Love Holic !

冴枝 夏樹

第1話 里咲Ⅰ

視界が白く霞む。死ぬ、本当にもう駄目。浅く激しい男の呼吸が耳元でこれ以上ないくらいに熱を帯び、岬里咲は首を絞めつける男の両手を、自分の両手で必死に引き剥がそうともがきながら、リンダとモモの会話を思い出していた。

 男の腰が激しく上下して、里咲の意識が今度こそ白く飛んだその瞬間、男の手の力が緩んで、男の体重が里咲の上に重く圧し掛かる。里咲は激しく咳き込んで目を薄く開く。汗ばんだ男が恍惚とした表情で里咲の胸の上で果てている。


「男なんて、やる事皆同じじゃん」

 モモのその言葉にリンダは首を横に振る。

「それは、モモが大事にされているからよ。好きでもない女の前で見せる男の欲望はとんでもないんだから。それこそ十人十色。この世は変態だらけだなあって思うよ」

「えー、変態な男なんてそうそう居ないよ。ねえ、里咲どう思う」

 

男はパンツを履いて、ミネラルウオーターを、喉を鳴らしながら飲んでいる。里咲は乱れたベッドに横になり、記憶の向こうのモモとリンダに向かって答えた。そうね、リンダの言う通りかもね。

 男は里咲に、里咲が先ほどまで履いていた丸まったショーツを手渡すと、里咲の首をまじまじと見た。

「赤くなっちゃったね。痕残っちゃうかなあ」

 里咲は弱弱しく笑う。

「夏だしどうやって隠そうかな」

「冷やす?」

パンツ一丁で大真面目な顔をして、冷凍庫から保冷剤を持ってくる男を見て、里咲は可笑しくなった。まあいいか、多少痕が残ったところでキスマークと違って、首を絞められたなんてさすがに誰も思わないに違いない。男は何事も無かったかのように、早々にシャツとデニムを着るとパソコンの前に座りヘッドホンをして作業に取り掛かった。

里咲はのろのろと立ち上がり床の上に散らばった自身の服を一つ一つ回収すると、男の背中を眺めながら、それらを身に付け、携帯電話の画面で時間を確認する。バイトの時間まであと少しになっていた。男の肩をたたく。男はヘッドホンを外さずに振り返る。

「もう行くね」

 聞こえていないと思うのだけど、男は人差し指と親指で輪を作ってみせた。里咲は荷物をまとめて広いワンルームマンションの部屋を出る。戸を開けた途端、夕暮れ時にも関わらず、けたたましい蝉の鳴き声と、もわっとした夏の熱気が里咲の全身を包み込んで、毛穴という毛穴から汗が滲み出す。ああ、シャワー浴びさせて貰えば良かった。脇の匂いを嗅いでみる。嗅ぎ慣れた自身の汗の匂いが鼻先を掠める。里咲は諦めにも似た勇み足でバイト先に向かった。


「里咲ちゃん、モスコミュールとラムコーク」

「はい」

 ハンチング帽を被った男前な店長に言われて里咲はグラスを二つカウンターに並べ、酒を注ぎ、氷を入れる。それぞれをジンジャエールとコーラで割ってバースプーンで軽くステアする。長細いカウンターは十席、その向こうにテーブル席が三つ、奥の壁際には猫の額ほどのバルコニーとDJブースが有り、専属のDJがレコードやCDで途切れることなく音楽を垂れ流し続ける。煙草の脂で薄汚れた小さな窓の向こうには赤い東京タワーが少しだけ覗いて見える。

Bar「CHELSEA」は里咲のバイト先で、薄暗くて埃っぽく、これといった装飾はないけれど、独特の雰囲気を持つ店だ。客は場所柄、音楽業界や広告業界等の業界人が多く、また彼らとの出会いを求めてやってくる、ハイエナのように目をぎらつかせ鼻をひくつかせたような人間達で週末ともなると溢れかえる。大抵は零時を過ぎる頃になると近くのクラブに移動して、明け方また戻ってくるので、二十六歳とはいえ、里咲にとって体力勝負のバイトである事は確かだ。

「あ、モモちゃんいらっしゃい」

 店長が爽やかに言って、里咲はグラスを拭きながら顔を上げる。

 モモ、本名山下優子がにこやかな笑顔で入って来てカウンターに腰かけた。

「店長、相変わらず男前だね」

「モモちゃんこそ今日も変わらずべっぴんさんだね」

 恒例の軽いやり取りで挨拶を交わす。

「モモいらっしゃい。とりあえずビール?」

 里咲が訊ねると、モモは笑いながら答える。

「うん、ビールでリセット。吞み直し」

 確か今日、モモは合コンのはずだったから、ここに来たという事は外れだったのだろう。

「リンダは?」

「零時まわってからじゃないかな」

 あと三十分もすれば、ほろ酔い気分のリンダがモモの横に座るだろう。リンダは六本木のキャバクラに勤めていて、モモは渋谷のネイルサロンに勤める人気のネイリストだ。里咲とモモとリンダは同じ高校の出身で、上京して頻繁に遊ぶようになり、週末の夜は、里咲の働く「CHERSEA」に集合するのが常だ。

 モモの前にコースターを置き、ビールを置く。モモの好きなキスチョコも小皿に盛った。

モモはその可愛らしい顔からは想像出来ないくらい、豪快に最初の一口を飲む。

「あー、ここのビールは美味しい。泡のキメが違うよね。今日の居酒屋のビールなんて最悪!絶対、あれ炭酸で割って薄めてあるわ」

 ぷはあ、と息を吐いて一息に言い放ち、店長が笑う。

「居酒屋で飲んでいたの」

「うん。アパレルメーカーの営業と合コン。服ばっかり恰好良くて全然面白くなかった」

「モモちゃんは厳しいからなあ」

 店長はリキュールのボトルを磨きながら穏やかに言う。店長は、容姿の良さだけでなく、性格も包容力のあるなかなかの紳士なのだが、女性にもてない。その理由を里咲は知っている。

「あ、モモちゃんだ」

 カウンターの端で一人飲んでいた幸四郎がコロナの瓶を片手にモモの横に移動してきた。幸四郎は酒屋の営業マンで、「CHERSEA」も幸四郎の店から酒類を仕入れている。常連からコウちゃんと呼ばれるこの男は、最近は特に頻繁にこの店に吞みに来る。

「コウちゃん元気?」

「元気、元気。そういえば、モモちゃんって本名モモじゃないんだって?」

「え、誰に聞いたの」

 里咲は知らんぷりを決めて他の客から注文を受けたカクテルを作る。DJは調子が乗ってきたのか、ソウルミュージックに合わせてのりのりで腰を振って踊っているが、少し煩い。そろそろ店長に音量を下げられる頃だろう。

「本名は山下優子。つまんないでしょう」

「そうかな。でもなんでモモなの」

 モモはカウンター越しに里咲を睨む。里咲はごめん、ごめん、と片手を顔の前にやって軽く謝った。

「まあ、コウちゃんならいっか。誰にも言わない約束だよ」

 甘えた声でそう言って、長く柔らかい栗色の髪の毛を掻き上げると、細い指を差し出し、幸四郎と指切りげんまんをする。そういう仕草を自然と出来てしまうのが、モモの最強の武器で、彼女は桁違いに男にもてる。それは、高校の頃から今に至るまでずっと変わらない。

「私ねえ、飽きっぽいんだ。多分純愛を求めているからなんだけど」

 随分と綺麗な言い分だ。里咲はにやにやしながらモモと幸四郎の会話に聞き耳をたてた。

「高校の時から純愛を求めて男から男へ、パッパッと飛び移る様がまるでモモンガだからって、高校の時の女子達から付けられたあだ名がモモンガ」

「それって悪口じゃん」

 幸四郎が眉間に皺を寄せて言う。

「そう悪口。嫌われていたの、私。で上京して、里咲とリンダと遊ぶようになって、さすがにモモンガは酷いよね、って事でモモ。可愛いでしょう。本名が普通過ぎるから、モモって案外気に入っているの」

 幸四郎が噴出した。自分の性質を容認している分、モモは性質が悪いのだが、里咲とリンダはモモのそういう部分を気に入ってもいる。純情ぶって知らない間に男をかっさらってゆく女より、ずっと気持ちがいいと思っている。

「ねえねえ、じゃあリンダは?」

「リンダは林田舞子だから、名字の林を音読みしてリンダ」

 すかさず里咲が答える。と同時にリンダが店に入って来た。

「おはようございます」

「リンちゃんおはよう」

 店長がにこやかに答えながら、DJブースに手を伸ばして、案の定音量を下げている。DJが小さく頭を下げて店長に謝る。リンダはやはり少しだけ酔った様子で、モモと幸四郎の間に割って入った。

「なに、コウちゃんモモを口説いてんの。痛い目みるから、やめときなって」

「まさか。俺なんかがモモちゃんを口説けるわけないじゃん」

 リンダが店に入って来たのと同時に、里咲は麦焼酎の水割りを作った。リンダは仕事終わりにはこれしか頼まないのだ。リンダの前に水割りを置き、小皿にミックスナッツとサキイカを盛る。色白で華奢なリンダは、黒髪から覗く瞳がいつも憂いを帯びていて、薄い唇に無造作に引かれた赤いリップが、彼女の幸の薄い雰囲気を更に際立たせる。リンダの周りだけは、いつでも場末のスナック感が漂い、ヘイ、DJ演歌!と里咲は毎回心の中で呟くのだった。

「ねえ、里咲の次のライブ、次の金曜日だっけ」

 リンダがサキイカを噛み締めながら聞いてきて、里咲は驚く。

「うん、金曜日だけど。どうしたの」

「どうしたの、って。行こうかなあと思っているのよ」

「え、リンダ行くの。やったあ、一緒に行こうよ」 

 モモが喜ぶ。

「ていうか、リンダ、ライブとかクラブとかって、白けるとか言って嫌いじゃん。いつもは誘っても来ないくせに、どうしたの」

 里咲がカウンターに乗り出した。

「分かった。男と別れたんでしょう」

 モモがリンダの腕に自分の腕を絡めて、リンダに見事に振り払われた。

「モモ、ビンゴ」

 リンダがそう言って苦々しい面持ちで焼酎を呷った。里咲はホッとしている。リンダが別れた男は妻子持ちのいけ好かない男だったのだ。

「そっかあ。じゃあモモと来なよ。ゲストにしておくからエントランスで名前言ってね」

 努めて悲しみを共有しているような声音で里咲は答えた。ありがと、と答えるリンダの横で嬉しそうな表情を浮かべる幸四郎を、里咲とモモは見逃さないのだった。今夜はいつもよりリンダが荒れそうだけど、幸四郎に任せておいたらいいかも!と、里咲はカウンターの下で小さくガッツポーズをした。


「だからさあ、この世の中にいい男なんて存在しないって。神様だってどうだか分かんないわよ、あんた」

呂律の回らない口調でリンダが幸四郎に絡んでいる。深夜二時を回ると、案の定、リンダは荒れている。この話、何回目だろう。壊れたレコードのように躓きながらループしている。モモはその横でうとうと船を漕いでいる。カウンター席なので崩れ落ちたりでもしたら大変だ。里咲はカウンターの外に出て、モモをテーブル席の壁側にあるソファーに横たわらせた。店内を見渡す。DJがのりのりでオールディーなディスコミュージックを大音量で流しているが、店長はもう何も言わない。この時間になってくると、相手の口に耳を近づけないと、相手の声が聞こえないほど騒がしい方が、いろいろと都合が良いみたいだ。その証拠に、いい雰囲気になっている男女が何組か、それから踊り狂っている外人が三人、皆それぞれ楽しんでいる。里咲はテーブル席を回り、グラスの空きそうな客から注文を取る。時々、里咲ちゃんも飲んでよ、と気のいい客に言われるがまま、里咲は酒をご馳走になるが、客のように気ままに酔う事はない。酒は、酔いたいか酔いたくないかの違いで、酔うか酔わないかが決まると、里咲はこの店で学んだ。もともと酒に強い事もあるけれど。

リンダがカウンターで泣き始めた頃、窓の外が白み始めた。東京タワーが霞んで見える。店内に徐々に朝の光が入り始め、里咲は慌ててワイン色の埃っぽいカーテンを引く。明るいところでは首の痣が目立ってしまう。どうせ、皆焦点の合っていないような目をしているが、それでも何か言われた時に上手く言い訳ができる自信がない。店長はとっくに愛する妻の許へ帰宅している。

「モモ、もう始発走っているよ。リンダ、あのしょうもない男の事は家で寝て忘れな。コウちゃん、リンダをタクシーに乗せてあげて」

 まずは友人たちと幸四郎から会計を済ませて帰らせる。するとぱらぱら他の客が帰り始め、DJは自分の今一番聞きたい曲、昭和後期の歌謡曲なんかを流し始め、カーテンを捲り朝焼けを見ながら黄昏れ、哀しい歌謡曲に合わせて外人たちは尚も腰をくねらせている。

 里咲は彼らの事はもう諦めて、洗える分だけグラスを洗い、ゴミをまとめ、カウンターの内側の床にモップをかける。その頃になると外人たちも会計を済ませて帰り始め、DJがレコードやCDをまとめて帰り支度を始める。DJに店長から預かった今日のギャラを渡し、テキーラで乾杯をして、DJが帰ると、再びカーテンを開く。朝陽の中できらきらと埃が店内を舞う様を眺めて、里咲はほっと息を吐く。そうして、やっと、里咲に朝が訪れる。長い、長い一日が終わるのだった。

 

「里咲ちゃん、今のフレーズこれでもう一度お願いできる?」

 薄暗いスタジオの中で、香田ゆずるがハミングをする。里咲はうっとりとそれに聞き入る。香田ゆずる、通称ユズの創り出すメロディラインはどこか切なくてとても美しい。

「オッケー、やってみる」

 マイクの前で目を閉じて、今聞いたばかりのメロディラインを反芻する。うん、いい感じ。里咲は手でオーケーサインをユズに送った。ユズは、いくよー、と言ってパソコンから自分の作った曲を流し始める。スピーカーから零れ出す美しい旋律。里咲は身震いをする。ユズは間違いなく天才だと思う。そして里咲は楽曲を殺してしまわぬよう、細心の注意を払って音を取りながら歌いだす。ユズはすらっとした細長い体をパイプ椅子の上で折り曲げて、目を閉じながら里咲の歌声に小さくリズムを取る。その様がまるで映画のワンシーンのようで、歌いながら里咲は殆ど見惚れてしまう。ユズは本当に美しい男で、創り出す音楽そのものなのだ。

「うん。良くなったね。だけど、メロディーと比べて歌詞がちょいちょい単純すぎるかも」

「え、本当」

 里咲はどきりとする。先日ユズのマンションで手渡された音源に、里咲が歌詞をつけてきた。イメージと世界感だけユズと照らし合わせたが、その他はメロディーに合わせて歌いやすく里咲が工夫した。

「例えばさ、Bメロにある、あなたに逢いたくてってフレーズ、もう少し遠回しな含みのある表現にできない?」

 つまり陳腐という事か。確かに言われてみると、ユズの複雑で美しい楽曲に対してありきたりな言い回しは合わないのかもしれない。ユズと二人、腕を組んで悩む。スタジオは二時間借りている。あと一時間で仕上げなくてはならない。ユズの満足のいくものにしなくては。里咲は持ちうる語彙の限りを頭の中に並べるのだった。


 里咲とユズが出逢ったのは、二ヵ月前、まだ梅雨の始まる前だった。その日、里咲は定期的に呼んでもらえるカフェのイベントで、知人の演奏するアコースティックギターで歌を歌っていた。夕暮れ時、店の中にはキャンドルが並べられ、窓ガラスにその炎が反映してセピア色の幻想的な空間を演出していた。その日里咲が歌っていたのは、主に洋楽のカバーで、客は気持ち良さそうに体を揺らしながら、皆思い思いに過ごしていた。そんな中、演奏する里咲たちの真正面に座り、体を丸めて膝に頬杖を付き、目を閉じながら真剣に聞き入っていたのが、ユズだった。その存在に気付いた里咲は、どういう訳か一瞬で緊張した。ユズを纏うオーラが独特だったからかもしれない。今風で清潔感のある青年なのだが、醸し出している雰囲気が普通の人と明らかに違ったのだ。

 ライブを終え、里咲のファンだという客からビールを手渡され、カウンターで一人飲んでいると、すっと横にユズが座った。

「ライブ良かった。ソウルフルなのに清涼感のある声だね。気持ちよかった」

「有難うございます」

「いつもアコースティックなの」

「ここに呼ばれた時は。あとはクラブでヒップホップグループのフィーチャリングをしたり」

「オリジナルで、一人ではやらないの」

 矢継ぎ早に質問を重ねるユズに戸惑っていると、ユズがポケットからメモ用紙とペンを取り出した。

「僕、香田ゆずる。二十七歳。トラックメーカーをしている。独特な雰囲気の女性シンガーを探していたところなんだ。良かったら連絡して」

 そう言って名前と年齢と携帯電話の番号をメモ紙に記す。そんなところに書かなくても、携帯電話に直接登録出来るのに、と里咲は目を丸くして渡されたメモ紙を見る。綺麗な字で走り書きされているが、そこに年齢は必要だったのだろうか。少し変わった人かもしれない。けれども、不思議と警戒心は湧かなかった。

「君、里咲ちゃんだっけ。今の歌声を聴いていたらワッと作りたい曲のイメージが湧いたから、僕はこれで帰るけど、必ず連絡してね」

 そう言ってユズは大真面目な顔をして去って行った。なんだったのだろう、と里咲がカウンターで呆然としていると、若い女の店員が、里咲さんすごい、と話しかけてきた。

「ユズ君その気にさせるなんて、さすが里咲さんです。ユズ君は天才なんですから。アイドルグループなんかに楽曲提供したりしているプロのミュージシャンですよ」

「え、そうなの」

 驚く里咲に、店員は振付付きで歌ってみせる。聴いたことあるかも、里咲が言うと、店員は嬉しそうな顔をした。

「あとCMの曲なんかもいくつかやっていますよ。お水の、ほら」

 いくつか商品名をあげる。

「すごいね」

 里咲は思わぬ展開に足が竦むほど胸が高まる。

 里咲は二十三歳で上京してきてから、数々のアルバイトをしながら歌を歌ってきた。プロのシンガーを目指してはいるが、その道のりは険しい。東京にはプロのシンガーを目指す人間がごまんといる。知り合いばかりに賞賛されながら地元で歌っていた時と明らかに何もかもが違う。本当にこれでいいのだろうかと疑心暗鬼に苦しみながら、闇の中を手探りで進み、掌に当たるものを何でもいいから掴むようなやり方でここまで来た。二十六歳、シンガーとしてデビューするにはもういい歳だ。後がない。それが今の里咲を焦らす要因で、あとは運頼みだと考えていた。そんな時にユズに声をかけられて、里咲の前に突然無限の可能性が広がったのだった。

 

 スタジオで過ごす二時間はあっという間だった。

「ライブまでにまだ宿題があるね。今週僕の家に来れそうな日ある?」

 ユズがパソコンをバッグに仕舞いながら言う。里咲の体の奥底が疼く。

「ライブ直前の木曜日なら、バイト休みだけど」

「オッケー、じゃあ木曜日。僕はずっと家で作業しているから、何時でもいいよ」

 キャップを浅く被り、バッグを背負い立ち上がる。ユズは里咲よりもずっと背が高い。里咲は慌てて自分も帰り支度をする。

 二人して駅までの夜道を歩く。蒸し暑いが、時々吹く風が、汗ばんだ肌の上を心地よく通り過ぎた。ユズは汗ひとつかかずに涼しい顔をして、ハミングをしながら歩いている。新しい旋律でも浮かんだのだろうか。まるで横に里咲など存在しないかのように、時々目を閉じては口の中でメロディーを転がしている。里咲はそんなユズの邪魔にならないように、ユズの少し後ろを歩く。天才と言われるはずだけある。里咲は素直に感心している。今まで出逢ってきたどの自称ミュージシャンともユズは一線を画している。ユズの頭の中には音楽以外詰め込まれていないのだ。里咲はそっと首に手を当てる。まだ少し残る赤い痕。それすらも、ユズの記憶の中には残っていない。次から次に浮かぶ旋律に押しやられ、とっくに彼の頭の外に放り出されたのかもしれない。里咲はそれを悲しいと思わなかった。寧ろ彼のような天才と体の関係がある事を名誉の事のように思うし、またその事が彼との関係を壊す事にならないよう、慎重に過ごさなくてはならないと心に決めていた。だから里咲は何でもないことのようにユズの前で振る舞っている。こんな事、どうっていう事のない事。心の中で呟いてもう一度首の痣を撫でるのだった。


「里咲!」

 後ろからモモに抱き付かれる。

「里咲おはよう」

 リンダが怠そうな顔で手を上げて挨拶をする。

「来てくれてありがとう。私が歌うの、十一時過ぎからなんだけど、終電間に合わなかったらごめん」

「朝までいるつもりだけど」

 モモが笑う。その横を露出の多いセクシーな女達が連れ立って通り過ぎ、そのきつい香水の香りにリンダがむせる。

 今日里咲がライブをする場所は六本木にある「スネーク」という、それなりに大きなクラブで、ステージが二つある。地下がメインのダンスホールで二階にはラウンジがあり、そのどちらでもライブが行われるが、里咲が今晩歌うのは、盛り上がる時間の前とはいえ、メインの方だ。一人でダンスホールのステージで歌うのは初めてだった。全てユズの力が働いている。里咲はユズの為にも絶対に失敗が出来ない。珍しく緊張している。だからリンダとモモが来てくれて心強い。いつもと違う様子を察したのか、モモが優しく里咲の背中を撫でる。

「頑張って。一番前で見ているから」

 二人に励まされ、里咲は楽屋に戻った。もう少しでライブの時間になる。楽屋では他の出演者がソファーに腰かけて談笑していた。鏡の前で最終確認する里咲を誰も気に留めない。ユズはラウンジで仕事関係の男と打ち合わせをしていた。いかにも業界人然としたその男は腕を組んでユズの話に耳を傾けていて、ユズはまったく動じる事なく、楽しそうに熱く音楽について語っていた。

 鏡の前でパフォーマンスをひと通り確認し終えた里咲がミネラルウオーターを飲んでいると、ダイナマイトのように太いドレッドヘアーを後ろで束ねた厳つい男が楽屋に入って来た。

「ハマーさんお疲れっす」

 座って談笑していた出演者達が立ち上がって一斉に挨拶をする。

「ヤーマン」

 そう言って右拳を突き出すその男は見るからに胡散臭くてふざけた感じしかしない。

「あ、君が里咲ちゃん?」

 肩に馴れ馴れしく手を置いてくるハマーと呼ばれる男から、エスニックなお香の匂いが漂った。

「はい。宜しくお願いします」

 何者か分からないまま、丁寧に頭をさげる。

「ユズから聞いているよ。新しくユニット組んだって?まじ存在感あるヴォーカル見つけたって、ユズが言っていたからさ」

 里咲は嬉しくて舞い上がりそうになった。

「俺って、ユズの事はまじミュージシャンとしてリスペクトしているから、そのユズが手掛けるシンガーって事で、里咲ちゃんのライブまじ楽しみにしているから。頑張って」

「あ、はい」

 頭を下げる里咲の背中をポンポンと叩いてハマーは楽屋を去る。小さな男がその後を追いかけるようにして付いて行く。コバンザメみたい、と里咲は思う。

「あの、誰ですか。今の」

 出演者の一人に尋ねる。

「ハマーさんとその子分のミュウタ。ハマーさんはこのイベントの主催者。六本木界隈じゃ有名な人だから覚えておいた方がいいよ」

 一見悪そうに見えるラッパーの男は丁寧に教えてくれた。あんな風貌の男にリスペクトしていると言わしめるユズって、本当にまじ凄い。里咲はハマー風に心の中で思うのだった。

「里咲、行くよ」

 楽屋の扉からユズが顔をのぞかせて言う。里咲は心臓が跳ね返りそうになった。ライブの直前という緊張と、里咲、とユズに呼び捨てにされた両方が里咲の胸を激しく高鳴らせる。里咲はユズの後を続くようにしてフロアーの人混みをかき分けてステージの裏側へと進んだ。DJが気持ちの良いダンスミュージックで、比較的早い時間にも関わらずフロアーの人間を躍らせている。この人達を前に歌うのか、と思うとより不安が押し寄せる。通用するのだろうか。胸に手をあてて大きく深呼吸をした。

 ステージのライトが落ちる。その間にユズがステージ後方のミキサーの前に立ち、DJが音を消したと同時に、ユズは自身の作った曲のイントロを流し始め、眩いライトがステージを照らす。今だ、里咲はステージの中心へ歌いながら躍り出た。ステージ後方のユズと目を合わせる。ユズはヘッドホンをしながら里咲の目を見てにこりと笑う。里咲のモチベーションが最高潮に上がる。フロアーの前列にモモとリンダの姿を見付け、里咲は微笑む。モモが手を振る。リンダは焼酎の水割りを啜っている。一曲目はアップテンポでキャッチーな曲だ。美しいピアノとチェロの旋律の上に里咲の声が美しく絡み、高く駆け上がる。里咲はダンスフロアーを見下ろして手応えを感じていた。期待を帯びた熱気がステージを包み込んでいたのだ。さすが、ユズ。里咲は目を閉じて昨晩のユズを想いながら力強く歌う。感謝の気持ちと淡い恋心が里咲の声音の上に溢れ出した。里咲は気付いている。これ以上深く想ってはいけない、と自制心を保ちながらも、ユズに重い恋心を抱いている自分に。

 昨晩はライブ前だったからなのか、ユズは里咲の首を絞める代わりに口を塞いだ。苦しくてもがく里咲にユズは異常なほど興奮した。このまま本当にユズに殺されてしまうかもしれない、と里咲が観念すると同時にユズは果てた。全てが終わった後、息を整える里咲の額に汗で張り付いた前髪を、ユズはその長く美しい指でそっと優しく掻き上げた。予想していなかったユズの行為が、里咲の胸の内に小さな期待を膨らませ、慌てて里咲はそれを打ち消したのだった。

 里咲は今、ユズの作り上げた素晴らしい楽曲を自らの歌声で、狭められた空間ではあるものの、世の中に披露している。このまま行けるところまでユズと走り抜けられたらどれだけ幸せだろう。歌いながらこの先の素晴らしい未来を想像する。今は六本木のクラブだけれど、いつか武道館などのコンサートホールで、もっとたくさんの人の前で歌う日が来るかもしれない。このままユズと共に。

 ライブは盛り上がりをみせたまま次の出演者へ繋がれた。ユズと里咲のユニットのデビュー戦は、里咲としては大成功だった。反省する点は幾つかあったとしても、今持ちうる全ての力を出し切ったと思う。何より、のびのびと自分の思うままに表現する事ができた。ライブが終わった今、清々しくて心地が良い。こんな感覚は里咲にとって初めてだった。

モモとリンダが興奮した様子で里咲の許に駆け寄った。

「良かったよ、里咲。今までの里咲のどのライブよりも」

 モモが素直な感想を言い、リンダも横で頷いている。

「ねえ、里咲の後ろで何かやっていた人、好青年だね。あの人が曲を作っているの」

 モモが訊ねる、里咲は少しヒヤリとする。

「うん。まあ、そう」

「確かにかっこいいけど、里咲とリンダの周りの男には手を出さないから安心して」

 モモが、里咲の心境をまるで読み取ったかのような発言をする。

「そういう関係じゃないよ」

 慌てて否定するものの、モモとリンダに二人の関係がばれるのも時間の問題かもしれない。

「里咲、お疲れ」

 ふいに後ろからユズに肩を叩かれる。

「良かったよ。乾杯しよう」

 ありがとう、と答えてユズにモモ達を紹介する。二人はわざとよそよそしい挨拶をして、その場を外した。ばれてはいないけれど、察してはいるのかもしれない。改めて友人達の鋭さに恐れ慄く。

 ユズと二人で、乾杯をする。とは言っても里咲はビールで、ユズが飲んでいるものは混じり気のない烏龍茶なのだが。

「やっぱり僕の思った通り、里咲はライブが抜群にいいね。途中から僕まで楽しかった」

 ユズが言う言葉の一つ一つが里咲の胸の中で喜びとなり弾ける。私もユズの曲で歌うの、本当に気持ちが良かった。そう里咲が言おうとした時だった。

「ユーズー」

 顔の小さな美しい女がユズの右脇に飛び込んできた。自然にユズの腕に自分の腕を絡ませる。

「ライブ良かったよ。ユズ相変わらず最高」

「ありがとう。あ、彼女は里咲。今日歌ってくれた」

「そうなんだ。良かったです。お疲れ様」

 そうなんだ?今までライブを見ていたのではなかったの?里咲は不信感を募らせながらその女に、どうも、と頭を下げた。

「彼女は紗耶香。もう直CDデビューするんだけどその曲は僕が作ったんだ」

「へえ、そうなんだ」

 今度は里咲が、そうなんだ、を言う番だ。ギクシャクとした空気が二人の間に漂うが、ユズはまるで気付かない。

「ねえ、ユズ何飲んでいるの」

「烏龍茶」

「一口頂戴」

 ユズの腕に自分の腕を絡ませたまま、紗耶香は言う。ただの烏龍茶を一口頂戴、という女。里咲の中で紗耶香に対する不信感が更に膨らむ。

「ねえ、次のレコーディングだけど」

 紗耶香が里咲には関係の無い話をユズにし始めた。ユズはユズで真剣に紗耶香との会話に答えている。どうやら里咲は邪魔者になってしまったようだ。里咲はむしゃくしゃした気分でその場を離れた。

「嫌な女」

 声が聞こえて振り返ると、壁にもたれて腕を組んだモモがいた。

「見ていたの」

 モモは、うん、と頷く。

「超ビッチ」

 里咲が抱いていた感想を、モモは容易く口にした。里咲はそれを聞いて気分がすっと軽くなるのを感じる。モモが来てくれていて良かった、と思う。

「ところでリンダは」

 里咲が訊ねると、モモが笑った。

「はぐれた。とゆうか、リンダをクラブに連れて来たのが間違い」

 モモ曰く、どっかで座って焼酎飲んでいるから、あんたは好きにしてな、とモモに言い残して、リンダは一人消えたらしい。とってもリンダらしい。二階フロアーのラウンジにあるソファーで一人飲んでいるに違いない。悪酔いしてなきゃいいけど。里咲とモモは心から祈るのだった。

「ライブ終わったし、今日はモモと酔っぱらっちゃおうかな」

 そう来なくちゃ、とモモが里咲に飛びついた。可愛いやつめ。里咲はモモを思い切り抱きしめてバーカウンターへ飲み物を買いに行く。途中で先ほどハマーの後ろを付いて歩いていたミュウタと呼ばれる男とすれ違った。

「ハマーさん車ン中でマリファナやってんでしょ」

「あ、俺もさっき誘われた」

 そんな会話がミュウタ達から漏れて聞こえて来て、里咲はぎょっとする。ハマーの見た目からして驚く事もなく、そのままなのだが、仲間内でこんなにも公に違法行為をしているのか、と思うと言葉を失う。それと同時にユズの事が心配になった。今のところ、彼からその様な片鱗を感じたことは無いが、ハマーからリスペクトされている男なのだ。きっそういう行為に誘われたりする事もあるに違いない。ユズはそういう時、どう対応するのだろうか。一抹の不安が里咲の頭をよぎった。

 里咲とモモは甘くないカクテルを何杯も飲み干して、ダンスホールで踊り明かした。途中途中、モモは男に絡まれたりもするが、純愛を求めているらしきモモは華麗にスルーしている。彼女は恋愛においては、引く手あまたの百戦錬磨、一夜の恋など求めていないのだ。里咲はそんなモモを自慢の友達だと思っている。汗で全身がべたつき、化粧が剥げても構わない。今日のライブで里咲の心は高揚している。相変わらずバーカウンターの端で紗耶香がユズに絡んでいる。

どうでもいい。里咲は踊りながら胸の内で呟いた。ユズは確かに紗耶香に楽曲を提供しているかもしれないけれど、今現在、ユズとユニットを組んで二人で活動しているのは、私だけなのだから。今きっと、ユズに一番近い女は私だ。そして、私はいつか、ユズと二人で世の中に鮮烈なデビューを果たす。里咲は強く願って天を仰ぐ。それがどうか、そう遠くない未来でありますように。

眩いミラーボールが、くるくると光の欠片をフロアー中にまき散らしていた。


「だからさあ、この世の中にいい男なんて存在しないの」

 ラウンジに行くと奥のソファーで、リンダがいつもの調子で、焼酎の入ったグラスを片手に絡んでいたのだが、里咲はその相手にぎょっとする。あろう事か、リンダはハマーに絡んでいたのだ。ハマーは真剣な顔をしてリンダの話を聞いている。ミュウタ達によれば、ハマーは多分マリファナでキマッているはずなのだが、覚醒している感じはない。ライブが始まる前に会ったハマーとそれほど変化がなかった。

「ハマーさん、すみません。友達が絡んで」

「里咲ちゃんの友達なんだ。まじ別にいいよ。俺から話しかけたわけだからさ」

「里咲―、酔っぱらったわ。あたし」

 里咲に気付いたリンダが腕を広げる。里咲はそれを受け止めて、彼女を立ち上がらせる。

「もう朝よ。モモは帰ったよ。リンダも帰りな」

「えー、もう少し飲む」

「残念、ラストオーダー済みました」

 リンダはグラスに残った焼酎を一気に呷ると、よし帰ろう、と一瞬シャキッとしてみせたものの、すぐにふらつく。里咲がリンダの脇に腕を入れて支えるように歩き出すと、ハマーがひき止めた。

「里咲ちゃん、階段あるからまじ危ないし、俺が外に連れていくよ」

 そう言ってハマーはリンダを背負った。ハマーの太いドレッドヘアーに顔を埋めて、リンダがけたけた笑い出す。

「あんた、埃っぽい頭だね。虫絡んだりしないわけ?」

「虫ね。確かにまじ絡むわ」

 ハマーがにこやかに答えるが、里咲はその横でひやひやしている。いくら胡散臭いとはいえ、イベントの主催者で、六本木界隈じゃ有名だというハマー氏に、私の友人はかなり失礼な態度を重ねているのではないだろうか。後でユズに謝らなくては。

 外はすっかり明るくなっていて、爽やかな夏の朝の気配が、今の里咲たちにはミスマッチ過ぎて心地悪い。ハマーはリンダをタクシーに乗せると財布から一万円札を取り出した。

「いやいや、ハマーさん、それは」

 里咲が止めようとするも、ハマーは聞かずにタクシーの運転手に一万円札を渡し、扉を閉めた。里咲の中でますますハマーの存在が胡散臭くなる。

「お疲れ、里咲ちゃん。今日のライブ良かった。まじリスペクト」

 そう言って右拳を突き出す。里咲も渋々拳を突き出して、ハマーのそれと突き合せる。そして二人は並んで楽屋に戻った。楽屋には酒で潰れた共演者と、共演者達の彼女らしき女が何人か、それとユズがいた。ユズはノートパソコンを開いてヘッドホンをしている。何か作業をしているらしい。ハマーに気付いて顔を上げるが立ち上がる事はしない。

「ユズお疲れ」

「お疲れ様です」

 ヘッドホンを外してにこやかに挨拶をするユズからは、一晩を明かした疲れなど微塵も感じさせない。

「チョコやる?」

 唐突にハマーが言い、里咲はどきりとしてユズを見つめる。

「やらないっす」

 ユズは再びヘッドホンをしてパソコンの画面に視線を戻した。

「だよね」

 気分を害した様子もなく、ハマーは他の共演者に、チョコやる?と続けて聞いた。里咲はほっと胸を撫で下ろしながらも、ユズに寄せる尊敬の念が大きくなるのを感じた。

チョコとはマリファナの事だ。他の共演者がハマーに肩を抱かれて楽屋を出て行く。きっと車に向かうのだろう。

 里咲が荷物をまとめるのを見て、ユズもノートパソコンを閉じ、バッグに仕舞う。

「途中まで一緒に帰ろう」

 共演者に挨拶をして、ユズと里咲はクラブを後にした。爽やかな朝の光の中で、汗まみれで気怠い自分と違い、ユズは朝の散歩を楽しむように軽やかに歩く。二人は六本木通りを渋谷方面へ歩み続ける。これから家路につく人間と、これから一日を始める人間が入り混じる通りを見て、里咲は思う。この街は終わりも始まりも無く、永遠にずっと続いているのではないだろうか。だから終わりを恐れる寂しい人間達が集まってくるのだ。けれど、ユズは違う。彼はどんな場所も関係なく、自分の居場所にしてしまう強さを持っている。それは天才的な才能が成せるものなのか、とにかく、こうして過ごしている以上、ユズからは刹那的な欲求を感じない。それなのに、作り出す音楽は美しく儚くて、セックスは哀しい。出逢ってからの二ヵ月間をユズと濃密に過ごしている里咲なのだが、いまだにユズの何も解らず、確固たるものを掴めていない。ハミングをしながら歩くユズの先に、朝の光に輝く渋谷が見えた。

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