奇す短編

順番

旱のこと


 大変暑かった日。

背中や首元もひどいが、特に目元の汗は面倒である。

拭っても拭っても同じだった。

そのときはよその畦を抜けて近道をした。

かなり喉が渇いていた。

かんなの咲いた薄暗い木陰を過ぎて、

あとは日照りの下を歩く。


向こうになにかが立っているものがある。

暑苦しい黒色が不愉快だった。

脇ではなく道の真ん中を塞いでいる。

これでは困る。

にたにたと笑うので、なおさらである。


「御前は    なのか」


そのとき私はこう聞いたように思う。


そう言うと、あれはにたにた顔のまま、

おうおい、おうおい と啼いていた。

大変暑かった日のことである。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る