第13話笑わない少女と知性武装

知性武装インテリジェンスウェポン


読んで字のごとく、会話すら可能なほどの高度な知性と意思を持つ武器。

それが知性武装インテリジェンスウェポンだ。


会話と言えば、管理人工妖精ヒューマリオンも会話が可能だが、あれは決められた台詞を幾つか組み合わせて話しているだけに過ぎない。

正確な意味での会話ではないのだそうだ。


魔劾武装フェイクウェポンも意思らしき物がある物もあるが、会話が出来る物はない。


そして知性武装インテリジェンスウェポンは、アル=レギルス文明が生み出した武器ではない。


神話武装ゴッズウェポンの一つであり、勇者ブレイバーの持つ装備である。

ゆえにその能力は他を寄せ付けないほどに強力な、希少な物である。


その大部分が黄金で装飾された武器。

これは女神ル・シャラが黄金の装飾品でその身を飾っていたとされることも関係しているのだろうか。


正確には黄金ではない。

聖黄金オリハルコンと呼ばれる神世かみよの金属だ。

この世の何より硬くそして美しいと言われる金属。 神話武装ゴッズウェポンは大抵が聖黄金オリハルコンで出来ている。


あの迷宮ダンジョンにおいても最深部にあった一振りしか見たことはない。

それほどの希少な武器。


そう、私は最深部にあったその知性武装インテリジェンスウェポンを所有している。


強力な、そして最低な武器クソッタレを……





『オイオイ、そろそろ男を斬るのは飽きてきたんだが? いい加減女も斬らせてほしいなぁ! なんなら嬢ちゃんのアソコを突いてもいいんだぜ! ギャハハハハ』


このベラベラと下品な声で喋り捲るのは、私が使っている一振りの剣。

神話武装ゴッズウェポンである知性武装インテリジェンスウェポン聖王剣エクスカリヴァーンである。

知性と言う割には非常に下品で使うたびに頭が痛い。


長さは90センチほどの長剣ロングソードで先にも述べたように黄金で装飾された非常に美しい剣である。

美術品として見てもその価値は計り知れないだろう。


その下品な言動にうんざりしつつ、背後から切りかかってきた『バルバロイ・アックス』の冒険者を斬り伏せる。


現在、私は小鬼ゴブリン討伐依頼で来た森にいる。


勿論もちろん森に行く姿を彼らに見せながら……



釣れたのは6人。

1パーティーだけか。


索敵を終え、五月蝿い鉄屑カリヴァーンを鞘に納める。


『なんだもう終わりかよ? 物足りなかったな』

その妙に甲高い声にイライラし鞘ごと地面に叩きつけたくなるが、どうせ堪えないので無意味だった。

「五月蝿い黙れ鉄屑カリヴァーン

『おい! 俺様は聖王剣エクスカリヴァーンという立派な名前があるんだぞ! 鉄屑じゃねぇ! 全く嬢ちゃんは短気でいけねぇ、あれだ! その貧相な胸を揉んでやるから落ち着け! なっ!』


こいつ……


私は鉄屑カリヴァーンに手をやり抜き放つ。


『うおっ! 待て待て話せば分か「敵よ!」 おう!』



索敵に反応。数は……12か。

結構なスピードね。

レベルは70超えで揃えている。

全員がゴールドランク以上なら少し厄介かもね。


『なかなか足が速いしゃねえか! 色っぽいねえちゃんがいればいいなぁ』

鉄屑カリヴァーンの軽口は聞き流し、接近を待つ。


ふむ、4、4、4に別れて囲むつもりね。

三重に包囲網を引いての構えに感心しつつ、姿勢はナチュラルに保つ。


接近までに互いをカバーしあえるような位置取りを済ませ、流れるような動きで襲い掛かってくる。

その際、声を上げるような真似はしない。

これほどの連携が取れるのだ、そんな三流な真似はしないか。

迫る12の白刃に呑気な考え事をしながら私は動かない。


そして……


「カリヴァーン、停滞時間ステイシスタイム

停滞開始カウントスタート


そして全ての時が止まる。


正確にはごくゆっくりと時間が進んでいるのだが。

全員が私に白刃を着きつけようとした状態で止まっている。

一人目の腕を取り私が立っていた場所に投げ飛ばす。

すると、頭を下にした状態で再び彼の時間が止まる。


次に二人目を背後から蹴り飛ばす。

勿論もちろん投げ飛ばした男の方に。


鉄屑カリヴァーンのカウントを告げる声が音のない空間に響く。

三人、四人……


十ニ人すべてを私がいた辺りに蹴り飛ばした所で『……ワン、ゼロ 時間終了タイムアップ』という声とともに時間が動き出す。


「「ぐわぁ!?」」「ぎゃっ!?」


彼らには何が起きたか理解出来ないだろう。

そして最後まで理解出来ないまま。


神攻形態アタックモード 次元破斬ディメンションキル


神攻形態アタックモード 技能解放スキルアクセラレート

私の身体を黄金の光が包み込む。 そして……


「纏めて死ね」


重なり合って倒れ伏す彼らに黄金の魔力の輝きを伴う斬撃が彼らの命を奪う。

次元をも切り裂く斬撃を受け止める事など出来るはずもなく、彼らを軸として切り裂いた次元が、元に戻る際の次元修復に巻き込まれ飲み込まれて消えていった。


『なんつうか、過剰攻撃? な感じだなオイ。なに焦ってんだ? 生理か? ギャハハハハ あ、待て!? もう少し娑婆しゃばの空気を吸わ……』


クソッタレな鉄屑カリヴァーンをストレージにしまい、用の無くなった森から出る。


焦ってる? いいえ、楽しんでるのよ……


なぜか耳から離れない甲高い声を振り払うように足早に街へと戻るのだった。

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