コゲード






月のナツダックホールに着く


月の居住区は地下にある

温度差の緩和、宇宙線の防御、隕石の防御などの理由からである


ナツダックホールから月面に浮上し出発した


二台の装甲車が用意されていて

ランチラック、夏田古文時、ユターシャ、アギジャの四人は

装甲二号車に乗った

操縦はもちろん夏田古文時である

夏田古文時は

あらゆる乗り物に精通していた

だが、恋という乗り物ではすぐに乗り物酔いをしてしまうという


装甲一号車に誰が乗っているのかは知らされていない


装甲二号車に乗っている四人は、ほかのユタージンの特性を知らされていない


高等な宇宙植物は生物の思考を読むことができる

一行は、思考を読まれないように訓練を受けた者ばかりであるが

それでも読まれてしまう危険があるので

なるべく情報量を少なくするというのが

今回のナツダックの方針であった



先行する装甲一号車が

突如ひっくり返った


月の引力ならば

もっとゆっくりひっくり返るはずなのだが

異常な速度で装甲一号車はひっくり返り

異常な速度で押し潰された


夏田古文時はすぐさま救出に赴こうとした



「なっちゃん待て!」


ランチラックが引き留める


「宇宙植物ゲゴードまでまだ距離がある、とすれば……あれはコゲードの仕業に違いない、ゲゴードは巨大な1体の宇宙植物だが、ゲゴードを守護するコゲードの数は108体ある、しかもコゲードはずる賢く素早い、迂闊に近付くのは

危険だ」


宇宙植物学の重鎮であるアギジャ博士は驚いて


「ランチラックさん、我々専門家も知らない宇宙植物コゲードの詳しい生態をなぜ

知っているんですか?」


「ぎっちゃん、今言ったとおり、コゲードはずる賢い……やつらは人間の思考を読む、おいらの情報を知られるのは不利だ、ユターシャ

サンシンを弾いてくれ」



「サンシン…ランちゃんはわたしのユタージンを知っているのね、なぜ知っているのか今は訊かないけど

後で教えてね」


ユターシャはサンシンを弾いた


「ユターシャ、後でじっくり、いろいろ

教えるから」


ランチラックはユターシャに囁いてから

夏田古文時とアギジャ博士に


「ユターシャがサンシンを弾いている間は、宇宙植物は思考を読むことができない、ユターシャのユタージンは、サンシンの音によって、ある種の効果を消すというものだ、すべての効果を消すことはできないけれど…さあ、ユターシャがサンシンを弾いている間に

作戦を…」


そのとき

潰された装甲一号車の下の月下から3人が飛び出した


穴堀のユタージンを持つものが居たのである


超高速で掘られた穴に3人が入って、防御系のユタージンを作動させたのであった



『穴堀』ユタージンは飛び出した速度を維持して動く

月でこれ程の速度が出せるのは

『穴堀』が持っているスコップの効力である

スコップ自体が重力を発生させる


高速の穴堀は重力のコントロールによるものである


ユタージンは概ね

ユタージンを練り合わせた道具を所持している


『穴堀』のスコップ

ユターシャのサンシン

夏田古文時の株


等がユタージンの道具である


ユタージンとは何なのか?


それについては物語が進むにつれて語られるであろう



コゲードはライオンほどの大きさで、スピードはチータ並である


鋭い牙の並んだ大きな口で噛みつくし、鋭い爪で切りつける


『穴堀』はスコップでコゲードを次々に切り倒している


だが、真っ二つに切られたコゲードは

たちまち二つのコゲードとして再生して素早く襲いかかる


108体のコゲードは

200体以上に増えてしまった

だが、コゲードの体長は半分となっている


装甲2号車から株が投げられた

この株は夏田古文時のユタージンである


株は『穴堀』のスコップに当たると即座に成長してスコップに巻き付いた。


「穴堀さん!それはシャッダの樹です、シャッダの樹がスコップに巻き付いたので、そのスコップでコゲードを切り倒したらコゲードは再生

できません」


「ありがとよ」


『穴堀』はシャッダの巻き付いたスコップでコゲードを攻撃した


だが、シャッダの樹が邪魔になってコゲードを切ることができない


宇宙植物学の重鎮アギジャ博士が思わず叫ぶ


「アギジャべー」





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