第20話 猫の種族を聞く王
馬車に揺られながらどれだけの時間が経ったか……。
私の前をぴょこぴょこと跳ねるようにして歩く二足歩行の猫。その奇妙な光景に思わず聞いてしまう。
「しかし、君はなんの種族なんだ?」
正直、私が生み出した子供たちで、二足で歩くもの自体が少なかった。それに、王以外で言葉を話せるものもいなかった。
ゆえに、違和感が凄い。が、神素を生み出せるということは、私の系譜であつことは間違いない。
「ぼくかい? 猫さ。別になんてことない種族だよ」
「そ、そうなのかい?」
思わずディレンを見れば、必死に首を横に振っている。どうやらそこまで知られている種族ではなさそうだ。
「そうだよ。人間に襲われてからは姿を隠してるけど、ぼくみたいな猫は多いよ」
「なるほど……」
どんな生物から発展したのかはわからないが、神素を用いて自分の望んだ姿を獲得したものが、いたのかもしれない。
「それよりさー、そっちの種族はなんなの? ちょっと人間と同じ姿をした奴らで神素を生み出せるのって……いたっけ?」
ライムの核心をついた言葉に「うっ」と、ディレンと二人で言葉に詰まる。私は元々王だ。特に隠しておくことではないが……ディレンの反応を見る限り信じてもらえるとは思えない。ディレンはディレンで、元は人間だった。自分たちの国や祖先が、彼らを襲ったなんて初めて知った。
「あれ、なにか言いたくないことでもあるの? なら、無理に聞いたりしないけど……」
「い、いや! 別に言っても構わないのだけどね……たぶん、信じてはくれないと思うよ……」
困った。これには困ってしまった。下手に王を名乗っても胡散臭いと思われるだけだろう。
「まぁ、別に言ってもいいんじゃねぇ? そこまで隠しておくほどのことでもないと思うぞ。黙ってて変に拗れても嫌だしさ」
「それは、そうなのだが……」
「いやいいって。そんな真剣に悩まれても、ぼくが困っちゃうよ!」
ライムは申し訳なさそうに言っているが……そんなに悪い奴ではなさそうだし……。馬車から出てこないで貴族様を見張ってるラビスを呼ぶべきか? むぅ。
「――決めた! ライム、君にも話しておく」
「や、そんな怖い顔で話し出されても困るってばっ。ぼくはなんも責任もてないよ?」
「問題ないよ。そう大した話ではないからね」
「そ、そうかい?」
未だ疑わしそうに見られているが、気にしないで話始める。自分が王であること、ディレンが少し前まで人間だったこと。
おとなしく聞いてくれてたから、納得してくれたと思ったのだが――
「い、色々とおかしい……っ!!」
と辛辣な言葉を発して倒れこむ。どうやら、ライムには刺激的すぎる内容だったらしい。
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