怨念まみれヒーローごっこ
木尾
プロローグ
「ハーッハッハッハッハ! もう大丈夫だ、俺が助けに来たぞ! さあ怪物め、その人から離れろ!」
僕の絶体絶命のピンチに現れたその派手でダサい腕時計が印象的な男は、まるで昭和のヒーローのような台詞をはずかしげも無く叫んだ。
助かった……この時は心底そう思った。あとちょっと遅かったら僕はきっと死ぬほど恐ろしい目にあっていたに違いない。
この時は安心感のせいで、その大げさで恥ずかしいポーズつきの台詞も、その派手でダサい腕時計すらも最高に頼もしく思えた。
そしてその派手でダサい腕時計の男は、これまた昭和のヒーローのようなポーズを決め、高らかに叫んだ。
「へんっ! しんっ!」
次の瞬間、ヒーロー男の握りしめられた拳は、迷いの一切無い美しいフォームを描き、その先にある僕の顔面を、思いっきり殴った。
「ブベッ!」
予期せぬ自体に情けない悲鳴をあげてよろめく。多分鼻血が出ている。
「え? な……んで……だよ」
精一杯の抗議の声を出し、僕はゆっくりと倒れた。意識が遠のく。薄れ行く視界の中、最後に見た物は、真っ赤な炎がともった巨大な蝋燭のように見えた。
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