第10話 珍しく友人と

 毎回俺が独りで喫煙してると思ったら、大間違いだ。

と、言いたいところだけれど、概ね間違っているわけではないので、その話は置いておくことにしよう。

高田馬場から近い場所にある某大学と、個人的にホームである池袋にある某大学に、仲の良い友人がいる。連絡をすれば大体が応えてくれる、何とも暇人な、

もとい、気のいい奴らだ。


2人とも、もともとはお互いが全く知らない仲だった。

高田馬場君は大学のサークル繋がり、池袋君は高校からの友人。

俺が間に入る形で知り合い、今では普通に遊ぶ間柄になっている。


なんとなく誰かと話したい気分だった俺は、早速2人に連絡を入れた。


俺『いまひまー?』

高田馬場君『この後池袋でバイトだから電車に乗ってる。お前が今、どこにいるかによるな』

池袋君『俺はあと1コマあるわ。まだ大学』

俺『俺は今池袋にいるわ。バイト前でこっち来るなら、少ししゃべらね?』

高田馬場君『暇なのね。おけ。東口の○ンキの前で待ってて』

池袋君『時間が合えば俺も向かうわー』

俺『どっちも了解』


とのことらしく、約束通り、ドン・○ホーテの前で待つことに。

ちなみに、まだ授業があると言った池袋君は、絶賛留年の危機である。


待つこと15分。

「お待たせー」

「ほいほい、お疲れー」

高田馬場君ご登場である。

横にも縦にも大きな彼は、実は歳下だ。同期ではあるが。

まあ、それもこれも、俺が浪人したからなんだが…


今年3年に上がった彼は、誕生日を既に迎え、そのお祝いに、アニメキャラの描かれたjippoをプレゼントした。

以前から俺の影響で煙草に興味を示していたので、一応の忠告(吸わない方がいいぞ)はしておいたのだが、それでも吸ってみたいとのことだった。


「それじゃあ、一先ず吸いに行きますか」

「ここから近いし、バイトも駅だから、駅前で良い?」

「おけおけ。いいよ。その前にコーヒー買っていい?」

「おけー」


現在、彼が吸っているのは『LARK スーパーマイルド』である。

一般的な煙草だ。

俺の勧めである。現在販売されている煙草の中では、一番普通、煙草らしい煙草だと思って勧めた。匂いがきついと言う人もいるが、喫味は全く悪くない。

当然、俺がそう思っているだけで、個人差はあるが、高田馬場君は気に入ってくれたようだ。

タール数は6。まずはこのあたりが無難だろう。


売店で缶コーヒーを買い、あまりいい思い出のない駅前喫煙所へ。


「今日は大学だったの?」

「当然。俺も池袋君と同じ運命を辿るわけにはいかないからな」

「あいつは勉強はできるのに、他が馬鹿だからなー」


すっかり煙草を吸うのが自然になってきた高田馬場君である。

プレゼントしたジッポライターを使ってくれているのは嬉しい。


「それで?今日は何で呼んだの?」

「なんとなく、そういう気分だったから?」

「ま、そういう時もあるか」

「そっちは何時からバイト?」

「17時から。バイトし始めてそろそろ2年経つけど、やっぱり接客苦手だわ」

「あー、いつもバイト先に来る客の愚痴言ってるよな。あんなの受け流しとけよ」

「できない…。すぐ睨み付けちゃうんだよ。あと、口調が雑になる」

「普段は三枚目感あふれるいい男なのに、何で接客ダメかな…」

「きっと、バイト先の客層が悪い」

「勘弁してくれ…」


煙草を吸いながら、缶コーヒーを飲み、くだらない雑談にかまける。

大学生のやることじゃないほどの贅沢な時間を過ごしている。

普段はバイトと大学の課題だけで終わる1日だが、たまにはこんな日があってもいいだろう。


「ちょっとのど乾いたわ。コーヒーちょうだい」

「おー」

俺はぼーっとしながら煙草を吸い、生返事でコーヒーを渡した。


「んっ、んっ、ん⁈ゲホッ!ちょっ、うわっ!」

「んー?どした…って、お前、それ煙草の灰入れちゃってるから飲んだら駄目だよ」

「言うの、遅い、よ…。ペッ!うぇ、最悪」

「はははは、ごめんごめん。水買ってやるから、許してくれよ」

「目の前に灰皿あるんだから、そっちに灰落とさない?!もうっ」

「ぼーっとしてたら、それすら面倒になる時ってあるじゃん?」

「ねぇよ!」

「まじかー」


俺は、割とあるんだが、喫煙者の方々、この気持ち分かりませんかね?

今回は本当にたまたまですが、座って吸っていたりすると(行儀良くないので推奨しませんが)灰皿まで行くのが面倒になって、携帯灰皿に灰を落としたり、持っている缶に入れてしまったり…

※回収業者の方に大変迷惑が掛かるので、マナーはしっかり守りましょう。


高田馬場君はバイト先に行くまでしきりに文句を言っていたが、まあ、そこは許してくれよ。


その後、高田馬場君はバイトへ。俺はバイトが無く、大学の課題を片付けるべく家路へ。今回は池袋君とはまたの機会となって解散することに。


機会があれば、池袋君とのお話もしたい、というかします。


今日の喫煙所教訓【缶に煙草の灰は落としたらいけない】



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