第22話 おいでやすアンダーグラウンド

「味噌ラーメンなら5杯はイケるわよ」

 華の根拠のない自信を、こりずに信じてラーメン屋。

「ラスト5分」

 店主のストップウォッチが時を刻む…。

「華!!アンタ何してんの!!」

「だって…バターが…バターが~」

 味噌バターラーメンだったとはね…『4人前を20分で食べたら3万円』

「チャレンジ料金5,000円は支払ったのよ!!アンタ失敗したら1週間分の食費が無くなるのよ」

「ギトギトしてる~…ニンニクが…ニンニクが~」

 ニンニク増量だったとはね…。

「アンタ!!琴音だって1週間3食、奢ってくれるほど人は良くないのよ!!」

「まさか…アタシの財布をアテにしてたとはね…」

 琴音の箸がピタッと止まる。

「華!!2分後にリバースしてもいいから!!今は流し込むのよー!!」

 バカデカいどんぶり…華の顔の3倍はあろうかという大きさ。

 奈美はどんぶりを傾けて小さな華の身体に流し込もうとする。

「やめて~…味噌ラーメンで溺れる…助けて琴音…奈美が…奈美が~」


「ハイ終~了~」


 顔に麺を付けて…半泣きの華…空の財布を握りしめて、悔し泣きの奈美…。

(本気でアタシにたかる気じゃあないだろうな~)

 不安げに2人を見つめる琴音。


 ラーメン屋の赤い暖簾のれんを力無く持ち上げ店を後にする。

魔界アンダーグラウンドっていっても、そう変わったこともないのね~」

 琴音があたりを見回す。

 そうココは魔界アンダーグラウンド、ある意味、華と奈美のホームグラウンド。

 無数にある魔界のひとつ、『魔王 大久保 一夫』が治める国だ。

 そして…ニンニク臭いチッコイ女の子が『魔王の娘 大久保 華』。

「気持ち悪い…」

「華…臭いから近寄らないで…」

「嫌うなよ~奈美…スマンかった!」

 そのチッコイ姫君を邪険に扱う、細長い三十路、カウンセラー奈美(サキュバス)。

「しかし、何と言うか…街並みが昭和よね~華ちゃん…鼻から麺でてるよ汚いから近寄らないで」

 奈美より胸が、だいぶ大きい琴音(人間)、口が悪い。

 現在、魔界を堪能中である。

「うっうっ…昭和ーズが苛める…平成産まれを妬んでる…」

「バカ!!ギリ平成産まれよ!!」

 奈美がものすごい勢いで否定する。

「腹パンするわよ…華ちゃん」

 琴音の拳がヒュッといい音を立てる。

「あ~ん!吐いてやるー!!ぶちまけてやるー!!ウプッ…」


「なんだろうね…ハロウィーン感がすごいね」

 琴音は動じてないようだが…まぁ人外の行き交う街並み。

「楽しいでしょココ」

「うん…見てるぶんにはね、これがアタシの生活に溶け込んでいるって信じられないわね」

「獣人が人面犬を散歩させてる絵面はシュールよね」


「奈美ー、琴音ー、餃子10人前食べたら1万円だって~」

 華が呑気に2人を呼び止める。

「餃子って食べても、食べても満腹にならないわよね~イケる気がする~」

 華がチャレンジしたそうに琴音を見る。

「ダメ!!」×2

奈美がスパーンと華の頭を叩く。


「出直すわよ!!家で特訓よ!!胃拡張よ」

「琴音~奈美が医師に有るまじき発言をする~」


「さぁ~て…帰るか~、もう1件寄ってね」

立ち飲み屋の暖簾のれんくぐる人間。

その後に続く低級悪魔…に引きずられる魔界の姫君…。


あらゆるものが混ざり合う…ここが魔界アンダーグラウンド

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