無制限アンデッド ―UNlimited UNdeads―

久保田弥代

【幕開き】

 山間やまあいの街の夕日は、ビル群でも地平線でもなく、山の尾根へと沈んでいく。稜線りょうせんあかくふちどられるのを見逃さなかった人には、きっと良い明日が訪れることだろう。

 東西を山脈に挟まれた、南北に細長い高地の町である。山々の作り出す隙間に、肩寄せ合って家々が建ち並び、田畑を広げた町の風情は、長閑のどかと言えた。

 そこでは山の高さの分だけ、早く光が去って行き、朝になってもその到来は遅い。

 陽光の名残がはやがて消え、稜線は降り始めた夜のとばりを背に、黒々と存在感を主張し始める。

 夜が長い。

 人以外のものが棲まう夜が、深い。

 人外じんがいとは例えば――ほら、こんな。

 駅に隣接した新築のホテル。その敷地の外れには、巨大な壁のような立体駐車場が建っている。敷地の内外を隔てるように高く幅広く、すぐ隣を走るローカル鉄道の高架とともに、谷底のような闇を作り上げている。

 ――ほら、そこに。





 (続)

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