンヲン・ルー

第1話 何のために生きているのか?

 自分が何のために生きているのか、さっぱりわからなかった。

 朝早く起きて、満員電車に詰め込まれて出勤。帰りはいつも終電ギリギリ。

 たまの休日は疲労のせいで昼まで目が覚めず、その後たまった家事をこなせば早夕方。

 遊びに行く時間も体力もない。

 大学を卒業してから五年間、ずっとこんな生活が続いている。

 こうまでがんばって働いても、職場では褒められるより怒鳴られる方が遥かに多い。

 昇給はわずか。昇進の見込みはない。

 せめて残業代がちゃんとついていれば貯金がかなり貯まっているはずだが、みなし残業とかいう制度のせいでそれもない。

 転職?

 新卒という手札が一度しか使えないこの国で、その決断は相当な覚悟がいる。下手をすれば状況はさらに悪化だ。余程の才能か運がない限り、転職はステップアップとはならない。ならないような法と慣習が根付いている。

 これでは結婚など夢のまた夢。

 将来、年金がもらえるかどうかもわからない。たぶん、もらえない。

 いったいなんなんだ、この人生は? 

 奴隷と何が違う?

 奴隷制は廃止されたんじゃなかったのか?

 選挙権がある?

 たった一票で何が変わるというのだ?

 何も変えられやしない。

 どう取り繕おうが実態は奴隷と大差ない。経営者に搾取されるだけの存在だ。

 はっきり言って、生きている理由なんてない。

 死にたくないから生きているだけだ。

 もし、苦痛や恐怖を全く感じることなく死ねるというのなら、もうその方がいいかなと思い始めている。

 こんな腐った社会で、奴隷として生き続けるよりは――

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