289文字の世界「おっちょこちょいな蓑虫」

蓑虫が目を覚ますと、世界はまだ冬だった。

一面の銀世界が果てしなく広がっている。

目覚めるにはまだ早い。

仕方なく二度寝と決め込んだ。


蓑虫が再び目を覚ますと、世界はまだ冬だった。

自身が垂れ下がっている枝には雪の花が咲いていた。

目覚めるにはまだ早い。

仕方なくもう一度寝ることにした。


次に目覚めたとき、蓑虫は自分が二度の春を寝過ごしたことに気づいた。


しかし隣を見ると、仲間の蓑虫はまだ眠っている。

慌てて揺すり起こし自分達の失態を訴えると、仲間は怪訝そうに顔をしかめた。

「お前は何を寝ぼけているんだ。俺たちはまだ一つの冬だって越しちゃいないさ」

「そうなのか?」

「当たり前だろ、今は氷河期だ」

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