プラチナ級少年少女の電脳大戦

登月才媛(ノボリツキ サキ)

大戦

排他区の章

第1話 ベータテスト

ネバーエンドストーリーpart1

プラチナ級少年少女の電脳大戦

これは、幼い兄妹が世界規模のオンラインネットゲームの

世界ランカーになる物語。


僕が知っていた世界のすべて。それは、“外の世界”で棄てられた、

粗大ごみや、古くなった住宅から回収された建築材の街。

後で知った。

ここはスラムという世界で一番分かりやすい世界だったのだ。


日雇いにも雇われず、明日の食い扶持に困って、

追いはぎ、つまり引ったくりをしようとしていた僕たち。

ところが、追っていた白衣の男は、僕たちに盗ませるどころか、

僕たち兄妹に、二枚のカードを拾わせた。

僕が持ち上げたカードに妹の名前が映しだされる。

「……アリス」

「えっ?」

「いや、名前を呼んだんじゃない、ここに書いてあるんだ。」

そう言われて、もう一つのカードを木の枝で突っついていた妹が、

突っつくのをやめて、そっと拾い上げる。

「コ・ウ・ジ、……あ、にいちゃの名前だ」な、何だと!

「交換しよう」

「わかった」


市民ナンバー合致がっち。声紋認証完了。指紋を登録しています……▽

完了しました。▽

ゲームを開始します。▽

~BGM音~

「……なんか始まった……」

「どういう意味?にいちゃ。声が聞こえた」

そうだ。保護者もいない僕らは初等教育を受けられなかった。

僕はともかく、アリスは名前しか書けない。がっちがどうとか、

声紋認証がなにかも知らない。


そんな僕らが参加させられたのは、その五年後に

普及することになる、world規模のオンラインゲーム、

『ネバーエンドワールドゲーム』と呼ばれるアプリケーションのベータテスト。

既に、世界中に普及した市民ナンバーと、声紋や指紋などで

割り出された個人情報を、RPG式に主人公キャラクターの

ステータスに換算していく。


こんな酔狂なものが開発されていたんだ。

僕たちのランクはベータテスターの中でも最下位だった。


説明書きの表示を閉じると、僕のステータスが浮かび上がる。

妹の分も読み上げる。


Lv:1

順位:399

名前:コウジ

年齢:12

性別:男

所属:なし

保護者:なし

同盟:なし

グループ:なし


Lv:1

順位:400

名前:アリス

年齢:9

性別:女

所属:なし

保護者:コウジ

同盟:なし

グループ:なし


……この、同盟とかグループってなんだ?

……と思っていたら。!!表示が変わった!

「……変わった。なんて書いてあるの?」

「利用規約だ。まって、重要なとこだけ抜き出して話す」


長々と書いてあったが、簡単にすると以下の通りだった。

◇◇◇◇◇利用規約ver.1.0◇◇◇◇◇

一つ、法に触れる、法を犯す行為を禁じる。

一つ、刑罰などは原則、法にのっとり行われる。

一つ、原則として、グループ、所属、同盟などに最低一つ参加していること。

一つ、なりすましや乗っ取りなどは即刻、市民権を剥奪する。

一つ、ベータテストの内容は定期的にインターネット上に公開される。

一つ、ネバーエンドワールドゲームの内容は現実に、現実の内容はネバーエンドワールドゲームへと相互に作用するものとする。


僕が読み終わると、『スキャンが終了しました。適応しています……』の文字が表示された。

適応が終わると、ステータス画面に戻り、表示が更新された。装備の表示も、今着ている物が表示されている。

突然、ゾクゾクした。

監視されているような気がしたせいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る