第2話 プリプレイ

もし、あの子がその地下鉄に乗らなかったら、この状況はなかったのだろう。

もし、自分がその場にいたら、この結果にはならなかっただろう。


選択は一度きりだ。

取り戻すか、殺すか。敵になるか。

過去には戻らない。


衝動と欲望が交差する時、物語は始まる。


ダブルクロスThe3rdEdition Replay:If

第一話 もしも君が側にいてくれたら

     -----ダブルクロス。それは、裏切りを意味する言葉-----




ハンドアウト

PC1 ワークス(UGNチルドレン)/カヴァー(高校生) シナリオロイス:緋山舞彩(ひやま まい)

 君は、この街の高校に通っていた。

 仲良くなった日常の側にいる女の子、緋山舞彩はよく君に話しかけてくれる。

 FHの活動が少ないこの街は、君にとって退屈だったか、安らぎだったかは任せよう。

 しかしそれは唐突に終わりを告げる。

 地下鉄大爆発事件。

 テロと思われるその事件で、大勢の市民が亡くなった。

 君が彼女と地下鉄の駅で別れてからほんの数分の出来事であった。

 君はこちら側に引きずり戻されたのは。


PC2 ワークス(UGNチルドレン)/カヴァー(高校生) シナリオロイス:レベッカ・ヴァローネ

 君はUGNに所属するチルドレン。

 君は高校にいるオーヴァード、オーヴァードになる可能性の高い人間を監視する役目を支部長より受けている。

 そんな中、6月に転校してきた西洋人の少女。

 季節外れに転入してきた彼女に君はなにか違和感を感じていた。

 地下鉄大爆発事件の現場で、爆炎の中に入っていく彼女を見て、その違和感は本物だと気づくだろう。

 

PC3 ワークス(UGNチルドレン)/カヴァー(高校生) シナリオロイス:春日恭二

 君はUGNに所属するチルドレンだ。

 君はこの街でFHの活動を警戒するため見回りをするよう支部長より命令を受けている。

 FHの活動が少ないこの街では、ただの散歩であったのだが、ここ最近、妙な動きを感じていた。

 そして誰かと密会をする春日恭二を見つける。


PC4 ワークス(UGN支部長)/カヴァー(任意) シナリオロイス:霧谷雄吾

 君はこのN県にあるD市を預かる支部長である。

 この街はFHの活動が極端に少なく平和だと他支部長から羨ましがられるほど平穏である。

 そのためキャリアや知識関係なく、君は支部長に任命された。のかもしれない。

 君はある日、UGN日本支部支部長の霧谷雄吾から、預かって欲しい物があると言われた。

 送られてきたそれは、強いレネゲイドを放つ銀色の義手であった。


PC5 ワークス(UGNエージェント)/カヴァー(任意) シナリオロイス:ティターンズ

 君はUGNに所属するエージェントである。

 君はPC6とコンビを組み、世界中の遺産(レガシィ)と呼ばれるレネゲイドを帯びたアイテムを強奪するFHのチーム、ティターンズを追って世界中を旅している。

 彼らが次に狙う遺産が日本にあるという情報を入手した君たちに、ちょうどその街のUGN支部長から協力要請の依頼が来た。


PC6 ワークス(UGNエージェント)/カヴァー(任意) シナリオロイス:ティターンズ

 君はPC5とコンビを組み、世界中の遺産(レガシィ)と呼ばれるレネゲイドを帯びたアイテムを強奪するFHのチーム、ティターンズを追って世界中を旅している。

 彼らが次に狙う遺産が日本にあるという情報を入手した君たちに、ちょうどその街のUGN支部長から協力要請の依頼が来た。






 時は2016年1月。

 植月和機はダブルクロスの3回目のキャンペーンを行う事となった。インターネットでのテキストセッションでは音、映像で雑な演出を誤魔化していたが、今回はオフセッション。これが本来の楽しみ方ではあるが「やべ、女子のロールプレイ恥ずかしいな」と胃を痛めながら当日を迎えた。


PC3:ダブルクロスをするぞおお!


 叫んだのは私ではありません。今回のキャンペーンにおいてPC3を演じることとなった彼である。セッションの状況を汲み、面白い発言をし場を盛り上げたり、他キャラクターの心意を読み取った鋭い発言もすることがある。オフセッションでの進行にまだ不慣れな私に代わり、セッション開始の宣言をしてくれた。ありがとう磯野。


植月(以下GM):私のセリフが…(苦笑)。それではダブルクロス、キャンペーン「if」を始めていこうか。第一話のタイトルは、「もしも君が側にいてくれたら」だ。よろしくお願いします。

全員:よろしくお願いいします。

植月:すでにキャラクターシートやエフェクト構成は共有しているけど、簡単にキャラクターの自己紹介をしてもらおうかな。PC1からお願いします。


 呼ばれたPC1を演じる彼は、興奮気味に返事をする。彼もダブルクロスを愛する者だ。プレイヤーの経験は2,3回であり、今回PC1をやるということでテンションが上っている。リプレイやサプリメントの知識が豊富で、今回のキャラクターは、ダブルクロスの原作小説を読んでイメージが湧いたとか聞いている。


PC1(以下黒山):僕の名前は黒山翔(くろやまかける)。コードネームはヘカトンケイル(百の手)。ノイマンとウロボロスのクロスブリードだ。複数の武器を操ることからそう名づけられた。過去に力の暴走を起こし、暮らしていたUGN施設の職員らを全員殺してしまい、謹慎という形で今回の舞台となる支部に配属されました。


 果たしてそれは謹慎で済まされるのだろうか。否、ダブルクロスにおいて暗い過去と超設定は華と思おう。私もよくやるし、エキストラはだいたい死ぬ(偏見)。

 今回の舞台となるのはN県の都市、D市という設定だ。この街はFHの活動が極端に少なく平和だと他支部長から羨ましがられるほど平穏ということにしている。


黒山:Dロイスは輪廻の獣。これは僕が特異なレネゲイドに感染している証なんだ。その為UGN施設でいろんな実験をされたよ…。僕の戦い方は二刀流、影で腕を作り出し四刀流、さらには昔コピーした原初の白:バリアクラッカーで固定値高い攻撃を必ず当てるよ。よろしくお願いします。

GM:よろしくお願いします。今回君には日常で出会った友人、緋山舞彩ちゃんと仲良くしてもらうハンドアウトを渡しています。こちらをどうぞ


NPCデータ

緋山舞彩(ひやままい)

D市私立聖在学園2年A組。学級委員長兼生徒会書記

質実剛健、才色兼備、鶏群一鶴、謹厳実直、迦陵頻伽、公明正大、解語之花

そんな言葉が似合う彼女。周囲の状況を判断し適切な行動、助言をすることで生徒、教師問わず信頼されている生徒。

友人も多く、世話焼き。


黒山:漢字が多い!?

PC5:どんだけ美人であることを主張してるんですか。

PC6:優れていることだけはわかった。

GM:まぁどんなコミュニケーション拒絶系キャラが来ても対応できるようにちょっと…

PC4:貴方いつもどんな想定でシナリオ作っているんだ


 何も考えていないまである。


PC5:それにしても黒山さん。リア充ですか(ニヤリ)

黒山:いやいや!リア充なんてそんな!言われても困りますよ(満更でもない声音)

PC3:どなたかモルフェウスの方はいらっしゃいませんか!壁を!壁を殴らせてください!

PC6:この部屋の壁ならご自由に

黒山:僕の部屋です!!


 何を隠そう、今回のキャンペーンは黒山さんの住まいで行われているのだ。アパートの部屋に男女合わせ7人の大人が詰まっている。おう、考えることをやめよう。

 PC3はリア充に対して敏感であった。壁を殴りたくなる衝動に襲われている。

 黒山くん、もし壁が壊れても、私だけは恨まないでくれ。ほら、場所提供の経験点上げるから。

 閑話休題。


GM:まぁ緋山ちゃんと仲良くしてくれ。というわけでPC2の紹介だ。


 PC2を演じる彼は、ルールブックから視線を外し、キャラシートを持つ。セッション直前までキャラクターのイメージや構成に悩んでいたように思える。


PC2(以下長谷部):俺の名前は長谷部康介(はせべこうすけ)。記憶がない、以上だ。

GM:なるほどな(好きにイジっていいんだな)。

PC5:せめて何かありませんの?

長谷部:……そうだな、コードネームはトールトーテンタンツ(戦場を照らす光)。エンジェルハイロゥのピュアブリードだ。特徴は知覚によるリアクションや相手の範囲攻撃を縮小するといったサポートがメインだな。

GM:ふぅむ、まぁ設定や立場はロールプレイで深めていこうか。成長させると強くなっていくスタイルなんだろう。

PC5:キャンペーンということを見据えた構成なのですね

長谷部:うん?うん。

PC3:次は私の自己紹介をさせてもらおう。


 自信に満ち溢れたかのように名乗りを上げるPC3。私は知っている。彼は春日恭二が大好きでハンドアウトを見せた時の食いつきっぷりを。


PC3(以下響):名前は響紅(ひびきこう)。コードネームはグリードブッタ。シンドロームはエクザイルとブラム・ストーカーのクロスブリード、腕を伸ばして広く戦う白兵戦が得意だよ。昔は孤児院に住んでいたんだけどそこに押し入ってきた悪漢を退治しようとして返り討ち、その時にオーヴァードに覚醒したんだけど、子どもたちにショッキングなものを見せてしまったから、居心地が悪くなって施設を出て、UGNに保護されたよ。もちろん施設の人にはUGNが記憶処理をしてもらった。

黒山:なんだかこの支部、爪弾き者の集まりみたいですね!

長谷部:一緒にしないでもらいたい

PC5:なにげにエグザイルはこのコミュニティでのダブルクロスでは初めてなんじゃないでしょうか

GM:そうなのか。エグザイルは楽しいぞ。性別変えられたり。バッドステータスを付与したり。守りも攻めもできる優秀なシンドロームだ。

響:気に入った。


 響の自己紹介が終わったのを確認すると、今まで静かだったPC4が口を開く。PC4は支部長のハンドアウトを渡している。そして今までのPCは支部のエージェント、チルドレンである。この「爪弾き者」と自称するキャラクターたちをまとめられるのか心配なのだろう。わかる。


PC4(以下時雨):…UGN、D市の支部長を任されました…。白露時雨です。コードネームはマッドガンナー。狂った銃兵なんて呼ばれていますが、私はまともです。双子の妹に夕立がいます。平凡な生活を送っていましたが、事件に巻き込まれたのか自分から犯したのか、ちょっと記憶が定かではないのですが、その際にオーヴァードとなりまして。以来保護してくれたUGNに協力しています。

黒山:記憶喪失な方多すぎでは。

GM:支部ではなく医療施設なのかもしれない。

時雨:こんな私でも支部長としてやっていけるのでしょうか。

GM:まぁUGNもできると思って任せたはずだから

PC5:うっかり上司は萌ポイント高いですわ

GM:まぁきっと同じ境遇の人たちで協力し合いながらやっているのでしょう。グループホームな感じで。

PC6:まともな支部じゃないですね

GM:平和な街だからな。

黒山:やはり爪弾き者の集まりじゃないですか!


PC5(以下灰村):おっと、次は私ですね。私の名前は灰村玲愛(はいむられあ)。ノイマンピュアブリードのシスター、17歳です。…あ、誕生日はなんと驚き、主と同じ、12月25日のクリスマスです。相棒のPC6さんと一緒に、「イクリプススコール」というコンビをしているわ。あ、私自身のコードネームは聖櫃の御子。覚えているのはそれくらいだったかしら…。

GM:ん?

灰村:そう、私も色々忘れているわ!

GM:ブルータス!!!!!


 経験記憶喪失、覚醒忘却、を取得した人が多かった。


灰村:私は攻撃エフェクトを持っていないわ。代わりに相棒の彼を強化することに特化しているわ。Dロイスは触媒。ブリッツクリークも持っているので2回、追加で行動をさせることができるわ。相棒以外するつもりはないですが。


 相棒の侵食率が心配である。


灰村:今はUGNで手配されているFHのチーム、ティターンズを追っているわ。D市の拠点は廃協会、そこに相棒と住んでいるわ

黒山:なんだよPC6!君もリア充じゃないか!


 さっきの仕返しと言わんばかりの笑みを浮かべる黒山をクールにスルーし、灰村が言い終わるのを待ってPC6は口を開く。既にセッションの前からこのプレイヤーたちはチームとしての連携を築くためにやり取りや設定を共有しあっていたらしい。あんまり突っ走られると困るので後で教えてください、乗っかれるところには便乗するので…!


PC6(以下大神):……俺の名前は大神七郎(おおかみしちろう)。コードネームはルー・ガルー、人狼という意味だ。

GM:おお、忌避すべき狼。

大神:フランスでは人狼のことをこう呼んでるそうです。コードネームから察しがつくとは思うが、シンドロームはキュマイラのピュアブリード。できることは殴ることくらいだな。

響:わかりやすい

大神:Dロイスは賢者の石。片目に同化してしまい、眼帯で隠している。

黒山:僕が、おすすめしました!

大神:はい、おすすめされました。灰村とコンビを組んで、イクリプススコールと言う名でティターンズを追っている。

灰村:二年くらい前に記憶をなくし、行き倒れているところを彼に拾われたの。

黒山:ちなみに大神さんおいくつですか

大神:今年で20だ

響:灰村は?

灰村:17よ

時雨:案件にはならないようで安心しました。

長谷部:二年間も二人で活動しているのか。

響:ちょっと失礼、よっこらしょっと(振り向いて背後の壁に殴り掛かる)

黒山:やめてください!

GM:破壊は何も産まない、黒山の部屋が壊れるだけだ。さて、プレイヤーキャラクターの紹介は全員終わったな。それではオープニングフェイズに入っていこう。

響:リア充多すぎ問題だ!訴訟!


 私はリア充より記憶障害を患った方が半分もいることに問題を感じる。

 それはさておき、六人という多いメンバーでのキャンペーンを始めていこう。





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