探偵達の成長録

探偵達の成長録 #冬花

探偵達の成長録 #冬花


※これは、現在非公開で書いている途中の小説の番外編です。

ご了承下さい。


「くぁぁぁ…。」

窓の外はおよそ冬らしくない、濃い色の空が広がっている。

ここはとある県の隅の方にある花近市っていう街。

そしてここは花近市立花近小学校。何処にでもある普通の公立小学校だ。

教室の隅では女子がこちらを見てクスクス笑っている。本当、バカらしい。

ん、何で笑っているのか?うちは昔から母親と父親が離婚と再婚を繰り返してて、女子がよく、

「両親があんなだからあんな無愛想なゲームバカが生まれるのよ。」

なんて言っている。

…バカはそっちだろ。頭が良くて男子と仲が良いからってひがむなよ。

まぁ、私は気にしてない。

「おーい冬花ーこのゲームって面白いかー?」

「んー、どれー?」

「これこれ、ミリモンの最新作ー。」

「あー。これ一つのストーリーが異様に長いから、集中力と根気があるやつならそれなりに面白いんじゃない?」

「分かったありがと!」

男子が手を振って走って行った。

「さ、皆さん座って下さい!帰りの会を始めますよー。」

すると、バラバラに散らばっていた

生徒が自分の席に座った。



で、学校が終わって家に帰ってきた

わけなのだが。

「あんた、いい加減にしなさい!

何回浮気すれば気が済むの!」

「うるせー!血も繋がってないくせに偉そうな事言ってんじゃねー!」

「はぁ⁉︎」

…何回喧嘩すれば和解するんだろう、

うちの父さんと母さん。

「げっ…」

思わず声に出してしまった。

父さんがこっちを見ている。

面倒くさいパターンだ。

「俺の方が正しいよな、冬花!」

「・・・。」

どっちかに付けと言われたら普通、

母親に付くだろう。

私は黙って父親をにらんだ。

「あ?何だその目は?俺は父親だぞ」

「…っあんたの何処が父親よ!」

「んなっ…この野郎!」

「ちょっ…やめっ…」

父さんが逆ギレして首を絞めてきた。

「あなた…!」

ゴトッ

「ちょっ!やめなって母さん!」

母さんが 近くにあった銅像を父さんに向かって振り下ろした。

「やめて!」

ゴンッ

「いっ!」

母さんの振り下ろした銅像が私にも

かすった。

「はぁはぁ…ごめん…冬花…。」

「こっちです、お巡りさん!隣の部屋から叫び声が聞こえるんです!」

ご丁寧に通報したらしいお隣さんの声が途切れ途切れに聴こえてきた。

数秒後、私は頭の痛みのせいで気絶し

た。



あの後母さんは捕まり、父さんは発見が遅れたため、亡くなった。

窓の外からは5時の音が聞こえてくる。

あれから私は様々な親戚をめぐり、

やっとこの家に落ち着いた。と、言ってもこの家に住んでいる夫婦はほとんど帰ってこない。夫の方は帰ってきたと思ったらすぐまた次の旅へ出かける。妻の方は私のことを忌み嫌っており、別に家を借りて暮らしている。

なので、この家で私はほぼ一人暮らしだ。

「そろそろ晩ご飯作るか…」

そうつぶやいて私は立ち上がった。

あぁ言い忘れてたけど、この家の夫婦は私の親ではない。妻の方が、

「こんな子の親になるのは絶対嫌。」

と、言い、結果私はただの同居人と化している。そんなことを考えながら

作った晩ご飯はそれなりだった。

さっさと風呂に入り、寝ようと思っていると、夫の方からメールがきた。


【元気ですか?

PS・もし孤児院に入れと言われても、いやじゃないですか?】


おそらく妻の方がいい加減にしてほしいと言ったのだろう。

ため息を吐きつつ、返信をした。


【元気。あと別にどうでもいい。】


そう返信して、大あくびをしながら

布団に入った。

(疲れたな…別に何にもしてないのに。)


ピンポーン

その日は家のチャイムの音で目が覚めた。

「はーい…」

「あ、檸花冬花さんですか。孤児院の者です。引き取りに参りました。」

「は?何のことですか?」

「え?あなたの両親から冬花もいいと言ってるので、引き取りに行って下さいと連絡が…」

そこで私は思い出した。

【孤児院に入れと言われたら入るか。】

あのメールはそういうことだったのか。まぁ別にどうでもいいと返事したのは私なので、

「ちょっと待って下さい。荷造りします。」

そう言って部屋へと向かった。




私は今孤児院の職員の車に乗っている。見送ろうとも、謝ろうともせずに孤児院に入れるのもどうなんだ。

「あ、雪。」

雪なんて見るのいつぶりだろう。

久しぶりの落ちる雪を見ていると。

「着いたよ。ちょっと話してくるから此処で待ってて。」

面倒くさかったので、無言で頷くだけした。

「私が、私がああしなかったら、

父さんと母さんはあんな事になら無かったのかな…」

私が、もしも。

「あんたの何処が父親よ。」

なんて言って無かったら。

母さんの方に付かずに、中立していたら。

今も平穏な日常を過ごせていたのだろうか。

「はぁ…。」

「おーい!もう入っていいよー!」

「うぉっ!」

びっくりした。

キィ…

軋むドアを開け、中に入った。

「お、来た。」

「暗そっ!」

なんか今クッソ腹立つ言葉が聞こえた気がしたんだけど気のせいだろうか。

気のせいだろう。うん。

「どうも、檸花冬花です。」

此処で待っているのが、平穏な日常でありますように。

もう、何も、誰も、傷つきません様に。


探偵達の成長録

#冬花

END.

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