Ver0.0

アタルヴァ社、プログラムルーム。

「頼まれていたプログラムできました。」

そう言って原子はフロッピーディスクを別の社員に渡す。

「おお、すまないな。」

フロッピーを渡した後、すぐに女性はまた新たなプログラムをうち続ける。

「しかし、漢字って読みにくいな……山吹原子さんだっけ?」

「原子で構いません。向こうではそう呼ばれてましたから。」

そう言ってその黒髪の女性はにやりと笑う。

「おーい、お前らきっちり仕事してるか?」

そう言って恰幅の良い男性が入ってくる。

「ええ、今原子さんが作った経済プログラムの調整を……。」

「ああ、それは後回しにしてくれ。メイン職業なんだけど調整どれぐらい進んでるんだ?」

「……ええと、今パーティー戦でのバランス調整をしているんですけど、特に問題は無いと思いますよ。

 やや騎士がダメージを受けやすいから、その辺の調整もかねて……。」

この時、職業はナイト、シーフ、ソーサラー、クレリックの4つの職業しかなかったのだ。

「そいつは良かった……実はだな。メイン職業を12個に増やしてくれ。」

「………今からですか?」

「幾らなんでもそりゃないっすよ。メイン職業1つ増やすだけでもバランス大変なんですから!!」

「とはいってもメイン職業4つだけじゃつまらないっていう意見もあるんだ。ともかくあと8個考えてくれ!」

「そんな無茶苦茶な!!」

メンバーの1人が悲鳴を上げる。

「サブ職業はどうしますか?増やすと色々と期限が厳しいんですけど。」

そう言って横から原子が声をかけてくる。

「そっちは特に問題ない。ええと……。」

「剣・鎧などを作る <鍛冶屋>。

 弓・杖などを作る <木工職人>。

 服・皮鎧などを作る<裁縫師>。

 魔道書物などを作る<筆写師>。

 薬品などを産み出す<調剤師>。

 そして『世界を発展させる力』を持つ<料理人>。」

この6つが<エルダー・テイル>最初期のサブ職業であった。

『世界を発展させる力』とは何なのかについては、ここでの説明を避けておく。

「ともかくだ。アイディアはこちらでも考える。バランス調整は任せたぞ。」

そう言って上司は、すたすたと立ち去って行った。


「どーすんだよ。戦闘バランスとか……。」

呆然と立ち尽くし、唖然とするしかない一同。

「………私は、先にNPCのプログラム作っておきますから、戦闘のバランスとかは任せました。」

ハラコはそう言って、またパソコンをカタカタと動かし続ける。

「原子。そろそろ休め。もう1週間家に帰っていないんだろ?」

「そうですね。」

そう言って原子は壁にかかっている進行表を見る。原子の作業は全て終わらせてある。

「これ以上作業しても他が追い付いてませんし、今日はここで帰らせていただきます。」

そう言って原子はさっさと席を立つとそのまま帰る準備をする。


その様子を見て一同がホッっとする。

「……原子は働きすぎだよ。」

「日本語の名前の通りアトム(原子)のように規則正しい奴だからな。」

「(帰宅が)11時の悪魔だよな。」

「仕事中毒なんだよ。ジャパニーズビジネスマンの真似事をしてるだけさ。」

そう言って一同は疲れたかのように一気に愚痴る。

「俺達もさっさと帰るか。」

「そうだな。」

そう言ってメンバーは次々と立ち去っていく。

「じゃあ俺は仕事の引継ぎをするんで、後はよろしくお願いします。」

「わかったよ。じゃあ後頼むわな。」

「了解でーす。」


こんな感じで、<エルダー・テイル>開発の日々は過ぎていくのであった。

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