第20話 自信アリ

「アンタが寝るって…まさかの展開だったわけよ…」

「面目ない」

 琴音に呆れられている奈美。

「夢を魅せる悪魔が早寝ってね~致命的よね~」

 華が腕を組んで頷きながら悩んでいる…。

「子供の頃から寝つきはいいのよね、アタシ」

 本人は大して致命的だとは思ってないようだ。

「精力剤飲ませた相手を放置して楽しむプレーって…」

 琴音が首を横に振りながら、ありえないって顔をしている。

「ごめんよ~」

「琴音、夢見たかったの?」

 華がバジリコを突きながら聞いた。

「……見たかったというか…半信半疑でというか…」

 琴音の顔が少し赤くなる。

「そうよね~下着汚れる前提で準備してくれたのに~ごめんね~期待に添えなくて」

「期待はしてないわよ!」

「またまた、この胸を持て余してるんじゃないですか~良いモノをお持ちなのに~」

 華が琴音の胸を揉む。

「ギャッ」

 琴音がフォークで華の手を無言で刺す。

「奈美~欲求不満の三十路が刺した~」

「欲求不満の、はけ口を子供に向けるなんて…カウンセリングが必要ね」

「ねっ」

 ニマーッと笑う…奈美と華。


「キャッチは失敗ね…」

 奈美が華に話しかける。

「まぁ…カウンセラーのキャッチって…スキマ産業の枠を超えたっていうか…斬新すぎたっていうか…」

「当面の問題は…琴音が支払いを済ませて出て行ってくれたか…」

「よね…」


 時給750円で3時間…ミッチリ働いた…文字通り身体で払った。


「もうダメ…腰が…砕けそう…」

「奈美がウェイトレスやるっていうから、ワタシは厨房へ回ったのにー、手を見てよガサガサ超えてギスギスよ…血が滲んでるし~」

「華…ウェイトレスってのは大変な仕事よ…チップないし…」


 ソファで倒れる奈美…。

「奈美…ココ病院でしょ?包帯とか切り傷の薬とか無いの~?」

「……当方、カウンセリング専門でございます」

「コレ塗っとけば」

 ポイッとテーブルから投げた軟膏…期限が怪しい…。

「案外、使わないよね…軟膏って…ババ臭いし…」

「ババ言うな!」


 寝転んだまま、ミニチュアネッシーを眺める2人。

「いいわよね~」

「うん…」

 華が頷く。

「悩みが無さそうで~」

「アンタも無さそうだけどね」

「あるわよ~失礼ね」

「たとえば?」

「経営不振とか~お客が来ないな~とか…」

「お金ね…深刻よね、ココ」

「また借りちゃおうかな」

 テヘッと舌を出す奈美。

「アンタ…底辺悪魔から今度は何になりたいの…」

「何って…選べるなら~人魚になりたい」

「人魚?あ~半漁人…」

「半漁人じゃないわよ!人魚よ」

「同じよバカ…」

「上半身が人間で…下半身は魚なのよ~優雅に泳ぐの…」

「奈美…アンタ足はキレイよね」

「そう?実はちょっと自信アリ」

「うん…胸無いじゃない、壊滅的に…」

「それは…言い過ぎ、壊滅はしてない…成長が身長に回りすぎただけ…」

「うん…人魚になると自慢の足が生臭い魚になって…成長を忘れた胸だけが残るのよ」


「よく考えてみる…」

「そうね…当面は明日の食事代をどうするか…考えましょう」

「ふぅん…華…ワカメラーメン飽きた…」

「そうね…奈美…明日は卵くらい乗せたいわね」

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