用語録 さ行

【ジハド・グルベルデ】 (登場人物/序章)

 神聖王国エクセリアが派遣した、辺境派遣団の騎士隊長。エクセリア二大騎士団の〈聖〉に属する。歳は二十代半ばで、深緑色の瞳と鮮やかな金髪、上流階級の貴族を髣髴とさせるような端整な顔つきの青年。しかしその言動は稚気に過ぎる一面も残されており、自尊心は極めて高く、非常に残忍で自己中心的な性格を持つ。

 騎士としての剣技に取り立てて見るべきところはないが、そのぶん頭脳は秀でており、隊の作戦立案などを得意とする。ギルディアには魔物討伐のためやって来たが、〈腹ぺこの怪物〉の襲撃を受け、隊から孤立したという。


【少年】 (登場人物/序章)

 目にかかるくらいまで伸びた艶やかな黒髪と、深い色合いを湛えた漆黒の瞳。しかしそれとはあくまで対照的な、病的なほどに白く透ける肌。黒と白という対極の色を併せ持つ、不思議な少年。

 歳はおよそ六つ。母親がいない分、父親への依存心が高く、常に絶対的なその存在を追い求めている。性格は内向的であり、体格も女子と見間違えるほどに華奢であまり活発な方ではない。しかしいざという時には自ら立つ正義感と純粋さを備えており、それは特にグレイスの倫理と教えを受け継いだ結果と言えるだろう。

 穢れを知らなさ過ぎるほどに純粋であり、誰よりも慈愛と優しさの中で育った子供。それゆえに、世界の暗部を知らない。


【神聖王国エクセリア】 (地名/共通)

 バリスティック大陸全土を支配する大国。その王都は、広大な内海に面した大陸の中央部に存在する。作物の栽培に恵まれた広大な平野部と、安定した穏やかな気候、森林や鉱物等の産出資源も豊富。エクセリア様式と謳われる彼らの文化水準は極めて高く、外海を通じて、他国との交易も盛んである。

 文明、軍事、経済、その他あらゆる面において世界から秀でたエクセリアは、その建国以来、他国からの侵略はなく、たとえ千年先も不変の繁栄が続くとの意味から〈千年王国〉とも囁かれる。


【聖戦】 (固有名詞/共通)

 神聖エクセリア歴四七九年に正式に発令され、以来エクセリアで奨励されている辺境威力行動の事。かつてはエクセリアの辺境貴族たちがギルディアで狩りを楽しむ際、そう呼称していたものが始まりであったが、国内の民族浄化気運の高まりを受けて正式な国事として施行された。ギルディア人と魔族の粛清のため、国境要塞の建造とその労働力確保が当座の目標とされ、発令と同時に聖戦が激化。またこれらの執行部隊には〈聖〉が当たっており、一部では出世を望む下級騎士が聖戦に狂奔する姿も見受けられた。のち神聖エクセリア歴四八○年に聖戦期の絶頂を向かえ、その反動を受けた二年後には徐々に下火となる。


【聖戦孤児】 (固有名詞/共通)

 エクセリアの聖戦によって家族や身寄りを失った子供らの意。聖戦に直面した村は例外なく滅ぼされ、村人はその場で殺されるか連行されるのだが、中には運よく生き延びる者もいる。けれども生き抜く力を持たぬ孤児たちの運命は悲惨であって、他の者と余所の村まで落ち延びられればそれでよし、さもなくば荒野で野垂れるか、魔物の餌となるかのどちらかである。新たな身寄りを見つけられる確立は決して高くないが、中には拾われ、実子として育てられゆく例も、稀にではあるが存在する。


【聖戦陣】 (固有名詞/共通)

 エクセリアが発する〈聖戦〉という言葉において、それには大きく二つの意味が含まれる。当然ながら一つは、聖戦行動の意味する襲撃の意。そしてもう一つは〈聖戦陣〉と呼ばれる騎士の布陣である。

 通常、布陣と呼ばれるものは敵に対し、自らの戦局を優位に進めんがために考案された兵法の一つであるが、しかし聖戦陣に関してその論理は当てはまらない。この陣はあくまで自らの絶対的優位と、聖戦行為を楽しむために用いられる陣であり、戦術的価値はない。

 対象を円陣に囲み、退路を絶った上での撃滅。本来ならば、かつて魔族掃討作戦の折に考案された必殺の陣なのだが、いまでは奴隷獲得の折、騎士たちの興として行われている。ゆえにギルディア人はこの陣容を恐れ、周囲をエクセリアの騎士に囲まれた時、自ら非業の死を悟るという。

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