幻想紀行 ~夢の中の冒険者~

@CervoCN22S

序章

 僕は今、どこまでも広い草原を歩いている。少し前を、金髪を短く刈った騎士が鎧をカチャカチャ言わせながら歩く。そして、僕の隣には長い金髪と透き通るような白い肌が特徴の美女がいる。

「どうした。遅いぞ」

 前を歩いていた騎士が、振り返って僕にそう言った。彼の名前はレオン。話す言葉と外見が示す通り、無骨この上ない。おまけに体はムキムキで、腰に下げているグレートソードの破壊力は計り知れないときたもんだ。

 そんな騎士とは正反対に、可憐で清楚な雰囲気を漂わせているのが、隣にいる美女。金糸細工のような髪からは、人間のものとは明らかに違う長さの耳が見えている。そう、彼女はファンタジー世界でおなじみのエルフなのだ。まるで人形のような美しさと華奢な体、そしてその身長は僕の肩ぐらいでしかない。見た目こそ子供のようだが、すでに僕の何倍、いや何十倍も生きているに違いない。だから、彼女は僕に対して姉のように振る舞うことがある。今のように僕がレオンに文句を言われたりすると、

「この人はあなたとは違うのよ。無理をさせないでちょうだい」

 と、僕をかばってくれたりする。一般的にエルフの女性は気が強かったり、妙に上品でお嬢様だったりするけど、彼女の場合は母性本能が強いタイプらしい。でも、どっちかと言えばお姉さん風を吹かせているような感じなんだけどね。

 こんなシチュエーション、ファンタジーの世界でしか有り得ないことだよね。現に、ここはファンタジー小説の中、アーレストという世界。そして僕は、ついこの間までこの小説を読んでいたごく普通の高校生だったんだ…。

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