364文字の世界「これから猫を虐待します」

薄汚い猫を風呂場で虐待する動画が人気だと聞いて、パクってみることにした。

それまで生中継なんてしたことはなかったけれど、誰かに注目される快感を知りたかった。

もしかすると明日学校で話題になるかもしれない。そう思うと胸が高鳴った。


庭にシーチキン缶を置き待つこと十五分、一匹の野良猫を手に入れた。

やたら小さくて埃まみれの汚い猫だった。

これは虐待し甲斐があると、猫を抱えてさっそく風呂場に入った。

うきうきしながらカメラのスイッチを入れる。

水蒸気で曇ったレンズを拭い、改めて湯を張った浴槽を映す。


「これから猫を虐待してやるぜ!」


たしかこんな煽り文句だったはず。

動画の様子を確認するため脱衣所に置いたパソコンの画面が騒がしくなってきたが、とりあえず今は気にしない。


まずは綺麗にしなくては。

猫の首根っこをむんずと掴み、沸騰する湯船へ放り込んだ。

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