234文字の世界「瓦版」

江戸の町に瓦版売りがいた。

人々は新しい情報を求め、瓦版かわらばんは飛ぶように売れた。

人づてに「かわらばんはよく売れる」という噂を聞いた男は、さっそく瓦をかき集め、木の板を括りつけた「瓦板かわらばん」を売り出した。

なにやら儲かるらしいと踏んだ男の飲み仲間も瓦板売りに転身したが、待てども待てども売れる気配はない。

不思議に思って人に尋ねてみると、瓦版とは情報紙のことであった。

己の無知と浅はかさを痛感した男たちは、こぞって瓦版を買い求めた。


その日も、瓦版は飛ぶように売れた。

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